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お蔵入り厳禁【Bu et Sports de combat】極真セミコン交流会を見て─02─「空手とはソフトウェアです」

Kyokushin【写真】80キロ級優勝のステファノフ選手(C)MMAPLANET

3日(日)国際空手道極真会館が大阪市浪速区のエディオンアリーナ大阪で開いたI.K.Oセミコンタクトルール2018全国交流大会。

フルコンタクト空手界の巨人が、間合い、技の正確性を追求するために開いた競技会。頭部、同体、脚部にプロテクター、拳は拳サポーター着用で顔面は寸止め、下段への攻撃やヒザ蹴り禁止、突きは直突きのみで連打は2発までというルールで行われた交流会を視察した岩﨑達也はどう見たのか──後編。

極真が上段突きを認め、下段蹴りを廃した。お蔵入り厳禁、この日は日本のMMAにおける打撃が変わる節目になるかもしれない。

<極真空手セミコン交流会を見て──Part.01はコチラから>


──当たったかどうかでなく、入っているかどうかを見極めることは非常に困難かと思いました。当たったかどうかでも、攻撃が交錯した時に審判の判断は分かれますし。

「つまり4人の副審がいて、主審がいるというのは多数決になってしまうんですよね。そうなると大山総裁は、自分の見立てと違っていれば延長戦をやらたりして。そこには不満の声も挙がっていましたけど、実をいうと武術的な考えでは極真空手は大山空手を学ぶ場であるとすれば、大山総裁が納得できなければ審判の裁定はひっくり返しても構わないんです。

ただ剛毅會とすれば、岩﨑達也がどうこうではなく武術の四大要素を身につけられるかどうかという見地で、勝敗が決まっていくことを稽古しています。

ただし、それは競技化するのは困難です。審判が納得、見ている人が納得するモノでないといけなくなるので。真理としては武術は競技化すると、武術からは離れるということなのです」

──ただし、ストリートで身に着けた技術を試すわけにもいかないですし、稽古よりも実戦に近い精神状態になれる試合は必要になってきますよね。

「剛毅會で選手として稽古している連中の目的はMMAです。もちろんMMAに出ない人でも、武術のエッセンスを学べる組手です。そして1×1で戦うMMAの選手にも役立つ。

なので私の希望とすれば、MMAの選手にI.K.Oセミコンタクトの大会に出て行ってほしいですね」

──極めを取らないといけないのであれば、MMAの選手は出られないです。あの動作はMMAに勝つには必要ない。そして顔面を当てて良いようなルールの試合を剛毅會で開いてほしいですね。

「大会を開くと、大会を成功させることが目的になってしまう。今回は交流大会というネーミングがついていました。それは練習試合の意味合が強いということなんです。松井館長自身が言われているように、お披露目するレベルに来ていないかもしれないという段階での試合だったんです」

──80キロ級で優勝したマリオス・ステファノフ選手は素晴らしい動きでした。

「あの選手はもともとギリシャでポイント空手をやっていたと聞いています」

──その選手が日本にやってきて極真空手を学ぶ。ステファノフ選手こと空手を究めようとしている逸材ではないですか。

「ノンコンとフルコンの垣根がないというのは、それは素晴らしいことですよ」

──そのなかでやはり極真だと思ったのが、競技人口です。交流会、お披露目するレベルにない状態かもしれないというのに34カテゴリーで217名が出場。競技会で勝つためといえど、顔面パンチを想定して遠い距離から蹴りを入れ、突きを伸ばすことに長けてくれば、日本の格闘技界の打撃が変わる潮目が見られるようになるのではないかと思いました。

「MMAに出てくれば、変わることは十分にありえるでしょうね。それはその通りです。ただし、言わせてもらうと……蹴りは極真でも、突きに関してはノンコンでしたよね。当破(アティファ)になっていない」

──アティファですか?

「それはまた後日触れるとしますが、それが目的なんです。『エイヤー』って声を出して打っていれば、何でもよいというわけではなくて」

──つまりはそういうことですよね。

「今回の大会は極真の蹴り+ノンコンの突きになっていた。そこにあなたが仰ったMMAの打撃を変えるかもしれないという部分で、突きは剛毅會の目指す突きではないということなんです。剛毅會の本道、目的は私の想う空手の型を身に着けることです。

だから、所属選手でないMMAの選手には試合に勝てる打撃をアドバイスはさせて頂きますが、時間を考えると空手は教えられないのが本音です。基本稽古からサンチンができるようになるまでに3年ぐらいかかることもあります。

MMAであろうが、セミコンタクトルールであろうが、試合というのはハードウェアです。空手をやるということは、ソフト、ソフト、ソフト。ソフトの積み重ねです」

──そのソフトを使って、ハードウェアで日本人選手に強くなり、勝利を手にして欲しいのです。

「それはそういう気持ちのある日本人選手が、あなたのフィールドで現れるかということですよね。だからこそ、極真がノンコンでも上段突きを認めた試合を行った。これは非常に有意義なことなんです。

そして下段蹴りを禁じた。敢えて稽古と呼ばせてもらいますが、素晴らしい稽古内容になりました。これまで顔面なし、ローキックがあることで発展できる箇所がしていなかったので」

──それは顔面有りかつロー有りの時に生きるのでしょうか。

「生きます。ギリシャの選手は中段蹴りをブロックせずに見切っていた。あの選手は下段があっても、食わないですよ。堀口恭司選手がローを蹴られて、足を引きずるなんてシーンは見たこともないですし、想像もできないです。

大切なことは相手との関係です。距離であったり、精神的な部分であったり。それが先を取るということにも通じてきます。枝葉の部分で勝負を決める……足を蹴り合うということをやり過ぎてきたんです。組みがあれば、受け返しなんて必要なく組む。そして、それが戦いです。

そうですね……結果として学ぶべきモノが再確認できた交流大会だったと思います」

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