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【PJJC2018】無差別級優勝はレアンドロ・ロ。ヘビー級を制し、準決勝でスーパーヘビー優勝のキーナン下す

Lo vs Cornelius【写真】ヘビー級優勝のロとスーパーヘビー級優勝のキーナン。無差別級準決勝の対戦は今大会のハイライトだ (C)IBJJF

1日(木・現地時間)から11日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。ムンジアルの前哨戦にして、世界で2番目に大きな規模の同大会、プレビューレビュー最終回は、大会最強の男を決める無差別級の模様をお届けしたい。


無差別級準決勝にて注目の一戦が実現した。大会4連覇中にて、昨年はヘビー級と無差別級を完全制覇したレアンドロ・ロと、1月のヨーロピアンを完全制覇したキーナン・コーネリアスの一戦だ。ちなみにコーネリアスは、準々決勝でライバルのティム・スプリッグスからバック、マウントとポジションを奪ったのちに締めで圧勝して好調を見せつけている。

<無差別級準決勝/10分1R>
レアンドロ・ロ(ブラジル)
Def. by 7-2
キーナン・コーネリアス(米国)

ヘビー級優勝のロと、スーパーヘビー級優勝コーネリアスの対戦。ロが跳躍するように引き込んでデラヒーバを作ると、素早く足元に潜り込んでコーネリアスを跳ね上げるが、コーネリアスも素早くステップしてバランスをキープ。その後もロはオープンやシッティングから積極的に仕掛けるが、コーネリアスも堪える。それにしてもロの動きには、昨年はあまり見せなかった躍動感がある。

やがてロが立ち上がると、今度はコーネリアスが引き込む。素早くサイドに回るロに対して、コーネリアスはロの左側のラペルを引き出して、自分の右足を絡めてロの左足の内側から回して取る──コーネリアスによると、スクイッド・ガード。

そこからコーネリアスはスピンしてインヴァーテッドから後転して立ち上がろうとするが、ロはバランスをキープする。この攻防でコーネリアスにアドバンテージが1つ加算された。その後コーネリアスは、再び内回りから後転してロのバランスを崩して上になることに成功。2-0とリードした。

しかし、片襟を取りながらシッティングを作ったロは、素早く立ち上がるとすぐにコーネリアスの片足を抱えて回して引き倒して上になり、2点を返す。コーネリアスは再びラペルのグリップを作ろうとするが、その持ち替えの瞬間にロは素早く横に回ってのパスへ。

コーネリアスも柔軟な体を利用して戻すが、ロは担いでコーネリアスの体を二つ折りにすると、そのままプレッシャーをかけながら畳み掛けるように横に。この激しい動きでコーネリアスのエビを突破して上四方で抑え込んだロが、3点追加して5-2とリードした。

コーネリアスは下から動いてうつ伏せになり、バックを取りに来たロの動きに合わせてオープンに戻す。さらにインヴァーテッドから仕掛けるコーネリアスだが、ロは腰を引いて重心を低くして許さない。さらにコーネリアスはロのラペルを引き出して股下から取ると、シッティングからのタックルを狙うが、ロは腰を引いてテイクダウンを許さず。残り時間が3分を切ったこともあり、先ほどまで超攻撃的だったロが、露骨に逃げ切り姿勢に入っている。

やがてスタンド戦になると、腰を引いて後退してテイクダウンを防いだロは、やがて飛びついてクローズドガードから、オープンへ。コーネリアスがパスを仕掛けると背中を向けて場外に出る。この攻防でロにペナルティが。

残り1分半。ロはスタンドで両腕を突っ張って腰を引いて後退。コーネリアスは奥襟や帯を掴むも、下がるロに対して技を仕掛けられないまま時間が過ぎてゆく。残り30秒、そのまま不用意に前に出るコーネリアスに対し、それまで下がっていたロがいきなりダブルレッグで飛び込み、豪快に抱え上げてテイクダウンでダメ押しの2点を奪取。そのままコーネリアスの背後に付いたロは、会心の笑顔を見せて残りの時間を過ごし、勝利したのだった。

昨年の重厚な戦い方とはうって変わって、前半から躍動感溢れる動きで攻め続けたロの完勝。特にコーネリアスの難攻不落のガードを完全にパスしてみせた動きは圧巻だった。試合後のコーネリアスのコメントによると「スクイッド・ガードからスイープできたので、よし、レアンドロはこの技術を知らないなと思ったんだ。でも2度目に使った時、レアンドロはその場で対応策を編み出してきた。僕がグリップをスイッチする瞬間に動かれ、やられしまったよんだ」とのこと。

この持ち前の柔軟な対応力に、地上最強のガードパサーと呼ばれたかつての動きが重なり、さらに爆発的なテイクダウンが加わったこの試合のロは、ここ数年でもっとも強かったかもしれない。

