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【UFC205】レッスル&ボックス=王道チャンプのウッドリーに対し、空手家トンプソンの騙し合い

stephan-thompson【写真】世界戦前もキャンプを張らず、ファミリー経営の空手道場でキッズに指導するトンプソン(C)KEITH MILLS

12日(土・現地時間)にニューヨーク州ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開催されるUFC 205「Alvarez vs McGregor」。今大会はメインのUFC世界ライト級選手権試合=エディ・アルバレス×コナー・マクレガーを筆頭に、女子ストロー級選手権試合=ヨアナ・イェンジェチック×カロリーナ・コバケビッチ、世界ウェルター級選手権試合=タイロン・ウッドリー×スティーブン・トンプソンとトリプルクラウンが組まれている。


7月にロビー・ローラーを破りウェルター級の頂点に立ったウッドリー。その前の試合が2015年1月のケルヴィン・ガステラムとのキャッチウェイト戦だったことを考えると、この年10月のジョニー・ヘンドリックス戦がヘンドリックスの減量失敗によってキャンセルされたこともあり、持久作戦で挑戦権を手にしたといっても過言でない。

この間、トンプソンはジェイク・エレンバーガー、ジョニー・ヘンドリックス、そしてローリー・マクドナルドを下しており、それ以前を合わせると現在7連勝中だ。ジェントルマンキックと呼ばれる、ローキック&首相撲からのヒザ蹴り禁止のアメリカン・キックボクシングでプロ&アマ4つの世界王座を獲得しているトンプソンは、幼少期よりカラテ一家に育ち、ボクシング&フォークスタイル・レスリングという北米MMAの王道路線を歩んできた王者ウッドリーとは、余りに対照的なスタイルの持ち主だ。

腕をだらりと下げ、歩幅の広いスタンスで腰を可能な限り落としたかと思えば、腰高になり相手との距離を十分に取り、左右の構えを頻繁に変える。そして、ステップはジャンプするように軽やかで、サイドキックや後ろ回し蹴りを多用するトンプソン。

この手のファイターはテイクダウンに弱いというのが定説だったが、トンプソンは抜群の距離とアングルを保つことで、レスラーを相手にも近い距離で組ませるシーンを殆ど見せることがなくなってきている。

左右の両方の構えから、どのようなタイミングでどんな打撃が飛んでくるか分からず、ましてや最高の精度を持ってサイドキックや回転系の蹴りが放たれるのだから、対戦相手は混乱し集中力を乱していく。

そんなトンプソンに対し、左で組みのフェイクを見せつつ右フック一発でローラーを下したウッドリーだが、あのジリジリと圧力を掛けるという戦い方では、前後左右自在に動くトンプソンを捉えることは難しい。かといって、強引に飛び込めばトンプソンのカウンターの餌食となる。

ウッドリーに求められるのは、DJ張りのコンビネーション。つまりMMAで大勢を占めるパンチ→テイクダウンという攻撃手段だけでなく、組みにいって倒せなくてもパンチを打って離れるという流れを織り交ぜることで、トンプソンもこれまで経験したことがない試合の流れを経験し、距離やタイミングを失するかもしれない。

何よりウッドリーが思い切りテイクダウンを狙えば、トンプソンは防御姿勢に入るしかない。つまりワキを差す準備をして、正面を向いた形で腰が低くなる。つまりこの姿勢で気を付けるべき蹴りは前蹴りぐらいになり、一気に近づいて超接近距離を構築することができる。結果、組んで削ることも可能なうえ、距離が要のトンプソンの良さを遮断できることになる。

この距離で強烈なフックを振るい、またダブルやシングルと揺さぶれば、トンプソンもまた混乱をきたすに違いない。MMAファイターが慣れていない距離と蹴りでペースを握るトンプソンに対して、現代MMAの主武器を駆使しつつ、その順序を入れかえることでトンプソンの足を殺すことができるウッドリー。いっていればこの一戦、レスラーとカラテ家の騙し合い、いや化かし合いというべき高度な神経戦が見られることとなる。

■ UFC205対戦カード

<UFC世界ライト級選手権試合/5分5R>
[王者] エディ・アルバレス(米国)
[挑戦者] コナー・マクレガー(アイルランド/※フェザー級王者)

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者] タイロン・ウッドリー(米国)
[挑戦者] スティーブン・トンプソン(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者] ヨアナ・イェンジェチック(ポーランド)
[挑戦者] カロリーナ・コバケビッチ(ポーランド/2位)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ワイドマン(米国/2位)
ヨエル・ロメロ(キューバ/4位)

<ウェルター級/5分3R>
ドナルド・セラーニ(米国/6位)
ケルヴィン・ガステラム(米国/5位)

<女子バンタム級/5分3R>
ミーシャ・テイト(米国/1位)
ラケル・ペニントン(米国/8位)

<フェザー級/5分3R>
フランク・エドガー(米国/2位)
ジェレミー・スティーブンス(米国/7位)

<ライト級/5分3R>
カビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア/1位)
マイケル・ジョンソン(米国/6位)

<ミドル級/5分3R>
ラシャド・エヴァンス(米国/※ライトヘビー級8位)
ティム・ケネディ(米国/12位)

<ウェルター級/5分3R>
ベラ・マハメッド(米国)
ヴィセント・ルケ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
チアゴ・アウベス(ブラジル)
ジム・ミラー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ティム・ボッシュ(米国)
ハファエル・ナタウ(ブラジル)

<女子バンタム級/5分3R>
リズ・カモーシェ(米国/9位)
ケイトリン・チューケイギアン(米国/14位)

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