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【UFC112】王者絶対有利、番狂わせを起こすのはマイア?

(C) ZUFFAミドルイースト初進出。UFC112「Invincible」が10日(土・現地時間)、アラブ首長国連邦アブダビのヤス島、フェラーリワールドで開催され、世界ミドル級選手権アンデウソン・シウバ×デミアン・マイア、世界ライト級選手権試合BJ・ペン×フランク・エドガー戦と二つのワールドタイトルマッチが行なわれる。

【写真】MMAの打撃に革命をもたらしたといわれるアンデウソン・シウバの牙城に挑むデミアン・マイア。その極め力は一瞬の勝機をモノにできるだけのものがある (C) ZUFFA

UFCタイトル戦線は王者の独走状態。3月27日のウェルター級戦ではGSPが、挑戦者ダン・ハーディに何もさせず完全防衛を果たし、さらにその印象を強くしている。そんなウェルター級王者に負けず、ミドル級王者アンデウソン&ライト級王者BJともに、世界戦では圧倒的な強さを見せてきた。


アンデウソンは2006年10月の王座奪取以来、ネイト・マーコート、リッチ・フランクリン、ダン・ヘンダーソン、パトリック・コーテ、ターレス・レイチと5度の防衛を果たし、この間、ライトヘビー級で2勝するなど、実にUFC参戦以来10連勝とパーフェクト・レコードを残している。

(C) ZUFFA【写真】打撃、テイクダウン、寝技でスーパーワールド・クラスのBJ・ペン。穴がないだけでなく全ての局面で秀でた力を持つ (C) ZUFFA

一方のBJは、昨年2月のウェルター級王座挑戦こそ失敗に終わったが、ライト級では過酷な生き残り合戦を勝ち抜いてきた最強のチャレンジャーを相手に、ラウンドを落とすことすらなく完全防衛を果たしてきた。

ジョー・スティーブンソン、ショーン・シャーク、ケニー・フロリアン、そしてディエゴ・サンチェスを相手に、一度たりとも攻め込まれることがないなど、天才ぶりを如何なく発揮している。

そんな両者に挑戦するマイア、エドガーの両者。マイアはMMA通算12勝1敗、UFCでは6勝1敗。エドガーも同じくUFC6勝1敗、通算12勝1敗という戦績の持ち主だ。最近の日本人のUFC挑戦を見ても、二人の持つ6勝1敗という数字がどれだけ優秀なのかは理解してもらえるだろう。

それでも、この二つの世界戦は王者が圧倒的有利という声が高い。これだけの好成績を残す二人のチャレンジャーを迎えながら、そんな声が多数挙がること自体が、アンデウソンとBJの強さを如実に表している。

(C) ZUFFA【写真】フランク・エドガーに勝てるファイターが、世界にどれだけいるか――という見方がある一方、BJ・ペン相手に勝利するという声はほとんど聞かれない (C) ZUFFA

エドガーは地元のカレッジで指導を行なうレスリングをベースに、ヒカルド・アルメイダの下でトレーニングをするようになった柔術、さらにボクシングを合わせた、いわゆる典型的な北米型MMAファイターだ。

寝技に持ち込めば、自らフィニッシュする力を持っているが、ガードを強いられる場面では迷うことなくスタンドに戻ることを選択する。殴って倒し、倒されれば起き上がるという動きを、試合時間をフルに続けることが可能なスタミナを有している。

全ての局面で穴のないMMAファイター、それがエドガーなら、マイアは今では珍しくなった一芸に秀でたファイターといえるだろう。マイアの一芸とは、もちろん柔術だ。ブラジルの名門アリアンシから、その後の分裂劇を経験した彼には、ホメロ・カバウカンチとファービオ・グージェウというアリアンシ柔術、つまりはホーウス&ヒクソン・グレイシーの流れを組む正当・柔術家の血が流れている。

柔術がベースのMMAファイターは数多く存在しているが、マイアの存在感が突出しているのは、その多くが打撃とレスリングを練習したことで柔術色が少なくなっているのに対し、自ら引き込むことをいとわない純血柔術スタイルを継承している点にある。

いくら全局面で穴のないファイター=エドガーとはいえ、王者BJは打撃、テイクダウンディフェンスや寝技で、穴がないというレベルに留まらず、秀でた力を有している。穴がない者同士の一戦で、秀でた要素を持つBJ。故に王座BJが圧倒的有利といえる。

対してアンデウソ×マイアだが、いうまでもなく現在のMMAでは打撃戦の強さが大きく勝敗に関係している。この点で、アンデウソンがマイアを大きく上回り、彼が圧倒的に有利という予想が成り立つ。

(C) ZUFFA【写真】今回が6度目の王座防衛戦となるアンデウソン・シウバ。防衛を果たすと、マット・ヒューズ&ティト・オーティズを抜いて、単独連続防衛記録となる (C) ZUFFA

過去にアンデウソンが、柔術ベースのファイターと防衛戦を戦ったのは、昨年4月のターレス・レイチ戦。この時は徹底してレイチのテイクダウンを防ぎ、打撃戦でもリスクを避けてジャブを当てるような距離で戦っていた。加えて、寝技でトップを奪っても、グラウンドに留まることなく自らスタンドに戻る徹底ぶりは、ファンの支持こそ集めることはできなかったが、まさに鉄壁の王座防衛術といえた。

柔術でも黒帯のアンデウソンだが、マイアの強味はテイクダウンでなくて、引き込んでリバーサルからトップを奪うことができる点にある。もちろん、チャンスは決して多くない。それでもはまれば、マイアは一気にタップを奪う力を持っている。

MMAおいて、ほとんどの局面で圧倒的な有利に立つ王者アンデウソンだが、マイアは一瞬の勝機を手にする絶対的な能力を持っている。チャンピオンが圧倒的に有利な二つの世界戦だが、番狂わせがあるならミドル級といえるだろう。

■UFC112「INVINCIBLE」全対戦カードは下記の通り

<UFC世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者]アンデウソン・シウバ(ブラジル)
[挑戦者]デミアン・マイア(ブラジル)

<UFC世界ライト級選手権試合/5分5R>
[王者]BJ・ペン(米国)
[挑戦者]フランク・エドガー(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ヘンゾ・グレイシー(ブラジル)
マット・ヒューズ(米国)

<ライト級/5分3R>
ハファエル・ドスアンジョス(ブラジル)
テリー・エティン(英国)

<ミドル級/5分3R>
ケンドール・グローブ(米国)
マーク・ムニョス(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
アレクサンダー・グスタフソン(スウェーデン)
フィル・デイビス(米国)

<ライト級/5分3R>
ポール・テイラー(英国)
ジョン・ガンダーソン(カナダ)

<ウェルター級/5分3R>
ニック・オシベチェック(英国)
リック・ストーリー(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ブラッド・ブラックバーン(米国)
ダマルケス・ジョンソン(米国)

<ライト級/5分3R>
ポール・ケリー(英国)
マット・ビーチ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ムスタファ・アルトゥルク(英国)
ジョン・マジソン(米国)

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