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【GRANDSLAM06】3年振り、最後のMMA(?)に臨む加藤忠治─02─「だって、戦う意味が分からない」

Chuji【写真】彼の本音、誠実さは弱さにつながる。それを本人は理解している(C)MMAPLANET

いよいよ明日29日(日)、東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるGRANDSLAM06で、能登崇と対戦するジーニアス加藤忠治インタビュー後編。

周囲を和やかに、そしてイライラさせる天才。その溢れんばかりの才能を持った男が、なぜMMAの頂点を目指さなかったのか──その真相を語るのか、語らないのか。現役最後になるかもしれない、字面でない忠治の内面に触れてほしい。

<加藤忠治インタビューPart.01はコチラから>


──相手に負ける怖さはない。では、どのような怖さがあるのですしょうか。

「多分、ホントにカチンと戦えば負けないと思います。ただ、今回のように日本でまた試合をすることになり、応援してくれる人達の前で塩漬けをするのかという葛藤と戦っています」

──自分はPXCでの加藤選手しか知らないので、そのような想いがあることが意外です。

「なんでアキレス腱を切って、こんな状態になっているのに葛藤があるんだろうって自分でも思っています。PXCで戦っていた時は、海外まで出向いて行って負ける要素が増える戦いをする必要性は全くなかったです」

──基本、人は必死に戦っているファイターの姿を見たいと思うのですが、PXCでの加藤選手は抑え込みだけしていれば余裕で勝てる感が伝わって来て……あの余裕で勝てる感の抑え込みを続けた選手は、記者人生であの時の加藤選手だけです。

Chuji Kato「クククククっ」

──何ですか、その含み笑いはッ!!

「まぁ、日本でやるのは違います。海外の試合は応援してくれる人間も身内ぐらいなんで、どんな形でも勝てば良いという気持ちでした。

ただ、日本でもっと多くの人に応援されると、15分塩漬けは見せたくないなって。最終的には、ソレをすれば勝てる。絶対はないけど、まず絶対に勝てる。ソレはできる。でも、そのために日本で試合をするのかって。う~ん、3Rですからね。嫌がらせですよ(苦笑)」

──対戦相手の能登崇選手。未確認情報ですが、北海道からUFC日本大会の頃に東京に来て練習をしていたという話も伝わってきます。

「マジですかッ!! そんな、怖い話を……。嫌だなぁ……強かったら」

──……。事前に映像をチェックするなど対策は立てていますか。サウスポーのストライカー、左ストレートに威力を感じる選手です。

「う~ん、煽りのVを見て凄く良い人だと思いました(笑)。寝技はできそうにないですけど、能登選手──大丈夫ですよ。僕も今、クソみたいなもんなので。ホント、どんな試合になるんでしょうね?」

──……。では、かつての盟友・田中路教選手と揃い踏みになる。そのコトに関しては、どのような想いでいますか。

「う~ん、そこに関してはあまり想うところはないです。ノリと勝村さんが、また一緒にいるっていうことに関しても、簡単に僕が話せることじゃない。紆余曲折あったんだろうなって。そこに言及したいとも思わないです。

まぁ、ノリは頑固です。出会った時より、頑固になっている(笑)。チームを組むということは背中を押し合うこともできるし、その反面……足の引っ張り合いにもなる。それを分かってノリはチームを大切にしているのでしょうね」

──加藤選手のオプティミズムの裏には、そこまで物事を理解しているというスマートさがある。その片鱗が感じられる言葉です。

「だって基本、勝負は一人ですよ。誰も檻の中で助けてくれる人間はいない。それを分かって、チームをやっているんですよ。でも孤独な方が強いですから、人間は」

──孤独の方が強い?

「勝負は孤独ですから。将来的には練習仲間、チームメイトと試合をすることだってあるんですよ。となると、もうその試合は生きるか死ぬかっていう気持ちで受けることになる。そして、勝負は勝たないといけない。だから、僕は同じ階級の人には練習でも負けたくない。試合になった時、練習で勝っている方が有利ですからね」

──なるほどぉ。

「って、感心してもらっても──練習してないヤツが言うなってことですけどね(笑)」

──本当に……。天才のカムバックはこの1試合限りになるのでしょうか。

「基本的にそうなると思います。だって、戦う意味が分からないですから。UFCのチャンピオンを目指すわけでないのに。僕、ずっとMMA好きですよ。練習に参加して、皆と汗をかくのも嫌いじゃない。

