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【EJJC2019】世界の頂点が見えている=橋本知之がルースター級で準優勝──その軌跡を振り返る

EJJC2019【写真】表彰台が当然になってきた(C) IBJJF

15日(現地時間・火)から20日(同・日)にかけて、ポルトガルの首都リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会レビュー。第2回目は、最軽量級ルースター級で昨年世界3位の座に就き、今大会も優勝候補筆頭と目された橋本知之の戦いを振り返りたい。


<ルースター級準々決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def. by トーホールド
ジョルジ・ナカムラ(ブラジル)

優勝が期待される橋本の初戦(準々決勝)の相手は、GFチームのジョルジ・ナカムラ。一回戦の相手が欠場したため、こちらもこれが初戦だ。

試合開始直後に座る両者。橋本はすぐにベリンボロを仕掛けると、そのまま背後を取りかけ上になってアドバンテージを獲得する。ナカムラは橋本の右足にハーフで絡むが、橋本は腰を上げ頭と肩で重心を掛けてナカムラの上半身を押さえつけ、ヒザを抜きに行く。この動きでアドバンテージを2つ得た橋本は、やがて右ヒザを左方向に抜いてパスに成功、3-0とした。橋本はさらに左腕をルイスの首の下にこじ入れて枕を作ると、その襟を引きつけてナカムラの首を完全に殺してみせる。

ここから橋本はニーオンザベリーでアドバンテージを取ると、左足をステップオーバーして横三角のようにナカムラの首に掛け圧迫しつつ、首下から取った襟での締め狙い。これでアドバンテージを追加した橋本は、その後も完全にナカムラの上半身を殺して押さえ込んだ状態をキープし、ニーオンザベリーや締めによる得点やアドバンテージを加算。ナカムラに右足を絡まれてもすぐに抜いてパスの点も加えて、10-0とした。

やがて対角線上に体重を掛けていった橋本は、肩固めの仕掛けの要領で頭でナカムラの左脇を開けるが、ナカムラもここは対応。残り3分ごろ、余裕を持って完全に抑え込んでいることで審判からルーチを宣告されもした橋本は、ナカムラの腹の上を滑らせるように体重を前のめりにかけると、左足に手を伸ばしてトーホールドに。ナカムラがすぐにタップして橋本が完勝した。

オープンガードの印象の強い橋本だが、この試合ではパスを決めた後にタイトに抑え、トップから完全に相手をコントロールした上で最後は極めてフィニッシュ。その進化を見せつけての完勝で、澤田伸大に競り勝ったアニエル・ボニファシオとの準決勝に駒を進めた。

<ルースター級準決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def. by 3-0
アニエル・ボニファシオ(ブラジル)

開始後同時に引き込んだ両者。橋本はベリンボロを仕掛けるが、ボニファシオも回転してついてゆく。すると橋本はボニファシオの左足を捉えてアキレス腱固めに。決まらないと見るやブレイクが入り、両者にルーチが与えられた。

再開後、再び両者引き込みへ。橋本は再びベリンボロを繰り出すと、今度は上体を起こして上になってアドバンテージを獲得。右足に絡んでくるボニファシオに対し、橋本はニースライドでヒザを抜きにかかる。対するボニファシオは橋本のラペルを引き出し、橋本の右ヒザ裏と自らの左ヒザ裏から通して掴む体勢に。しかし橋本はそれに構わず右腕でボニファシオのワキをすくい、さらに前傾姿勢で左腕でボニファシオの頭を抱えタイトに体重をかけて上半身を殺すと、そのまま右ヒザを抜いてパスに成功。開始後約3分の時点で3点を先制してみせた。

ボニファシオがすぐに鉄砲の要領で返しに来ると、橋本も無理に上に固執せずにダブルガードの体勢に。ここで橋本はまたしてもボニファシオの左足を捉え、アキレス腱固めの体勢に。そのまま極めを狙いつつ、それが叶わなくてもリードしたまま試合の流れを止める巧みなゲーム運びだ。なんとか動いて展開を作りたいボニファシオだが、橋本のアキレスグリップから逃れられぬまま時間が過ぎていった。

残り4分。ボニファシオは立ち上がるが、橋本は左足をコントロールしたまま外側に回ってボニファシオの体勢を崩すと、再びダブルガードに持ち込む。その後も状況の打開を試みるボニファシオだが、橋本はその両足のズボンを掴んでコントロールし展開を作らせない。

