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【ONE76】エドゥアルド・フォラヤン「マーシャルアーツを究めるということは、一生旅をするようなもの」

Folayang【写真】非常に物静か、普段から闘志をまき散らすことはないフォラヤン (C)MMAPLANET

27日(金・現地時間)、フィリンピンはマニラのMOAアリーナでONE76「Reign of Kings」が開催される。今大会でフィリピンMMA界のマニー・パッキャオことエドゥアルド・フォラヤンが出場し、アジズ・パフルディノフと対戦する。

2011年9月のONE第1回大会のメインイベント出場、一昨年には青木真也を破りONE世界ライト級王者に輝いた。そのベルトを失った母国で8カ月振りにファイトするフォラヤンを、マニラからバスで6時間──標高1400メートルのバギオに訪れた。

静かなる山の民エドゥアルド・フォラヤンにとってのMMA、マーシャルアーツとは。


──金曜日に戦績17勝0敗、あるいは20勝0敗と伝わってくるアジズ・パフルディノフと戦うエドゥアルドです。

「去年の11月にパンクラスで戦っているよね。試合は見た?」

──ハイ。富樫健一郎選手と戦っています。ローや後回し蹴り、パンチも威力があったのですが、とにかくテイクダウンからトップキープという手堅い試合が非常に厄介だったという記憶があります。

「ほんと、ロシア人っぽいファイターだよね。打撃が強くて、レスリングが強い。きっとテイクダウンして殴ってくるんだと思う。なるべく立ち技で戦って、特に僕が攻撃しているときのカウンターには注意したい。そして寝技でアドバンテージを与えないようにしないといけないと思う」

──アグレッシブなスタイルに落とし穴があると。

「アグレッシブに行く必要はあるし、だからこそしっかりと相手の動きを見て戦わないといけない。この試合は、そういう意味でも僕にとって大きなテストになるね。マーシャルアーチストとして、どのようなタイプの対戦相手にも勝たなければならないから」

──昨年の11月にタイトルを失ったマニラで再び戦います。マーチン・ヌグエン戦のトラウマを払拭したいですね。

「僕は結構、マニラで負けてしまっているんだよね(笑)。全部じゃないけど、ほとんど……アハハハハ。まぁ、でもそれがファイトであり、人生だよ。ホームのアドバンテージはあっても、逆も然りなんだ。いつだって勝利を目指しているけど、本当のマーシャルアーチストとして過去に何があろうが、より強くなっている姿を皆に見せたい。

そこが僕にとって今回のマニラでの試合で、大切な部分になってくる。去年の自分より、強い姿を皆に見てほしい」

──今やエドゥアルドはフィリピンでの知名度が非常に高くなっています。豊かな生活も手にしました。何もないところから始めたMMA人生、すでに達成感はないですか。

「僕としては……何かをやってのけたという気持ちはないんだ。達成感というのは夜を迎え、朝になったときにはもうなくなっている。いつだって次のことを考えていたいから。MMAでは誰もが成長し続けている。達成感なんて抱いていたら置いていかれてしまうよ。

Eduard Folayangそれにチャンピオンになろうが、人間として成長していないとマーシャルアーツを続ける意味はないしね。マーシャルアーツを究めるということは、一生旅を続けるようなもの。一度頂点に立ったからといって、終わるわけじゃない。

この旅は日々、学びがあるから終着駅なんてないんだ。一緒に汗を流している仲間から、常に学ぶことができる。それがアジアのマーシャルアーツ文化だよ」

──ところでライト級王者ウェンはライト級で試合をしていません。次の試合もバンタム級です。

「防衛しないのであればベルトを返上すべきだね。それかONEには暫定王座を設けてほしい。そうしないとライト級の選手にチャンスが回ってこないからね」

──ところでUFCがフィリピンでイベントを始めたころ、エドゥアルドはUFCで戦いたいという希望を持っていました。ただし、UFCはフィリピンでイベントを継続せず、逆にONEは年に4度もマニラ大会を開くようになっています。

「ONEには本当に感謝している。このスポーツをアジア中に広めてくれた。本当に素晴らしいことだよ。可能であれば、いつの日かUFCも本気でアジアのことを考えてくれることを願っている。それがアジアのアスリートにとって一番良い状況、チャンスが増えることになるから。

僕個人としては、今はONEで契約を全うしたい。その後に関しては、恐らくは僕にとってファイターとして最後の時期になるだろうし、ベストな選択をしたいと思っている。UFCは多くのビッグネームが揃っているから、アジアのアスリートにとって状況は楽ではないことは確かだよ。

だからONEのようにUFC以外のプロモーションが成長することが選手にとって本当に重要になってくる。ONEのような状況が増え、アジアの才能が世界に見いだされる未来が来ることを願っているよ」

──ファイターとして、太平洋を越えて北米で戦いたいという気持ちはないですか。UFCに限らず、向こうのビッグショーで。

「自分を成長させるためには毎試合、良い対戦相手と戦う必要があることは確かだよ。そして今はONEでより成長することを考えている。もう一度ONEのベルトを巻きたいんだ。失ったモノを取り戻したい」

──それにしてもエドゥアルドは初めてインタビューをさせてもらった7年前から、内面が全く変わらないです。本当に謙虚なままで。MMAのロールモデルはバギオにいる。それぐらいに自分は思っています。

「サンキュー(笑)。僕は幸運なんだよ。自分の技量を多くの人に見てもらう機会を与えてもらえた。それはチーム・ラカイのおかげで。ジェへ(ユースタキオ)がフライ級チャンピオンになったし、若い選手たちも成長し続けている。もっと彼らが活躍できるよう僕も役に立ちたい」

──個人的にいえばエドゥアルドがクォン・アソルと戦ったONE第1回大会のメインを見て、アジアのMMAに目を向ける必要があると学ばせてもらいました。だからこそエドゥアルドには来年の3月30日、初めてのONE日本大会に出場してほしいです。

「僕も日本大会は凄く出場したいと思っている。日本こそMMAが生まれた国だから。マーシャルアーツの持つ清廉さ、規律、尊敬心を日本の人たちは理解している。そういう部分を日本のファイターとより高めていきたいんだ。日本で戦うためにも金曜日は、これまで培ってきた力を発揮して勝ちたい……うん、だから……頑張るよ(笑)」

■ ONE76対戦カード

<ONE暫定世界バンタム級王座決定戦(※65.8キロ)/5分5R>
マーチン・ウェン(豪州)
ケビン・ベリンゴン(フィリピン)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
シャノン・ウィラチャイ(タイ)
青木真也(日本)

<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
ヘンゾ・グレイシー(ブラジル)
近藤有己(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
アジズ・パフルディノフ(ロシア)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
ラフール・ラジュ(インド)

<キック・72.5キロ契約/3分3R>
アルメン・ペトロシアン(イタリア)
クリス・ンギンビ(オランダ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
パイコス・ユースフ(キプロス)
ハン・ジィハオ(中国)

<ストロー級(※56・7キロ)/5分3R>
ジョシュア・パシオ(フィリピン)
ポンシリ・ミタシット(タイ)

<ムエタイ・68キロ契約/3分3R>
チャムアックトーン・ファイタームエタイ(タイ)
ブラウン・ピナス(オランダ)

<ストロー級(※56・7キロ)/5分3R>
レネ・カタラン(フィリピン)
ステファー・ラハディアン(インドネシア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ソー・サイ(カンボジア)
シエ・ビン(中国)

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