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【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その参─松嶋こよみ×マラット・ガフロフ「アッパレです」

Koyomi【写真】ここ一番を落としてきた松嶋が、キャリア最大のここ一番で勝利を手にした (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ9月の一番、第3弾は22日に行われたONE79から松嶋こよみ×マラット・ガフロフの一戦を語らおう。


──9月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか

「松嶋こよみ✖マラット・ガフロフですね」

──Gladiator、パンクラス、Grachan、HEAT、修斗とケージMMAがあったなかでONEで勝利した松嶋選手に……。

「いや、北岡さんから連絡があって『今月どうなの?』って。まぁ、先輩に言われると……。全く松嶋選手は頭になかったんです。それは松嶋選手の勝利はこの企画の手から離れた場所にあるって考えていたので。パンクラスのネオブラッドで勝った鈴木千裕選手とか中島太一の線かなという感じだったのですが(笑)」

──青木選手はグラチャンの山本琢也✖岸本泰昭戦は気になると言われていました。

「映像も視ました。でも山本選手と岸本の試合はあまり乗れるモノじゃなかったです」

──そうなのですかっ!!

「岸本のコンディションが今どうなのかって思ったし、山本さんはずっと格闘技界にいてくれる人じゃない。好きでやっている人なので、別にここで引き上げなくても別な幸せがある人だと思うので。あの生活があるから、良いじゃんって」

──なるほど。強さという部分ではどのように捉えていますか。

「分からないです。正直、岸本がそこまで強いと思っていないなか、攻防があったので。これからの選手ではないでしょうか。ああいうスタンスでMMAをやっている人には、これ一本に賭けている人間は負けちゃいけない。だから勝った山本さんは、ああいうスタンスでやるのも良いんじゃい?というぐらいしか、印象を持ちえないです。

ああいうスタンスでここまで来たのは面白いです。ただし、僕はずっとコレをやってきた。ずって見てきました。あのスタンスではココか、ココから少し上で止まります。素質だけじゃ、MMAは止まるんです。切磋琢磨しないと。

だからこそ松嶋選手になったというのはあります。切磋琢磨する環境に身を置いて、とにかくガフロフによく勝ったなと」

──つまり事前の予想では松嶋選手が不利だと考えていたわけですね。

「きついんじゃないか、話にならないというぐらいだったので、驚きました。松嶋選手の良いところがぶつかり、ガフロフも少し落ちていたのなっていうのはありますね」

──それにしてもガフロフを相手に構えを変えて、右を入れて勝つというのは……。

「いや、アッパレですよ。所属を変えたり、ISAO選手に反則のヒザ蹴りをしたり色々と言われることもあったと思います。それを一掃して、お釣りがくるぐらいの勝利でした。だからAOKI AWARDじゃない……それ以上のことをやったんです。実力というかリング上が全てとアントニオ猪木が言っていましたけど、アレで全部ひっくり返した。その爽快感も良かったです。

でもその勝利が特に何も業界のなかで特別なこととして取り扱われていない。瞬間風速みたいなモノで消費が早いということがまた明らかになりましたよね」

──試合内容的には下段、上を取った攻防、そして最後のパンチと松嶋選手の良いところが本当に出た試合だったと思います。

「あのひっくり返した時ですね。正直、僕は蹴りは分からない。まぁ試合自体はヨードン!!みたいな感じで、実力的には未知数ではあります。ただ、拳をやったことも含めて……ここでピックするのが松嶋選手であることは、結果的に良かったかと」

──その負傷を利して、3月の日本大会で大勝負に直結できるかもしれないですしね。

「発言権が出てくる勝利です。松嶋選手以外の選手が負けて……そう、若松が負けて松嶋選手だけが勝ったというのは良いですよね。事前の予想では内藤のび太、若松が勝って松嶋選手が負けるという感じだったので、彼一人の勝利は良いです。

ここからは厳しい言い方になるけど、本当はガフロフぐらいに日本で勝ってUFCへ行くという道がないと。そういう試合がONEと契約しないとできないというのは辛い話ですよ」

──月刊、青木のこの一番が始まって1年半。ずっと青木選手はそういう指摘をしてくれていますが、日本は劇的に変わることができない、ONEがあって良かったと思います。

「UFCへの道が狭くなったのは厳しいですよね。5、6年前日本で勝ってUFCに行けるという道筋、元UFCファイターに勝てばステップアップできるというのがあったじゃないですか。

ALIVEの鈴木さんが名古屋の修斗にシェーン・ネルソンを呼んで久米と戦わせたり、HEATの志村さんもストラッサー起一選手のためにエドワード・ファーロロットを招聘してあげたり。赤字になってもUFCに選手を送り出すっていう気概があった。それが今ではもうありえない」

──UFCの受け入れ態勢もあってのことですが、パンクラスはそういう国際戦を組む努力をしてきたと思います。

「その次に強い外国人選手を呼んでいるのは、HEATですから。オク・レユンだとか、こないだ春日井たけしに勝ったキム・ミョンギュとか強いですよ。春日井の負けはちょっと気持ちが切れたのか……疲れちゃったんだろうなぁ。気持ちは分かります。

凄くラディカルにやってきた選手なので、エキセントリックで他人と上手くやっていけなくても、強くなってUFCに行こうとしていた。俺も含めてですけど、春日井も言い方が悪いけど発達障害じゃないですか」

──……。

「一つのことに拘ってしまう。その春日井がここでプツン切れてしまうのは分かるような気がします。対して松嶋選手っていうのは、世代が違う。AACCですよ、多趣味で格闘技に縛られていない」

──本質はAACC(苦笑)。

「いや高島さん、そうだって。本質はAACC。他のことにも趣味があって、格闘技は彼にとって一つの色だから」

──格闘技一色にするためにパンクラスイズムに移ったのではないでしょうか。北岡選手の刹那的な部分を求めて。

「いや、北岡部屋に入っても片平(なぎさ吉幸)選手だって高野選手(SARAMI)だって変わらなったから。北岡さんのところに行く人は、北岡さんのように過激に格闘技がやりたいからなんでしょうけど、松嶋選手も含めあそこまではできない。

ただね、そんなこと言おうがガフロフに勝った松嶋選手の勝利は素晴らしいです。日本大会でフェザー級王者マーチン・ヌグエンなのか、クリスチャン・リーなのか。またはロシアの強豪だって当てられる可能性がある。その可能性につなげた勝利です。もっと騒ぐ価値のある勝利だったんです」

──ということで9月のアオキ・アワードは松嶋こよみ選手に決定しました。

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