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8月23日、ONE記者会見に向けて【Gray-hairchives】─10─Sep 5th 2011 Victor Cui

Cui
23日(木)、東京都新宿区パークハイアット東京で来年3月31日のONE日本大会に向けての記者会見が開催される。

Gray-hairchives─1995年1月にスタートを切った記者生活を、時事に合わせて振り返る──第10弾はゴング格闘技223号より、ONE旗揚げ戦を2日前に終えた当時のCEOビクター・クイのインタビューを再録したい。そして、会見までONEの歴史をインタビュー再録で振り返ってみたい。

エドゥアルド・フォラヤンがケージの中の動きで、自分の目を開けさせてくれ、ビクターの話を聞くことで目が覚まされた。こういう人がMMAを仕切るようになったのか、日本とは違う。ONEをしっかりと報じる必要があるとビクターが教えてくれた。今となっては、当時ビクターが話していたことはチャトリと建てたプランだったに違いない。

7年前から彼らはこのようなビジョンを持ち、口にしていたのだ──アジア最大の格闘技大会を開催するにあたって。イメージという言葉を使わなくても、チャトリも同じだ。


──ONEの旗揚げイベントを終え、今の心境を教えてもらえますか。

「ホッとしている。チケットはソールドアウトで、観客の40パーセントが女性だった。MMAのファン層が広がっている。それが、とても大切なことなんだ」

──1万2千人収容の会場を、半分に仕切っての大会開催でした。

「最初から、ハーフサイズでイベントを開く予定だったんだ。まだ、私はMMAプロモーターとしての経験が足りない。1万2千枚ものチケットを捌くことはできないと分かっていた。それに大きなスクリーンを設けたかったんだ」

──そもそも私たち日本人からすると、シンガポールとMMAが合致するイメージがなかったのですが、ビクターはなぜ、MMAをこの地で開催しようと思ったのですか。

「私はPPVで第1回UFCを見ているんだ。『なんであんな細い男が、大きな人間に勝てるんだ』って、大興奮したよ。ちょうど、家の庭の雑草が頭の辺りまで生えていて、すぐにオクタゴンの形に刈って、友人たちとロールするようになった(笑)」

──ハハハハ、本当ですか!

「それ以来、UFCは毎大会チェックしてきた。もちろん、PRIDEも大好きだったよ。その後、15年間スポーツ産業界に身を置き、五輪、世界陸上、ゴルフのPGAツアーなどの開催に携わってきた。そのうちの6年間はシンガポールに住み、ESPN STARで働いていたんだ。MMAはもっと大きなスポーツになるという確信があって、パイロット版として昨年、マーシャル・コンバットを行なうようになった」

──マーシャル・コンバットはESPNE STAR内での企画だったのですね。

「そうだよ。2日連続のイベントで、計12回開催した。カジノとスポンサー契約を結び、実験的にTV中継も持つようになった。ケージの中に関しても、ルールやレギュレーションを作成するために思考錯誤が必要だった。レフェリーやジャッジも育成しないといけないからね。アジアには、タイムキーパーもいない状況だったから」

──そのアジアというのは……。

「オオ、申し訳ない。私がここでいうアジアは、日本以外ということだよ」

──正直、私も日本人ですからONEがアジア最大のイベントと謳っていると、少し思うところはあります(笑)。

ONE 01「分かっている。私が言うところのアジアは日本以外だって、いつも説明しているんだ。日本は他のアジアの国とは、何から何まで違っている。例えばESPNとの契約にしても、アジアのESPN STARではなくて、米国のESPNと交渉する必要がある。決して日本のMMAイベントを軽視しているなんてことはないから、絶対にそこは理解してほしい」

──冗談のつもりだったのに懸命に弁明してくれるなんて、こちらが恐縮してしまいます。そのタイムキーパーもいない土地で、MMAを開くにあたって、成功する根拠をどこに求めたのですか。

「シンガポールは東南アジアのなかで、最も生活水準が高く、安全でTVビジネスも標準以上のスキームが確立されている。ビジネス基盤が整っていた。足りなかったのは、ファイターと運営陣だ。だから、マーシャル・コンバットでファイターを吟味し、ファイターが安全に戦える運営陣を育てた。血液テストも行なっているし、ステロイドチェックも将来、取り入れようと思っている」

──ビジネスとして、成立させるために安全面にまず気をつけたということですね。

「MMAをビジネスにするには、セーフティーに運営しなければ成り立たない。だから豪州でUFCのレフェリーを務める人物を招き、3日間のトレーニングコースを組み、レフェリーやジャッジ、タイムキーパーの指導を行なってもらった。マーシャル・コンバット時代には、ほとんどのプロモーション関係者が気にも留めない事例に関して、一つひとつ目を配ってきたつもりだ」

