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【PJJC2018】グリッポ優勝のフェザー級で、大塚博明は文字通りのシーソーゲームを制し1勝挙げる

Hiroaki Otsuka【写真】大塚はパンでしっかりと1勝という結果を残した(C)IBJJF

1日(木・現地時間)から11日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。ムンジアルの前哨戦にして、世界で2番目に大きな規模の同大会、プレビュー第4回は、フェザー級に出場した大塚博明の戦いを紹介したい。


<フェザー1回戦/10分1R>
大塚博明(日本)
Def. by 6-6 アドバンテージ1-0
ブライアン・マエチャ(米国)

開始早々マエチャが引き込むと、それに合わせて大塚も座りダブルガードの攻防に。やがて膠着ブレイクでスタンド再開となり、またしても同じ形でダブルガードとなり、ここで大塚が上を選択してアドバンテージを一つ先制した。

その後マエチャがスパイダーやラッソーで大塚を煽るが、大塚もベリンボロ狙い等で対抗し、上をキープする展開が続く。中盤に差し掛かって来た頃、マエチャがスパイダーから崩してスイープに成功し、2-0となる。しかし、大塚は下になりながらも足を絡めて50/50を作る。

落ち着いて次の手を狙う大塚は、やがて足が絡んだまま体をずらしてマエチャの背後に回って上を取り2点を返す。が、すぐにマエチャも上を取り返し4-2でリードする。残り1分近くとなった頃、大塚は再び体をずらして背後からマエチャのズボンを掴むと、50/50を解除しつつ背後から左足をヒザ裏に足を引っ掛けて崩し、上に。これでポイントは4-4だが、アドバンテージで大塚がリードした。

時間のないマエチャは、ラッソーから大塚の体勢を崩して上を狙うが、大塚はマエチャのズボンを掴んで引き寄せて立ち上がらせない。それでも残り30秒となったところで、マエチャはベリンボロで回転してトップ奪取──6-4と再逆転してみせた。

追い込まれた大塚だが、下になりながらも50/50を作ると、すぐに背後に回って先ほどと同じ要領のスイープで崩すと、上体を起こして背中を向けるような形で上に。残り10秒で大塚に再々逆転の2点が与えられたのだった。

一瞬両手を広げて抗議のポーズを取ったマエチャも、最後は強引に上を取りにいく。両者の足が絡んだまま、頭をマットに付けて耐える大塚の背後にマエチャがついたところでタイムアップ。解釈次第ではマエチャが上を取り返したと見えなくもないが、レフェリーはこれをポイントをみなさず試合終了となり、大塚が薄氷を踏むが如き形でモダン・シーソーゲームを制した。

国際大会常連、現在の競技柔術を熟知したマエチャを相手に、これぞ競技柔術というべきポイントゲームを展開しての大塚の勝利。3度に渡って決めてみせた50/50からのスイープや、ここぞというところでマエチャのズボンをコントロールして立たせなかったあたり、大塚は自らの技術が国際的舞台で通用することを証明した。

かくして大塚は、ミヤオ・キラーとしても名を馳せる世界的強豪、ケイシーニョことオズワウド・モイジーニョとの準々決勝に駒を進めたのだった。

<フェザー級準々決勝/10分1R>
オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)
Def. by 腕十字
大塚博明(日本)

気合十分の大塚に対して、モイジーニョは滑り込むように引き込み。合わせて座った大塚とダブルガードの攻防に。これはモイジーニョが先に引き込んだと解釈されたようで、レフェリーはブレイクをかけずに続行させる。

やがて立ち上がりかけたモイジーニョに対し、大塚は頭をマットに付けて上を譲らない。そこでモイジーニョは横回転して横三角のように足を絡めるが、大塚はこれも耐えてモイジーニョは下に。大塚も座ってダブルガードの体勢に戻る。

4分過ぎ、モイジーニョはそこから立ち上がって2点を先制。大塚は下になりながらも50/50の体勢を作ろうと足を引き寄せるが、モイジーニョは前に体重をかけてスタック。大塚の動きを封じたモイジーニョは、次の瞬間動いてバックを奪取し、足のフックを完成させて6-0とリードを広げる。

苦しい展開となった大塚だが、懸命に動き続ける。やがてモイジーニョがシングルバックを作ったところで横に回転しながら体をずらし、大塚は正対してモイジーニョのクローズドガードの中に入る。残り4分、大塚は立ち上がってガードを割ろうとするが、モイジーニョはすかさず大塚の足をフックして体勢を崩し、クローズドを作り直す。

両者によるグリップの争いが続いた後、大塚は再びガードを開こうと立ち上がるがも、ここでモイジーニョは再び大塚の足をフックして倒す。そのままマウントを取ったモイジーニョは、12-0と大量リードを築く。さらにチョークを狙ったモイジーニョはサイドに移行すると、大塚は懸命にスクランブルしてうつ伏せに。モイジーニョは無理せず下になり、大塚が2ポイントを獲得した2。

残り1分半、10点のビハインドがある大塚は、上から攻めるがモイジーニョは下から足を絡めて横回転しつつ、足を狙う。さらに50/50を作って上になったもモイジーニョは、残り時間をやり過ごすかと思いきや、50/50を解いて立ち上がると、亀になった大塚の左腕に狙いを定めて、迅速の腕十字。完全にその腕を伸ばし、終了寸前に一本を奪ってみせた。

モダン柔術の攻防から大塚の動きの一歩先を読んだバック取り、クローズドガードからの基本スイープ、そして極めと、世界トップの力をまざまざと見せつけられた大塚。当初から、「目標は一つ勝って準々決勝に進み、世界トップの力を知ること」と語っていたので、その目標は今回達成したこととなる。頂までの道の遠さを思い知らされた大塚の、ここからの進化を見守りたい。

Podiumなお大塚を倒したモイジーニョは、続く準決勝でジャンニ・グリッポにアドバンテージ差で惜敗。そのグリッポが、決勝にてシェーン・テイラーをやはりアドバンテージ差で倒して優勝した。ちなみにグリッポは準々決勝もAJアガザームに対してアドバンテージ差で勝利、3試合連続で僅差の戦いを制しての優勝だった。

今回、そのグリッポにヨーロピアンで競り勝った優勝候補筆頭のマーシオ・アンドレが欠場していたこと、グリッポとのクローズアウトも濃厚と思われていたアイザック・ドーダーラインがサミール・シャントレに初戦で敗れるプチ波乱が起きたこと等も考え合わせると、ムンジアルではフェザー級も層の厚さが驚異的であることが理解できる。

■ PJJC2018リザルト
【フェザー級】
優勝 ジャンニ・グリッポ(米国)
準優勝 シェーン・テイラー(米国)
3位 オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)
3位 ジルソン・ヌネス(ブラジル)

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