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【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月編<その壱>オリヴェイラ×ブルックス&スクランブル戦の本質

Shinya Aoki【写真】オリヴェイラ×ブルックス戦から、スクランブルの本質を語った青木(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一戦=その壱は8日のUFC210からシャーウス・オリヴェイラ×ウィル・ブスックス戦を語らおう。


──4月のMMA、青木選手のなかでまず印象に残った試合、その一番手は?

「シャーウス・オリヴェイラ×ウィル・ブルックスですね」

──UFCの試合が入るのは、何気にこの企画で初めてのことになります。

「それは……ウィル・ブルックスは凄く完成度の高い選手なんです。ベラトール時代にはマイケル・チャンドラーに2度勝っている。世界最強──ワールドタイトルを持つ世界最強の一角だったと思います。非UFCのトップファイターで、ボクシングでいえばWBCの王者なのか、WBAの王者なのか。

それが2戦目で体重オーバーのアレックス・オリヴェイラに負けてからのシャーウス・オリヴェイラ戦でした。お互い良いファイターで、どうなるのかなって楽しみな試合だったんです。オリヴェイラは打撃が好戦的でギロチンが強く、RNCも取れる。

サブミッションと攻撃力に長けているし、スクランブル合戦になるような試合になるのかと思ったら、いきなり大内刈りで投げてグラウンドにして、背中を取った。そしてケージまで移動させて、もうその時点でクラッチを組んでいる。そして立たせて極めた。完成度が高い形にシャーウス・オリヴェイラがウィル・ブルックスをはめた試合でした。アッパレですよね」

──ブルックスはあのまま一気に持っていかれるとは思っていなかったでしょうね。

「どこかで逃げることができるという気持ちではあったと思います。ブルックスが弱いんじゃないんです。はめられてしまった。打撃でいうラッキーパンチ的なモノにやられました」

──そこまでの実力差はない。でも、イメージダウンは著しい一敗ですね、ブルックスには

「UFCという世界観では痛い負けです。でも、ムエタイのように連敗してからも、まだ盛り返すことができるのもUFCです。だから、今度どうなるのか」

──世界最高峰でスクランブルに持ち込ませなかった。それがまたオリヴェイラが強さを見せた形になりました。ハマった試合だとしても。

「スクランブルが強いヤツは、試合でスクランブルの攻防にならないんです」

──なるほど。その選手は多くの場合はしっかりとポジションを取れて制圧してしまう。だから、攻防がやたら繰り返されるスクランブル戦が日本では歓迎されているけど、そこは制圧をしていかないと世界で戦えないのではないかと。

「う~ん、それはレベルの問題ですよね。そして、見ている側とすれば高いレベルの方が面白いかというと、そうでもないかもしれない。日本で見られるスクランブルは、スクランブルの結果、離れてリスタートで良いという風に見受けられるケースは少ない。

コントロールした先にサブミッション、ノックアウトがある世界観とは大きな開きがあります」

──動きの本質を理解していなくて、動きがあるから良い試合だという風潮があるのは確かですよね。

「こないだ修斗に来日したダニー・マルチネスなんかも、最後は上をとる、レスリングに自信がありそうでしたよね。だから、扇久保(博正)も堰き止めることなく、スクランブルゲームに入っていました。

とにかくスクランブルというのは、圧倒的に能力がないと厳しい攻防なんです。あれは物量作戦。どれだけ局面を制するだけの武器を持っているのか。質の良い攻撃をたくさん持っている方が強いんですよ。

なのでモノがなくて弱い……のに、竹やりで戦う本土決戦殺法じゃない。武器がないヤツはスクランブルに持ち込んじゃダメ。それが日本の選手は本土決戦をやってしまっているケースが多い。ピンチになってしょうがないからスクランブルを米国の連中はやっているんじゃないんです。

彼らは物量作戦。大量に質の良いモノを持ってスクランブルに持ち込む。その結果がドミネイトになるんです。スクランブルの概念は一発逆転ではなくて、スーパー物量作戦によるドミネイトなんです」

<この項、続く>

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