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【ADCC2019】神階級77キロ級はJT・トレス、ルーカス・レプリ、ホシャ&トノンの争い再現か?

ADCC2019 77【写真】今や道着柔術よりも、ノーギグラップリングで安定した力を発揮するようになったJTが連覇を狙う (C)SATOSHI NARITA

28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われる。

2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰の戦いが展開されるこの大会のプレビュー2回目は前回大会の上位が揃って出場する神階級=77キロ以下級の見どころを紹介したい。


2017年の前回大会におけるベスト4全員が連続エントリー、今大会もこの4者が優勝争いの軸となりそうだ。

JT前回覇者のJTトレス(米国)は、準決勝では最先端の極め技師ゲイリー・トノンの仕掛けを上からの強烈なプレッシャーで完封して勝利。決勝では(2019年の現在まで)柔術世界6連覇中のルーカス・レプリと30分に渡る神経戦を展開。終盤等々飛び込んで背後に回ってから崩してバックを奪い、悲願の初優勝を果たしたのだった。

NY州ハーツデールに自分の道場(アトス支部)を設立したこともあり、近年はマイペースで試合に出場しているJT。柔術世界大会での上位進出こそ逃しているものの、昨年のパン大会ではエスペン・マティエセンを倒して制する等、安定した実力を見せている。

そして今年7月末のFight to Win大会では、前回のADCC制覇以後はじめてとなるノーギの試合に出場し、前回3位のヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)にレフェリー判定勝利を収め、健在ぶりを見せつけている。安定したレスリング力、回転系の技術をシャットダウンするトップからの圧力、天下一品のバックテイク技術を誇るJTはADCCを制するに最適のスキルセットの持ち主だ。

LepriそのJTとの再度の頂上対決が望まれるのが、前回準優勝のルーカス・レプリ(ブラジル)だ。

ギありでは世界6連覇中、盤石のトップゲームを軸に圧巻の技術的完成度を誇る絶対王者だが、このADCC世界大会では15年は決勝でダヴィ・ハモスが見せた神業ともいえるフライング・アームバーにしてやられ、17年は前述のようにJTに惜敗し、いまだ頂点に至ることができていない。逆に言えばこのADCC制覇のみが、これまで全てを成し遂げた達人レプリに残された最後の課題だろう。

Rochaそして前回3位決定戦を争ったホシャとゲイリー・トノン(米国)もエントリー。

前回3位のホシャは、かつて神童マルセロ・ガウッシアを倒したノーギのスペシャリスト、パウロ・ポポビッチの弟子だ。きわめてアグレッシブな戦いぶりを身上とし、17年のEBI 11では階級上のクレイグ・ジョーンズをオーバータイムで倒し、昨年のKasai Pro 3では岩崎正寛をヒールフックで、マーチン・ヘルドをリストロックで下すなど高い一本勝ち率を誇るノーギ・グラップラーだ。

Tonon前回大会4位のゲイリー・トノンは、言わずと知れた新世代のサブミッション・アーティスト。師ジョン・ダナハー譲りの足関節システムを主武器に一本勝ちの山を築き、グラップリング・シーンにおける新時代の到来を告げたトノンは、現在は主戦場をONEに移し5連勝中のMMAファイターとなった。ピュア・グラップリングにおける極めの技術は落ちているかもしれないが、MMAに必要なフィジカル、テイクダウン&スクランブル力は上がっているだろう。

そして何よりダナハーが、従来のブラジリアン柔術のポジショニング概念をアップデートして構築したというグラップル・ボクシングを身に付けたことが、今回どう影響するか。前回大会準決勝のJT戦、3位決定戦のホシャ戦ともにポジショニングで競り負けたことを考えると、MMA転向によりトノンのグラップラーとしての弱点が補填され、優勝のチャンスが増したという見方もできそうだ。

さらに今年のこの階級には、クレイグ・ジョーンズに足関節を指導したラクラン・ジャイルス(オーストラリア)、極め技師エドウィン・ナジミ(米国)、一昨年世界柔術準優勝のヘナート・カヌート(ブラジル)、レスリング力を武器に17年にトノンに完勝しているDJ・ジャクソン、ベテランのセルシーニョことセルソ・ヴィニシウス(ブラジル)等の有力選手がエントリーしており、熾烈極まりない上位進出争いが繰り広げられることとなるだろう。

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