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【JBJJF】第12回全日本キッズ選手権、「子供だからといって……」カルペのキッズ柔術を岩崎正寛が語る

Carpe KIDs【写真】恐ろしく久しぶりにMMAPLANET登場の伊藤健一さんと共に、この日はキッズの指導を行っていた岩崎、誰にもでも、いつでもガチ (C)TAKAO MATSUI

22日(日)、東京都墨田区にある墨田区総合体育館において全日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)主催の第12回全日本キッズ選手権が開催される。

団体6連覇がかかるパラエストラ千葉に待ったをかけるのは、昨年準優勝のカルペディエムだ。職業柔術家が集うカルペディエム黒帯勢は、Quintetでの優勝でも分かるように国内屈指の猛者が集う。

そんなカルペディエムでは、キッズクラスに力を入れ始めて5年が経過。世界のトップ戦線で戦う岩崎正寛に、選手としてではなく指導者の立場からキッズの可能性を語ってもらった。
Text by Takao Matsui


――今回は、ムンジアルでもクインテットのことでもなく、キッズクラスの話を聞きにきました。

「ああ、そうなんですね(笑)。いいですよ。何でも聞いてください」

――まず子どもたちを指導する時に、気をつけていることはありますか。

「自分は、子どもという視点で彼らと接してはいません。柔術を習いに来ている、一人の柔術競技者として彼らを見るようにしています。技術を学ぶためには最低限のモラルは必要ですし、礼儀作法、人の話を真剣に聞くこと、聞けることが前提になります」

――子どもですから、ふざける子とか集中できない子もいるのではないですか。

「確かにいますね。入門したばかりだと、やはり新しい遊びの場として騒ぐ子もいますし、ふざける子もいます。でも、それをさせない空気感を意識して作っています」

――遊べない空気感というのは、ピリピリとした雰囲気ですね。

「みんな柔術を真剣に学ぶために来ているわけですから、ふざけるとケガをするかもしれないし、上達が遅れてしまいます。コンペティションクラスの選手も教えているんですけど、彼らはとても真摯に取り組んでいます。

その中にふざける子が入ってきても上達が遅くなりますから、真剣に学びに来ている子は怒るわけです。先輩に怒られて、はじめて間違いに気づきます。そうした雰囲気作りが、ようやく出来上がってきています」

――先生に怒鳴られるよりも、身近な先輩に怒られた方が効果がある場合もありますね。

Iwasaki「こちらも真剣に彼らと向き合っているので、言葉が荒くなることはありますが、感情的にはなっていません。子どもたちの集中力が切れそうな時に、厳しい言葉を使うようにしています」

――カルペディエムのキッズクラスは、どのくらい前から始めたのでしょうか。

「5年近く前だったと記憶しています。最初は護身術の修練のために始めたのですが、そのうちに大会へ出たいと言う子が増えてきました。一人の子が勝ち始めたら、みんな真剣になっていったんです。その子は、小さくて弱かったんですが、練習を真面目に取り組んでいるうちに結果を残せるようになりました。

柔術は、各カテゴリーに分かれて近いレベルの選手同士が試合をします。その中で差が出るとすれば、どれだけ練習を真面目にやってきたかだと思います。頑張れば、頑張っただけ成果が出るのが柔術です」

――努力家の岩崎選手らしい考え方ですね。たしかにサッカーや野球に比べれば、世界最高峰はともかく、あるレベルにおいては才能を努力の量が凌駕する競技かもしれないですね。

「真剣に練習すれば、それだけ結果が出るんですから、ふざける子は少なくなります。教育においても、それは良い学びの場だと思います」

――練習内容は、どのようなメニューになりますか。

「マット運動を最初にやって、小さい子と大きい子に分けて投げの打ち込み、タックル、そして最後はスパーリングですね。体幹を鍛えるために補強をやっても良いのですが、投げの打ち込みでもそれはできますし、投げの方が興味があると思います」

――ケガへの対策は?

「投げ技は、受け身のミスが大きくなりますので、そこは柔道と同じようにしっかりと学びます。あとは関節技については、腕十字でしたら腕が伸びきる前に止めるように言っています。クラッチを組んで外す姿勢になったら、ほぼ極まっていますので、止めるようにするとか。スパーリング中は、とくに注意深く全体を見るようにしています」

――ところで岩崎選手は、何歳から柔術を始めましたか

「自分は15歳の時ですね」

――4、5歳から柔術を習っていたら、世界で通用する選手が出てくるというのは短絡的な考えでしょうか。

「通用するかもしれないですね。でも、あまり過度にならないように、こっそりと期待しています(笑)。あとは、いかに長く続けられるのか、興味を保つことができるのか、導くことができるのかが自分たち指導者の仕事です。でも柔術を辞めて違う競技に専念することになったとしても、柔術で鍛えた基礎体力は活かすことができるはずです。

子どもたちもストイックですよ。週5、6回、通う生徒もいますし、レスリングなど違う習い事をしている子もいます。だから教えるのは、上達するためのヒントです。自分で考えなければ、なかなか習得はできませんからね。理不尽なことは言いませんし、やらせません。

ただ上達するために、当たり前のことを言っています。疲れたからと言って、すぐに休むなとか。その気の緩み、甘さが勝負の掛かったところで出てしまうので」

――その通りですね。勝利至上主義ですか、それとも……。

「先ほど頑張れば結果は出ると言いましたが、それでも勝負は運とか体調も関わってきます。絶対に勝つことはできなくても、できる範囲内で最高の準備をすることはできます。それが一番、大切です。挑もうとする気持ちが、成長につながります。勝ちたいと思う時、人は強くなれます。それは子どもも大人も同じです。だから自分は、子どもだからと言って接し方を変えることはしません」

――なるほど。カルペディエムのキッズが、強くなっている理由がよく分かりました。なにより世界の舞台で活躍している岩崎選手の言葉は、説得力があります。パラエストラ千葉とのトップ争いを楽しみにしています。

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