でも、僕の生活、実生活には一切格闘技がない。さっきも言いましたけど、去年の試合を2週間前にキャンセルした。その罪滅ぼし、清算をしたいから今回も戦うんです」

──汗を流した日々の全てを出したいなどいう気持ちはありますか。

「どうやったら、そういう気持ちになれるのかが分からないです」

──正直、以前と話していることは同じです。でも、以前は顔つきがファイターだった。それが今は……。

「そこらへんのサラリーマンですよ。ここ1年、顔がまた優しくなったと言われます」

──こういうとアレですが、加藤選手は根本は優しい。でも、試合前はファイターになっていた。

「だって、自分が強いっていう気持ちでいましたらね。クククククッ。でも、ホントにその通り。試合前はイライラしたし、負けられないから切羽詰まっていた。でも、今は自分がどうなるのか想像がつかない。

でも、きっと2日前ぐらいになると腹は括れているでしょう。代謝も落ちていると思っていたら、練習すると一気に上がりましたし」

──まだファイターのDNAが残っているぞ、と。

「いや、代謝が上がったって言っているだけです。脂肪を筋肉に変えている作業の途中なので、あと1カ月ほどあれば完璧な肉体で試合を迎えることができたでしょうね」

──ハァ……。

「分かりますよ、そう。あと1カ月あったら、今、この作業をしていないってことです。だから、もうチャッチャと試合をしてしまった方が良いんです」

──未完の大器が未完で終わる。そういうことですね。分かっていたのに、期待を捨てきれなかった……。

「僕が一番強かったのは、アマチュア修斗全日本の時です。すぐにこの世界で一番になれるっていう自信を持っていました。勘違いだったんですけどね(苦笑)」

──それでも現状でベスト尽くす、一生懸命な加藤忠治を最後に見てみたいです。

「いや、ありがとうございます。まさかの不戦勝の時にグアムまで来てもらって、今もそう言ってくれる……。でも、なぜフランク・カマチョはUFCと契約しているんでしょうか(笑)。不思議なもんです。まぁ、あのレベルじゃ勝てないですよ。

そうですね、一生懸命ですか……。どうなんですかね。一生懸命やってどうなるのかって。世界のレベルが高くなり過ぎて。俺、あのままやっていたらUFCと契約して、下の方で1つや2つは勝っていたと思います。UFCでもちょっと弱いヤツはいます。ああいうのには勝てた。でも、その成果を得るために、神経を擦り減らしてMMAで生きていこうと思えるほど、神経が図太くなかった。

今だってそうですよ。やっぱり怖いんです。色々と心配になってきますし。試合後は神経が昂ってしまって、2日間ぐらい眠れなくなっていました。PXCのあんな試合ごときで。

試合で何もされていないのに、そうなる。試合までの過程が厳しい。だから、格闘家に向いていなかったんです。勝った高揚感だけで、あの神経をすり減らす日々は減価償却できない」

──つまりは、そういうことだったのですね。

「今回だって、まだセコンドが誰かも決まっていないし。まぁ、セコンドは時間を教えてくれて、水を渡してくれれば良いんですけどね。あっ、それと少しでも早くタオルを投げてくれる人をセコンドにつけたいです。それで十分です」

──最後までらしい言葉、ありがとうございました。もう一つ、ファンに向けて一言お願いします。

「(30秒ほど沈黙の後)。久しぶりの日本での試合なので、できれば格好良く極めたいです。判定までいかないで」

■Grandslam06対戦カード

<バンタム級/5分3R>
田中路教(日本)
ホジェリオ・ボントリン(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
柏崎剛(日本)
堀友彦(日本)

<ウェルター級/5分3R>
レッツ豪太(日本)
濱岸正幸(日本)

<ブラップリング・ライト級/3分2R>
所英男(日本)
伊藤盛一郎(日本)

<ライト級/5分3R>
加藤忠治(日本)
能登崇(日本)

<女子ストロー級/5分2R>
ジェット・イズミ(日本)
KAI(日本)

<フェザー級/5分2R>
滝田J太郎(日本)
SHIN(日本)

<ストロー級/5分2R>
小川竜輔(日本)
三谷敏生(日本)

<ウェルター級/5分2R>
悠輝平(日本)
伊藤夏海(日本)

■GRAND SUVIVOR

<73キロ契約/5分2R>
モリシマン(日本)
鈴木一史(日本)

<フェザー級/5分2R>
本田壮一(日本)
山内雄輔(日本)

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