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【WJJC2018】展望─02─ライトフェザー級、究極の団子状態をリードするムスメシ。嶋田は混戦抜け出せるか

Musumeci【写真】ジョアオ・キラーのムスメシが、今トーナメントの本命だ (C)MMAPLANET

31日(木・現地時間)から6月3日(日・同)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。プレビュー第2回は、嶋田裕太、鍵山士門、宮地一裕らが日本から参戦するライトフェザー級の見所をお届けしたい。


【ライトフェザー級】
昨年決勝戦を争ったマイキー・ムスメシ(ブラザCTA)とジョアオ・ミヤオがともにエントリー。他にも超強豪の名がズラリと揃ったこの階級だが、本命&対抗はやはりこの両者だろう。

Musumeci vs Joao現在22歳のムスメシは昨年世界初制覇。BJ・ペンとラファエル・ロバト・ジュニアに次いで史上3人目(米国とブラジルの二重国籍を持つロバート・ドライズデールを加えるなら4人目)の米国人男子黒帯世界王者に輝いた。モダン柔術におけるポイントゲームにおいて無類の強さを誇るが、それは恐るべき地力に支えられてのもの。

昨年の準決勝ではアリ・ファリアス相手に勝負所のスクランブルにて確実に上を取り、決勝ではミヤオ相手にあえて上を選択し、パスを仕掛けてアドバンテージを奪ってみせている。ダブルガードやベリンボロの攻防だけでなく、トラックポジションでも強烈な強さを持つムスメシの二連覇の可能性は高い。

Joaoこのムスメシを倒して、悲願の世界初制覇を狙うのがジョアオ・ミヤオ(シセロ・コスタ・インターナショナル)だ。昨年の世界大会決勝では、これまでことごとく僅差でしてやられている天敵ムスメシと5度目の対決。終盤の勝負所にて執念で上の体勢を取ったものの、ここでサブミッション狙いに切り替えて失点を防いだムスメシの機転の前に敗北──自らのフィールドであるはずのモダン柔術のポイントゲームにて、またしても出し抜かれてしまった。

その後も相変わらずのハイペースで試合出場を続けているミヤオは、今年のヨーロピアン、パン大会、そしてワールドプロを全制覇。2018年、確認できる記録では17戦全勝という凄まじい戦績をもって今回の世界大会を迎える。試合開始から終了まで攻撃の手を一切緩めず動き続け、足首をどれだけ曲げられようが表情一つ変えない──見る者に狂気すら感じさせるような戦いぶりで、若くして満身創痍ではないかと囁かれることさえ少なくないミヤオ。

Hiago George天敵ムスメシを倒し世界を制した時、これまでの凄絶な戦いの全てが、報われることとなる。さらにミヤオの同門からは、多くの大会でミヤオとワンツーフィニッシュを決めているチアゴ・バホスとイアゴ・ジョルジというトーナメントの行方を左右する、2人が参戦(前者がシセロ・コスタ・インターナショナル、後者がPSLPBシセロ・コスタと所属を分けている)する。

Fariasさらに11、16年の世界王者で昨年は3位のアリ・ファリアス(アトス:16年は決勝で敗れたものの、勝者のパウロ・ミヤオの薬物使用発覚による繰り上がり優勝だった)、MMAと並行活動する上で非常に手堅い試合を見せるようになり──堅い守りと一瞬の瞬発力でポイントをゲットする彼も表彰台候補の1人といえる。

Moraes & Matovani04年と13年の大ベテランの世界王者ガブリエル・モラエス(アリアンシ)、アトスを代表する22歳の新鋭コンビ=昨年のパン大会準々決勝でムスメシを下したクレバー・ソウザ&昨年のノーギワールズ準優勝で一昨年のムンジアル茶帯では嶋田裕太を下している──今年のヨーロピアン選手権銅メダリストのパブロ・モントバーニ(アトス)ら、世界的超強豪がエントリー。これ以上ないほど、群雄割拠の様相を呈している。

Shimadaこのような強豪選手が揃う中でさえ、メダル獲得が期待できる日本人選手が嶋田裕太(ネクサセンス)だ。ここのところ国際大会では、ことごとくジョアオ・ミヤオの軍門に降っているが、その差を一戦ごとに縮めているのは明らか。特に両者による最新の対決──3月のパン大会準決勝における戦いは、まさに双方ノンストップに動き続ける大激闘に。

2度のスイープを決めてみせた嶋田は、残り15秒でスイープのアドバンテージを奪われるまでポイントでもまったく互角の勝負を展開したのだった。

パン3位入賞という実績も残し、ワールドクラスの仲間入りを果たした感のある嶋田。今回のブラケットでは、初戦がコンスタントに結果を残すワシントン・リマ(GFチーム)戦、ここをクリアしても初日の最大難関──シード選手ガブリエル・モラエスとの一戦が控えている。元世界王者声を果たしてなお、準々決勝でまたしてもミヤオと当たる可能性が高い。大会ごとに進化を続ける嶋田だけに、連続して続く厚い壁を突破し、さらなる世界的強豪と対峙する姿が見たい。

Kagiyamaさらに日本からは、鍵山士門(デラヒーバ・ジャパン)と宮地一裕(カルペディエム・ホープ)も出場する。鍵山は昨年のジャパニーズ・ナショナルで初優勝。今年の全日本では、決勝で橋本知之に敗れたものの準優勝を果たしており、今回が念願の世界初挑戦となる。初戦の相手は一昨年のヨーロピアンで3位入賞を果たしているルイス・ピント、これを突破するとレネ・ロペス。そして次には準々決勝でアリ・ファリアス戦となる可能性が高い。

Miyachi宮地は一昨年に世界大会に初出場を果たしたが、その時はイアゴ・ジョージ相手に完敗。世界の舞台でその極め力を発揮してもらいたいところだ。

宮地の一回戦の相手は、一昨年のアジア選手権でイザッキ・パイヴァを倒して注目を浴びた韓国人柔術家、チェ・ワンキ(ジョン・フランクル)。ここを突破するとミヤオが待っている。

Takashimaまた46歳の在ニューヨークの日本人柔術家、タダシ・タカシマも昨年に続き出場、初戦でアトスを代表する若手の一人、パブロ・モントバーニと戦う。サラリーマンとして日々働きつつ、世界最高峰の強豪相手に自分を試し続ける彼の生き方は、柔術家の往くべき究極の道の一つを示している。

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