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【UFC209】エルキンスと対戦。大虐殺の街で生まれ難民キャンプで育ったファイター、ベキッチ

Milsad Bektic【写真】キャリア12連勝& UFCで5連勝を狙うミルサッド・ベキッチ。1991年2月生まれ26歳になったばかりだ(C)KEITH MILLS

4日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC209「Woodley vs Thompson 2」。同大会のプレリミにATT所属11連勝中のファイター、ミルサッド・ベキッチが出場しダレン・エルキンスと戦う。
Text by Keith MIlls


ボスニアから政治難民としてドイツを経て、米国に移り住んだ彼はイスラム教徒だ。今、米国社会で感じられる微妙な空気を彼はどのように感じているのか。

壮絶な生い立ちを持つベキッチは、より良い明日を信じてMMAに没頭している。

──去年の10月にラッセル・ドーンを1R4分22秒RNCで倒し、1年4カ月振りの復帰戦で完勝したね。

「素晴らしい出来だったよ。ヒザのケガで長い間欠場していていたけど、自分の動きには満足できた。初回でフィニッシュできたしね。ジムで確認してきたことが、試合で生かせたよ」

──UFCで戦うようになってから、一番短い試合タイムだった。

「イエス。こういう試合をしようと心掛けていた。僕は優れたファイターだという自覚があるから、ああいう試合を多くの対戦相手に出来ると思う」

──これでデビュー以来、無傷の11連勝だ。

「2番になるために戦っているんじゃない。友達を創るためでもない。勝つためにやっている。勝ち続けるために。UFCで無敗のままチャンピオンになって、無敗のチャンピオンまま引退する初めてのファイターになるんだ。

タフな連中を片っ端から片付けてね。そういう気持ちで戦っている。ナンバーワンになった時、どんな気分になるのか。楽しみだよ。そのために毎日のトレーニングも実戦と同じような気持ちで取り組んでいる」

──前王者のコナー・マクレガーが防衛戦を行わなかったことで、フェザー級戦線は停滞していた感があるけど、ようやく動き始めているね。

「あんまり悪い方向にモノゴトは考えていないんだ。ジョゼ・アルドは素晴らしいキックボクサーで、テイクダウン・ディフェンスに優れている。今、そのチャンピオンの動向とか、タイトルショットのことを考えているわけじゃない。

どうしたら挑戦権を手にすることができるのかを考えている。そしてコナー・マクレガーが偉大な仕事を成し遂げたからこそ、フェザー級は今もスポットライトが残っていることは確かだからね。

これからは僕がオクタゴンに戻ったし、この手でフェザー級を活性化させてやるよ」

──日本のファンにミルサッドのことを知って欲しんだけど、生まれはユーゴスラビア時代のセルビアだっけ?

「いや、ボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツォ(1995年7月、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中に8000人が犠牲となった大量虐殺事件、ジェノサイドが起こった街)だよ。僕らの家族はムスリムで、イタリアからドイツに渡り5年間を凄し、1999年──9歳の時に米国にやってきた」

──格闘技を始めたのは米国に移住してきてから?

「11歳の時だよ。まぁ、言ってみれば学校では問題児だった。で、学校のカウンセラーが沖縄空手を習っていて、母親を僕を通わせるように説き伏せた(笑)。悪ガキだった友達と空手道場に通い、4年間習った。15歳からボクシングを始め、ウェイトにも取り組んで17歳でMMAの練習をするようになったんだ。

でも、僕はずっと戦争のなかで育った人間だから。メンタル的にはアスリートという感覚はない。僕はファイターだ。そして、あらゆる攻撃を遮断して、いかなる場面でも相手を倒せるようになりたい。ただし、それはオクタゴンの中だけ。外では人間としてもベストでありたいと思っている」

──ムスリムであることが、人格を形成していくうえで影響したことはあったかい?

「ここには自由がある。人種や宗教で殺し合うわけじゃない。他の宗教を信じる人間、他の人種を認め合っている。多くの人種がいて、多くの宗教が存在する。一つが正しくて、他が間違っていることなんてない。

でもね、まぁそういう風に思えるようになるには色々とあった。ただ、今の僕はベストを尽くそうと想っているだけだよ」

──今、この国は以前と違う空気が支配している。ファンの君を見る目が変わってこないだろうか。

「そういう風に感じるなら、それは君が人種差別主義者になりかかっているんだ。俺はジーザスもモハメッドも、モーゼも愛しているし、宗教はファイトに関係ない。

母はシングルマザーで、僕ら3人の子供を育てていた。そして戦争の影響でドイツ、米国と移り住んだ。祖父母や一族の多くをボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で失くしている。そして難民キャンプで成長した。僕はボスニア人だけど、人生の半分以上を米国で過ごしている米国人でもある。

今、ここで生きていることに幸せを感じている。日々、失敗もあるよ。でもより良い明日がここにはあるんだ」

──なるほど。では次の対戦相手のダレン・エルキンスに関して、どんな印象を持っているのか教えてもらえるだろうか。

「あまり彼について考えすぎないようにしている。自分のやるべきことをやる。でも、次の対戦相手だから常に倒すべき相手として頭の中に残っているよ。

UFCファイターだ。弱いはずがない。UFCは最も優秀な人材が集まっている。全ての試合が、ラストファイトという覚悟が必要だ。

だからとって、ダレン・エルキンスの試合を繰り返し見ることはない。1試合を通して見ることもなく、ハイライトをチェックしたぐらいだ。まあ、ランクが僕より上なんだから、それなりのモノは持っているだろうね。準備に怠りはない。

エルキンスとの試合は、タイトル挑戦権獲得に向けて大切なピースになるだろうね」

■UFC209対戦カード

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者] タイロン・ウッドリー(米国)
[挑戦者] スティーブン・トンプソン(米国/1位)

<UFC世界ライト級暫定王座決定戦/5分5R>
カビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア/1位)
トニー・ファーガソン(米国/2位)

<ミドル級/5分3R>
ラシャド・エヴァンス(米国/)
ダニエル・ケリー(豪州)

<ライト級/5分3R>
ランド・バンナータ(米国)
デイビッド・ティーマー(スウェーデン)

<ヘビー級/5分3R>
マーク・ハント(ニュージーランド/8位)
アリスター・オーフレイム(オランダ/3位)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ(ポーランド)
ルイス・エンリケ(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
ミルサッド・ベキッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ/13位)
ダレン・エルキンス(米国/14位)

<バンタム級/5分3R>
ユーリ・アルカンタラ(ブラジル)
ルーク・サンダース(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ダニエル・スピッツ(米国)
マーク・ゴビアー(英国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ポール・クレイグ(英国)
タイソン・ペドロ(豪州)

<バンタム級/5分3R>
アルバート・モラレス(米国)
アンドレ・スークムタズ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
シンシア・カルヴィーロ(米国)
アマンダ・クーパー(米国)

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