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【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その壱─ベン・アスクレン×ロビー・ローラー「柔らかい」

Askren【写真】大きく抱えられた投げられるなど、ONEやBellatorでは見られないアスクレンがいた (C)Zuffa LLC/Getty Images

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年3 月の一番、第一弾は2日に行われたUFC235からベン・アスクレン✖ロビー・ローラ―の一戦を語らおう。


──フォラヤン戦の勝利から2日後、タイのプーケット訪問中にも関わらず3月の青木真也が選ぶ、この一番──宜しくお願いします。

「いえ、こちらこそよろしくお願いします。3月の一番はまずベン・アスクレン✖ロビー・ローラーですね。アスクレンはもう意味が分からない感じがあるんですけど」

──意味が分からない(笑)?

「あれだけブランクがあって、今度は米国でやって。しかも相性が悪いとされているロビー・ローラーに勝つというのは謎です。僕もローラー有利で見ていたので」

──ONEでヒリヒリした試合をしてこなかった。Bellator時代より、必死にやっていなかったようにも見えました。

「そうですよ。僕は階級下だったし、勝負論のある世界にいなかったんで。ベラトールで世界チャンピオンだといっても、ダナ・ホワイトからすれば『じゃぁ、お前は誰と戦ってきたんだ』ということになりますしね。で、今回のローラーとの試合を見て、1度もKOされていない強さを感じました。フレッシュだなぁと」

──これまでにダメージがある選手なら、あのローラーの猛攻で終わっていたと。

「もう立ち直れないですよね。あれだけ殴られていると。ストップでも全くおかしくないし。アスクレンはアゴが強くてフレッシュ。だからこそ、自分が組めてからの強さを信じている。そういう強さを感じました」

──フィニッシュはブルドッグ・チョークでした。

「ブルドッグ・チョークは技として有りです。ちょっとバカにしていたのですが、あの試合を見たあとに何回か練習で使ってみたんです。発想を変えると、割と効果的な技かもしれない。使ってこなかったので、技としての研究の余地は残されていると思います」

──強引な力技にしか見えなかったので。

「そう、力技と思われているのが、体重の掛け方で極める点など技術が必要で、研究すべき技だと思うようになりましたね」

──アスクレンにとってもテクニカルな技で、力技ではないと青木選手は思われますか。

「アスクレンは首を掴んじゃえば、何かを極めることができるという風に見えるんですよ。何より、僕らの寝技の概念をアスクレンに押し付けることってできない。彼の寝技には柔術という概念がないので。そういう僕らと同じ枠組みではないアスクレンが、ブルドックチョークをどう使っているのかは分からないです」

──なるほどぉ。

「アスクレンはサブミッションがない。肩固めかギロチンぐらいしか。サブミッション・ファイターでないので、サブミッションを信じていることはないと思います。でも組み技を信じている」

──アスクレンは自分が世界で一番強いと思っているように感じます。

「そうなんです。おめでたいんですよ。それって若松佑弥がデメトリウス・ジョンソンと2Rまで戦ったことにも通じると思うんです。僕はどうしても客観性があって、『〇〇は✖✖で△△だから不利だよね。だからこうしよう』っていうのがあるのですが、祐弥でいえば『俺のパンチが当たれば倒れる』というような主観が強い。

長南さんも主観が強くて、そういう人たちって無敵のゾーンに入ることができるんじゃないかと。信じる強さ、客観性の無さは良い方向で働くことがあると思います」

──そこでは本当に強いか、勘違いという部分が出てこないでしょうか。

「主観が強いというのは一つの個性であり、ストロングポイントだから羨ましいです。と同時に、アスクレンは組みに関しては本当に強い。スパーリングをすると、凄く柔らかいんです。力が伝わらなくて、球体を相手にやっているみたいで。

Marcelinho vs AokiADCC(※2005年5月)でマルセロ・ガウッシアと組んだ時にも『力が伝わらない』って感じたんです。そこと同じです。どんなに強くしても伝わらないから、どうにもできない」

──その力が伝わらないという感じになった選手は、マルセリーニョとアスクレン以外にもいましたか。

「アスクレンとマルセリーニョだけでした」

──興味深いです。以前、アスクレンにインタビューをしたときにサブミッション・グラップリングで勝てないのはマルセリーニョだけ。パウンド有りだと勝てるということを言っていたんです。

「その通りだと思います。実際、グラップリングのスパーではボコられていますし。でも、パウンドがあるとそうはならない。2人とも凄くテクニカルで柔らかい」

──そんなアスクレンは今のUFCウェルター級でどこまでいけそうですか。

「相性がある選手だと思います。だから本気で分からないです。チャンピオンのカマル・ウスマンとは競ることになると思います。アスクレンに勝つ目があるし、ウスマンがアウトすることもできる。いずれにしても、試合にはなる。

近代化したMMA、以前のローリー・マクドナルドみたいなのとやるとどうなるのかというのはあるのですが、今のUFCにはそういう選手はいない。

次はホルヘ・マスヴィダルとやるようだけど、スティーブン・トンプソンとやったら、どうなるのか……とか。ズッファが好きそうなドナルド・セラーニを当てたりしたら、スッとアスクレンが勝つだろうなとか色々考えることができて楽しいですね。

相性次第ですが、ベン・アスクレンはUFCでも世界チャンピオンになる可能性は十分にあると思います」

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