<無差別級決勝/10分1R>
レアンドロ・ロ(ブラジル)
Def. by 2-0
グテンバーグ・ペレイラ(ブラジル)

2年連続のパン大会完全制覇を狙うロとの決勝の舞台に上がって来たのは、昨年の茶帯スーパーヘビー級王者の新鋭、グテンバーグ・ペレイラ。ペレイラは一回戦でモハメッド・アリーを、準決勝では1月のヨーロピアンでエルベース・サントスから一本勝ちして世界を驚かせたトミー・ランガカーをたおしての決勝進出だった。

両者組み合った後、ロがクローズドガードに引き込む。ペレイラはすぐに立ち上がり、ロをリフトしながらヒザ入れに。ガードを開いたロは、ペレイラの右足を掴んで自らの左足を絡めるデラヒーバの姿勢を作ろうとするが、ペレイラはロの右足を掴んで押し下げると、さらに重心を低くして、ロの左足に座り込んで固定。この動きにペレイラのセコンドは大きな歓声を上げる。

ハーフ上の体勢から、胸を合わせて上半身を抑えようとするペレイラ。いきなり攻め込まれたロだが、ここは襟を持った右腕でブロックしながらエビを使って隙間を作り、右足をペレイラの上腕に当てる片襟片袖ガードまで体勢を戻してみせた。ロに守勢を余儀なくさせたこの序盤の攻防だけで、新鋭ペレイラが強固なバランスと凄まじいトップからの圧力の持ち主であることは明白だ。

やがてロがまたデラヒーバに入ると、ペレイラがそれを圧力で潰しにかかり、ロが距離をとって回避するシーンが繰り返される。試合がスタンドに戻ると、ペレイラは巨体に似合わぬ速さでダブルレッグ。懐に飛び込まれたロだが、倒される前に下がって場外へ。

その後もペレイラは果敢にタックルを仕掛けるが、警戒しているロは腰を引いて防いで、やがてクローズドに。ペレイラはまたしても立ち上がって割りにかかる。ガードを開いたロは、その瞬間に相手の両足を自らの両足で挟み込む得意のスイープを狙ったが、ペレイラは片足をステップバックして許さない。

その後も、グラウンドでペレイラがロのオープンガードを潰しにいってはロが距離を取り、スタンドではペレイラのタックルをロが警戒してクローズドを取るという攻防が続く。残り3分。再び得意の両足挟み込みスイープを防がれたロは、片襟片袖から強烈に引きつけてペレイラの体を浮かすと、その左足を引き出して肩にかけてみせた。

ロはさらに回転して足を絡めて50/50を作るが、ペレイラはすぐにロの両足を押し下げながら左足を抜いて解除に成功。すぐさまロの足をさばいてのパスを狙うが、ロはここも強靭な両脚と両腕を駆使して距離を取る。

残り1分半。再びクローズドガードを取ったロは、ガードを開くと足を絡めてペレイラの右足を引き出して肩にかける。瞬間的に取られた右足を曲げ、前に圧力をかけての解除を狙ったペレイラだが、ロは体勢をキープ。ペレイラが左足も前に踏み出して振りほどこうとすると、ロはその左足も手でキャッチ。ペレイラの両足を抑えた状態で、まるで大木を倒すが如く後ろに崩し、スイープに成功してみせた。

大歓声が上がるなか、ロはハーフ上で胸を合わせて押さえ込み。ペレイラはなんとかフルガードに戻し、そこから動こうとするがロのバランスは崩れず、やがて時間切れ。ヘビー級に加えて無差別も制したロが、2年連続のパン大会完全優勝を果たした。

準決勝で近年最高のキレを見せ、決勝ではスーパーヘビーの圧力を跳ね返し、技で制したロ。フィジカル面の充実も出色だったが、それ以上に圧巻なのは瞬間における対応力だ。準決勝におけるスクイッド・ガード破りにしろ、決勝でペレイラから奪ったスイープにしろ、一瞬の対応で相手の先を取ってのもの。その動きは、相手を冷静に読み切ってのものというより、研ぎ澄まされた勘を持つ野生動物の如きだった。

しかし、驚くべきはロの強さだけではない。9分間に渡ってそのロの得意技の多くを潰し、抑え込みかける場面さえ作ったペレイラのバランスと圧力の強さも特筆ものだ。スタンドでも素晴らしいスピードのタックルを披露したこのスーパーヘビー級の新星。昨年黒帯になったばかりの23歳ということを考えても、また一人世界最強候補が現れたと言えるだろう。

■PJJC2019リザルト
【無差別級】
優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
準優勝 グテンバーグ・ペレイラ(ブラジル)
3位 キーナン・コーネリアス(米国)
3位 トミー・ランガカー(ノルウェー)

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