──一つ、伺っても良いですか。

「もちろん」

──それらマーシャル・コンバットの仕事をESPNの社員時代に行なっていたということですか。

「そうだよ(笑)。マーシャル・コンバットはESPNのプロジェクトだったんだ。ONEを開催するにあたって、ESPNを退社し、自分のカンパニーを創った。こんな機会はないって思ったからね。MMAは誰も知らないスポーツではなく、既に米国、僕の生まれた国カナダ、オーストラリアで爆発的な人気を誇っている。それなのに日本以外のアジアでは、小さな大会ばかりで、誰もMMAを本格的なビジネスとして取り上げようとしていなかった。ビジネスで築き上げたコネクションを使えば、ONEは、アジア全土で10億人が視聴することが可能なんだよ」

──サラリーマン時代に、会社の資金で運営陣を育成し、ファイターをセレクト。さらに元来持つネットワークを生かして、巨大なビジネスを展開していく。シンガポールでの成功が、他の東南アジア諸国への進出の足掛かりになると。

「その通りだ(笑)」

──いや、参りました(笑)。ところでUFC人気の爆発が、ONE発足の後押しになったことは間違いないと思われるのですが、ブラジルや豪州、欧州で見られるようにUFCと同じルールを採用しなかった理由を教えてもらえますか。

「それはね、ある意味ハッタリ、ポーズでもあるんだ。私は母がフィリピン人で、父は中国人、そしてカナダで生まれた。12歳までアフリカに住み、カナダに戻った。そして、今、アジアで生活している。私自身が東洋と西洋の交流の象徴なんだ。ONEを開始するにあたって、大会運営を円滑にするために、ユニファイド・ルールを適用することは非常に簡単な選択だったよ。自己のルールを採用したのは、そうだね、イメージだよ」

──イメージ?

「東のMMAと西のMMA、PRIDEルールを一部採用し、ケージでヒジ有りMMAを行なう。ONEはUFCとPRIDE、両方の良さを追求し、西にも、東にも属さない。PRIDEとUFCが融合した、ベストショーを目指していることを、独自のルールを採用することで明確にしたんだ」

──本当に我々は歴史と過去に胡坐をかいていたんだと、気付かされてしまいました。

「もちろん、このルールがベストだとは思ってない。大会の成長と、ルールの進化は正比例しているはずだよ。MMAをビジネスとして成り立たせるためには、スポーツとして正常でなければならない。それが安全性の確保だ。安全性を確保するためには、ルールの修正、改善は加えられていくべきだ。加えてMMAをビジネスとして、成功させるにはエンターテインメントに昇華させる必要がある」

──MMAのエンターテインメント化とは、何を指すのですか。

「何もケージの中でバチバチやりあえって強要するんじゃない。ケージサイドにレッドカーペットを敷くのもエンターテインメントだよ。リングサイドシートを購入してくれたファンは、そこで飲み物やライトフードを口にし、歓談しながら試合が見られる。もちろん、自分の席で座って観戦してもいい。ドレスアップしたセレブリティが際だって見られる雰囲気を会場で作り、ライブ、オンライン、オンモバイル、オンTVを揃え、披露するんだよ」

──それもイメージ戦略ですね。

「アリーナに足を運んでくれたファン全員に満足して家路についてほしい。会場内の雰囲気が、エンターテインメント性を際立たせる。これこそ、MMAイベントに欠かせない、絶対的に大切な要素なんだ」

──なるほど、では最後に将来的な展望を教えていただけますか。

「将来のことを考えると、興奮しすぎてしまうね。今後12カ月で8大会を開く。凄く忙しくなると思うけど、毎大会ごとに成長してきたい。12月にマレーシアのクアラルンプール大会、その次は2月にインドネシアのジャカルタ大会、3月にシンガポールに戻ってくるよ」

──ONEがアジア諸国に定着すれば、アジアのMMA普及の後押しになりますね。

「メインカードでビッグネームのファイトを楽しんでもらう一方で、アンダーカードでそれぞれの土地のファイターに経験を積ませ、世界で戦えるレベルに育てたい。私はイコール・システムと呼んでいるんだけど、ローカルファイターに経験を与えるために資金を投じる。そんな彼らの中から、各国のナンバーワン・ファイターが生まれ、アジアの王者に君臨する。結果、国際的に名前のあるファイターに成長する。その時が、ONEも世界に通じるイベントになっている時なんだ」

──今日は貴重な話を聞かせていただき、ありがとうございました。いつの日か、ONE JAPANが開催されることも楽しみにしています。

「さっきも言ったように、日本は全ての事業が特殊だ。だから、もっと時間を掛けないといけない。一歩ずつ、ステップアップをしていき、いつの日かね(笑)」

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