残り2分を切り、内側に横回転を試みるボニファシオ。すかさず反応してそのズボンの尻を掴んだ橋本は、インヴァーテッドの体勢に。そのままボニファシオの尻を引き寄せてよじ登ってバックに付きかける橋本。ボニファシオが振りほどいてスクランブルから状態を起こすと、橋本も素早く動いてバックを奪いにゆく。しかしここで橋本は勢い余って頭からマットに墜落。インヴァーテッドで対応したところでレフェリーがブレイクが入った。ダメージを負った橋本はしばし医師団の処置を受けることになった。

残り1分半、橋本のインヴァーテッドから再開。柔軟な体を利して正対に戻した橋本は、ボニファシオの左足に絡んで得意のデラヒーバを作る。時間のないボニファシオは上からトーホールドを狙うが、橋本は極めさせない。さらに橋本は下からボニファシオの体勢を崩してダブルガードに持ち込むと、またしてもボニファシオの足をアキレスで捉え、最後の反撃も許さずに3-0で勝利した。

初戦と同じく、トップからの攻撃の強さを見せた橋本。パスを奪った後は、師匠のカイオ・テハばりにアキレスグリップを利用して相手にさらなる展開を許さずに完勝。橋本は相手を上から制圧する力強さと、ポイントゲームにおける試合運びの巧みさの両方を発揮した上で、昨年の世界準優勝者ホドネイ・バルボーザとの決勝の舞台に駒を進めた。

<ルースター級決勝/10分1R>
ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)
Def. by 4-4 アドバンテージ2-1
橋本知之(日本)

昨年の世界2位のバルボーザと、3位の橋本による決勝戦が実現。これは絶対王者ブルーノ・マルファシーニが引退した2019年現在、世界一にもっとも近い二人の戦いといえるもので、今年の最軽量級の頂点を占う上でも重要な一戦だ。ちなみに両者は一昨年の世界大会の準々決勝でも対戦しており、この時は下を取った橋本が最後にニアスイープで攻勢に出てレフェリー判定をモノにしている。

試合開始後すぐに近づくと、互いのギを掴みながら座る両者。左足をバルボーザの右足に外から絡めた橋本は、すぐに左に横回転を仕掛ける。バルボーザもともに回転するが、そのまま橋本が体を起こして上になってアドバンテージを獲得した。このヨーロピアンでの橋本は、下に固執せず上からの戦いを試している感がある。

ここでバルボーザは横向きで橋本の左足に絡む得意のハーフガードの体勢を作ると、そのまま橋本の右足のズボンも掴んでスクランブルに。そのまま橋本の右足を引きつけてタックルの要領で倒して上になり、2点を先制した。ただしアドバンテージは橋本が一つリードしているので、上下が入れ替われば即逆転となる状況だ。

下になった橋本は、両腕を張ってバルボーザのギを掴み距離を作ると、バルボーザの右足を掴んで左足を絡める得意のオープンガードを取る。と、橋本はすぐに左回転。そのままバルボーザのズボンを掴んで尻を出させる要領で引き寄せて上になり、すぐにスコアは2-2、アドバンテージ差で逆転してみせた。

再び下になったバルボーザは、今度は橋本の右足を抱くディープハーフに入る。橋本は左腕でバルボーザの頭に枕を作り、腰を切ってマットに付けて安定させながら足を抜こうとする。やがて体を起こしてニースライドパスに移行した橋本。しかし、バルボーザは橋本の左ヒザのズボンを掴んで引き寄せると、スクランブルから上に。これでスコアを4-2として再逆転に成功した。先ほどとは逆側の足に絡みつつ同じ形のスイープを決めたところに、バルボーザのハーフガードの完成度の高さが伺える。

残り7分。頭を低くして両足担ぎの体勢に入るバルボーザ。橋本得意のデラヒーバの形はこれで封じられた。それでも橋本は両腕と足を使って距離を取ると、左足を旋回させる。ファーサイドの腕十字を狙うようにバルボーザの左ワキに上からこじ入れながら右回転した橋本は、バルボーザの股間をくぐって体勢を崩すと、さらに回転を続けしながら尻を掴んで上を狙う。しかしバルボーザもその動きについていって上をキープした。これで橋本がアドバンテージを追加かと思いきや、審判のコールはない。

