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【ONE95】秋山と対戦、元140キロのいじめられっ子アギラン・タニ「人生を豊かにしたくて戦っている」

Agilan Thani【写真】ルックスも話す内容も普通の人──なアギラン・タニ (C)ONE

明日15日(土・現地時間)に中国・上海のバオシェン・ティユウ・チュンシンで開催されるONE95「Legendary Quest」で秋山成勲と戦うアギラン・タニ。

太っちょのいじめられっ子が、柔術を初めてMMAファイターに成長し、今やONEのトップファイターの仲間入りをした。今もMMA第三国のマレーシアにあって、アギランはどのようにMMAファイターになったのか。そして秋山戦をどのように捉えているのかを尋ねた。

MMAPLANETでは同番組内で2015年11月以来の実戦に向かう秋山に対し、主にアギラン・タニ戦に特化した取材を行った。ここでは秋山がONEを選んだ理由と韓国格闘技界への想い、そしてタニ戦に関して掘り下げてお伝えしたい。


──秋山成勲戦が迫ってきました。今の調子を教えてください。

「とても良い感じだよ。例え、調子が悪くてもこの場では『調子が良い』としか言わないけどね(笑)」

──……。秋山選手とのオファーがあった時に、どう感じましたか。

「ONEの選手が4月にプーケットに集まった時に、この試合のオファーがあったんだ」

──! そのプーケットでアギランと秋山選手がグラップリングのスパーをしたと聞いています。

「そうなんだ。もちろん、オファーがあったのはスパーの後だよ。契約書でサインを交わしたわけじゃないけど、とにかくそういう話が来て驚いた。で、コーチと相談したら『良い相手じゃないか』って言われて契約書にサインをしたんだ。

あの時はアキヤマだけでなく、シンヤ・アオキともロールしたよ。シンヤは本当に凄かった。アキヤマも強かったし、2人のレジェンドから学ぶべきことは多かった。そして、そのうちの1人と戦うことになったんだ」

──秋山選手は体格から受ける印象とは違い、凄く力強かった。ロールしていなければ過小評価していたかもしれないと言っていました。

「う~ん、アキヤマが僕を過小評価しようがしまいが、ベストと尽くし、自分の柔術を信じて戦うしかないよ」

──この試合に向けてアギランは柔術家✖柔道の戦いだと言っていますが、両者はMMAファイターでワンメンション・ファイターではないですよね。

「そうだね、アキヤマは経験豊かな選手だし、その経験に対してどこまで自分が戦えるのかテストになると思っている」

──どのような準備をしてきましたか。

「マレーシアのモナキMMAで6週間、バリMMAで2週間のキャンプを張った。この試合が決まった時にクアラルンプールの選手たちは試合が終わったばかりで、練習に来ない時期にぶつかってしまったんだ。だからバリに行って2週間ほど練習し、皆がジムに戻ってきた時に合わせてKLでキャンプに入った」

──日本のファンはまだアギランのことをあまり知りません。なぜ、格闘技を始めたのかを教えてもらえますか。

「ONEのファンはもう知っていると思うけど、僕は子供の頃や10代の時に凄く太っていたことが原因で苛められっ子だったんだ。だから自分の身を守ろうと13歳の時に空手を始めた。そして16歳の時に柔術をなるようになったんだ」

──柔術を始めた理由は?

「香港のアクション映画のSPLで、僕の大好きなドニー・ウェンが柔術をやっていて興味を持ったんだ。で、どこかで柔術の練習ができないかと探して……でも柔術はクアラルンプールではまだ流行っていなかったからなかなか見つからなくて。

ようやくモナキMMAで習うことできると分かって通うようになった。モナキの柔術指導者はチーム・ブッダとGFT系の柔術家で、とにかく習っていて楽しかった。凄く学びやすいマーシャルアーツだったんだ。それから8年間ノンストップで柔術の練習をしてきたし、柔術を学ぶうちに自然とMMAで自分を試したくなったんだ」

──太っていたということですが、最高でどれぐらいの体重だったのですか。

「140キロだよ」

──140キロ!!

「そう16歳の時にね」

──でも16歳の時ということは、もう空手を習っていたわけですよね。

「マレーシアの空手は日本や韓国のようにシリアスじゃない。僕も1週間に2度練習していただけで、高いレベルでやっていたわけじゃないんだ。ばかりか、体を動かすから余計に食欲が増えてしまったんだよ(笑)」

──そんなアギランが、今ではマレーシアのMMAをリードする選手に成長したわけですね。

「僕はリーダーじゃないよ(笑)。ただ、楽しくて自分の人生を豊かにしたくて戦っているんだ。それで人々が喜んでくれることは嬉しいけどね」

──MMAは秋山選手のようなスポーツエリートとアギランのように一般の練習生から成長してきた選手が混在しています。アギランは一般派の代表ですね。

「そんなことを考えたこともなかったよ(笑)。何かこの試合で示せるとすれば、こんな僕でも世界のトップとやり合えるんだという試合をするだけで。そのために勝利を目指すけど、他に自分が何者であるかとかアキヤマと戦って証明しようなんてまるで考えていないよ。ただマレーシアを代表して戦うことだけで、僕の人生はハッピーになる。だから楽しむだけだよ」

──このところ2連敗中ですが、現世界王者のゼバスチャン・カデスタム戦では気持ちの切れないファイトを見せていました。

「僕はベストになりたくて練習し、試合に出ている。今はまだベストじゃない。でも、ベストになりたい。そして土曜日の夜はベストを尽くすだけ。とにかくアキヤマを相手にベストの僕をぶつけ、簡単な試合にはさせない。彼にとって最高にハードな試合になるよう全力で戦う」

■ONE95対戦カード

<Super Seriesムエタイ世界女子アトム級選手権試合勝/3分5R>
[王者] スタンプ・フェアテックス(タイ)
[挑戦者]アルマ・ユニク(豪州)

<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
秋山成勲(日本)
アギラン・タニ(マレーシア)

<キックボクシング・バンタム級/3分3R>
ジャン・チェンロン(中国)
テイラー・ハードキャッスル(豪州)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ハン・ズーハオ(中国)
アンドリュー・ミラー(英国)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
松嶋こよみ(日本)
クォン・ウォンイル(韓国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
タリック・ケバベス(モロッコ)
アンダソン・シウバ(ブラジル)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
ライニア・デリダー(オランダ)
ジルベウト・ガルバォン(ブラジル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ロドレックP.K.センチャイムエタイジム(タイ)
リアム・ハリソン(英国)

<67.5キロ契約/5分3R>
チャン・レイ(中国)
アンソニー・アンゲラン(オランダ)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
ファン・ロン(中国)
シェリフ・モハメド(エジプト)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ニウ・カンカン(中国)
エリック・ケリー(フィリピン)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ユン・チャンミン(韓国)
トレッスル・タン(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
アンジェリー・サバナル(フィリピン)

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