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【TUF25】史上最高契約金を賭け、MMA史上最も悲壮感のある戦い=ジェシー・テイラー×ディエゴ・リマ

Jesse Taylor【写真】ここで負けると、全ては元の木阿弥となるジェシー・テイラー (C)GONGKAKUTOGI

「金のためじゃない。借りを返すためなんだ」──シーズン・オープニングでTUF02ウィナーのジョー・スティーブンスが言い放った。借りを返す──redemptionという副題がついたTUFシーズン25のフィナーレが、7日(金・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで行われる。


コディー・ガーブラントとTJ・ディラショーがコーチ役を務めた今シーズンは、契約金25万ドルが掛かった再チャレンジ・シリーズ。Redemptionには救済という意味もあり、これまでの24シーズン、延べ400人以上のファイターのほとんどが夢破れたが、その中から再びチャンスを与えるというテーマの下、ウェルター級で生き残り合戦が繰り広げられた。

冒頭に挙げたスティーブンス同様にシーズンを制したエディ・ゴードン、優勝できなくてもUFCと契約し、その後リリースされたファイター。さらにはシーズン15ではイリミネーションマッチで敗れた後、フィーダーショーでの活躍が認められ現在もUFCに在籍しているジェイムス・クラウスらに出演機会が与えられた。

そんななか見事に決勝に勝ち残ったのはチーム・ディラショーのセカンドピック、TUF07出演のジェシー・テイラーと、同じくチーム・ディラショーに4巡目で選択されたディエゴ・リマ=シーズン19出演の2人だ。

テイラーは力強いテイクダウンとポジションコントール、そしてパウンドとサブミッションを兼ねそなえたスタイルで、シーズン07決勝進出を決めていた。しかし、TUF史上最も乱れたシリーズをリードしていた彼は前代未聞の失格劇を起こしてしまう。ズッファと同じ系列のパレスステーション・カジノで酒に酔い、リムジンのドアを蹴り破るという暴挙をしっかりとカメラに収められてしまった。

その際に「俺を誰だと思っている。UFCファイターだぞ」と見栄を切り、これがダナ・ホワイトの逆鱗に触れる。涙の謝罪も認められず、人生最大のチャンスを目前にホームを追放されたテイラー。実は直後にUFCはUFN14で彼に最初のリデンプションを与えていたが、シーズン07で共演していたCB・ダラウェーに一本負けを喫した。

あれから既に9年、ローカルショーから日本のDREAM、そしてStrikeforce、WSOF、英国のケージ・ウォリアーズ、ポーランドのKSW、豪州、アルゼンチン、ロシアで戦い続けたテイラーは、日の目を見ることなくUFC出場を追い求めてきた。

「ずっとUFCに戻りたかった。UFCをリリースされて、俺は42試合も戦ってきたんだ。まだ、自分の可能性を信じている」とラストチャンスに賭けた彼はメディ・バグダッド、敗者復活なったハイダー・ハッサンに勝利し、準決勝では本命のクラウスからギロチンで一本勝ちして決勝へ駒を進めてきた。

そのテイラーと対戦するリマはBellator世界ウェルター級王者ドゥグラス・リマの実弟でシーズン19では決勝でエディ・ゴードン(※今シーズンにも参加したが、初戦で一本負け)に敗れたもののUFCとの契約はなった。ただしティーム・ミーンズとリー・ジンリャンに連続TKO負けを喫し、1勝3敗でリリースの憂き目に。

その後はLegacy FCからTitan FCでウェルター級王座を獲得も、昨年12月にジェイソン・ジャクソンに敗れ、またもUFCへの道が遠ざかっていたリマ。ATTパワーも影響したか、文字通りラストチャンスを手にした彼は「子供たちのためでも、チームのためでもない。今回は自分のために、自己証明するために戦い──勝つ」という覚悟で挑んだ。結果、ATTチームメイト対決となったヘイダー・ハッサン戦を皮切りにギルバート・リマ、準決勝でトム・ガリッシオを倒してファイナル進出を決めた。

MMA、24年の歴史の中で最も悲壮感をもってオクタゴンに足を踏み入れる両者。勝敗を分ける鍵は、安直すぎるがリマが、如何にテイラーのテイクダウンを切ることができるか。そして、両者ともピンチの時の気の持ちよう。ここで負けると、これ以上ない地獄を見るという残酷な一戦は、人間力が問われる戦いとなる。

■ TUF25 Finale対戦カード

<ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マイケル・ジョンソン(米国)

<TUF25ウェルター級決勝/5分3R>
ディエゴ・リマ(ブラジル)
ジェイムス・クラウス(米国)

<ライト級/5分3R>
マーク・ディアキーシー(英国)
ドラッカー・クローズ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
スティーブ・ボッセ(カナダ)
ジャレッド・キャノニア(米国)

<ミドル級/5分3R>
アライアス・セオドロ(カナダ)
ブラッド・タヴァレス(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
マルセル・フォーチュナ(ブラジル)
ジョーダン・ジョンソン(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
アンジェラ・ヒル(米国)
アシュリー・ヨーダ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
エド・ハーマン(米国)
CB・ダラウェー(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ジェシカ・アイ(米国)
アスペン・ラッド(米国)

<フェザー級/5分3R>
ゲイリー・メイナード(米国)
石原夜叉坊(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
ティーシャ・トーレス(米国)
ジュリアナ・リマ(ブラジル)

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