立ってパスを狙うバルボーザに対して、橋本は足を効かせて対処。その後橋本がシッティングの体勢で前に出ると、下がるバルボーザにルーチが宣告された。橋本に足を絡ませたくないバルボーザは、再び座って担ぎの体勢に入る。と、橋本はすかさず右腕を超えて三角の仕掛けに。バルボーザが嫌がって腰を引くと、橋本はその右腕をオモプラッタで捕獲。バルボーザは橋本の体をまたごうとするが、橋本はすかさずその左足を捕まえて許さない。そのまま体勢を起こした橋本は、バルボーザに前転を余儀なくさせて上を奪取。得意のデラヒーバを警戒されてなお、別の形から攻撃する多彩さを発揮した橋本が、残り5分のところで再び逆転に成功した。

バルボーザは下になりながら、橋本の右足にリバースハーフで絡んでゆく。橋本はスプロウルしながらその右足を抜くが、バルボーザはならばと橋本の左足になんとか絡む。しかし橋本は、上からバルボーザの首を押さえつけながら下がり、距離を取ることに成功。バルボーザ得意のハーフの形から逃れてみせた。

得意の形を封じられたバルボーザは、両足でラッソーを作るオープンガードに。特に右側のラッソーは、橋本のラペルを絡めて掴んで引きつける強力な形だ。対する上の橋本は、腰を引いて頭を低くする形でバルボーザに足を絡ませない。この体勢で、両者ともにあまり展開を作れないまま後半戦の時間が過ぎてゆく。橋本としては、このまま試合終了までトップをキープすれば優勝だ。対するバルボーザは仕掛ける術がないのか、それともあえて終盤に最後のポイントを狙うため待機しているのか──?

残り1分、果たしてバルボーザは横回転を敢行。インヴァーテッドの形から、ラペルを絡めた橋本の左ヒジを引き寄せると、両足で橋本の左腕に下から絡んでゆく。橋本は坐りこむように腰を引き、下から中に入ってこようとするバルボーザの胸元を蹴って遠ざける。優勝が懸かった最後の熾烈な攻防だ。

ここでバルボーザは橋本の左足のズボンを掴むと、肩から前転して橋本の左腕に絡むオモプラッタの体勢を作る。ここでレフェリーがバルボーザにアドバンテージを宣告。残り40秒の時点で、バルボーザはアドバンテージ数で橋本に並んだのだった。

さらにバルボーザは、そのまま横に移動して距離を作って上体を起こしトップポジションを狙う。が、橋本も左腕を絡まれながらもうまく動いて体勢をキープする。再び背中をつけたバルボーザは、ならばと橋本の背中越しにラペルを掴んで引き寄せてのスイープを狙う。橋本が右足をポストして耐えるなかで試合が終了した。

終盤にアドバンテージで並んでみせたのはバルボーザだが、ルーチ1つ受けているぶん橋本の勝利もあるかという幕切れ。が、次の瞬間レフェリーはバルボーザにもう一つアドバンテージを与えるジェスチャーを。最後に攻撃の体勢を作ったバルボーザが、劇的な逆転勝利でヨーロピアンを制した。

ただし、上下が入れ替わりかけたわけでもないオモプラッタで立て続けに2つアドバンテージが入るのか。関節技として効果があったという判断なのかもしれないが、上下を入れ替えかけた橋本の中盤のニアスイープにはアドバンテージは与えられなかった……。釈然としない面があったことも否めないが、それがブラジリアン柔術の競技会だ。

とまれ、6月の世界大会の前哨戦というべきこの試合。序盤では橋本がデラヒーバ、バルボーザがハーフガードとお互いが得意の形からの攻撃を決め、その後は互いにそれを封じ合う展開に。それでもなお両者は、別の形からの攻撃を繰り出して引き出しの多彩さを見せつけた。世界最高峰の座を争う二人が、その技量を存分に発揮しせめぎ合う好勝負だった。

最後に競り負けた形となった橋本だが、今大会は3試合通してトップからの攻撃を繰り出し、新しい強さを見せたことは特筆に値するだろう。決勝のバルボーザ戦の結末も、終盤の3分をトップキープで乗り切ろうと挑んだ結果と言えるかもしれない。当然勝利を目指しつつも、自身の技量を高めることも意識して橋本は戦っていたように見えた。

今回お互いその強さを肌で知った、昨年世界2位と世界3位。6月の世界大会で両者が再び合間見えるとしたら、その時は今回以上に高度な戦いが繰り広げられるに違いない。そしてその勝者が2019年の柔術世界一の座に輝く可能性は、極めて高い。

■EJJC2019ルースター級リザルト
優勝 ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)
準優勝 橋本知之(日本)
3位 カルロス・アルベルト(ブラジル)、アニエル・ボニファシオ(ブラジル)

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