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【WJJC2016】ブシェシャが無差別級も制し、世界最強柔術家に返り咲く!!

Open【写真】ヒザのケガから復帰。4度眼の2階級制覇を成し遂げたブシェシャ。MMA転向という話もあったが……果たして(C)MMAPLANET

2日(木・現地時間)から5日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。レビュー最終回は本年度の地上最強柔術家決定戦=無差別級の模様をレポートしたい。

昨年のこの大会で負傷するまで地上最強の名を欲しいままとしていたブシェシャことマーカス・アルメイダと、昨年ブシェシャの負傷を受け階級別と無差別で完全優勝、今年のパン大会の無差別級も制覇(無差別に集中するため階級別は出場せず)したべウナウド・ファリア。この二人の一騎打ちが待望されていた今年の世界最強の競技柔術家決定戦=世界選手権黒帯無差別級だが、準決勝で波乱が待ち受けていた。

Santos<無差別級準決勝/10分1R>
アーバース・サントス(ブラジル)
Def. by 腕十字
ベウナウド・ファリア(ブラジル)

ハーフガードスイープとオーバーアンダーパスの必殺の連携で、ここ1年無敵を誇っているベウナウド・ファリア。この無差別級も順調に勝ち上がり準決勝に進出。ここで今年のヨーロピアン大会でフィリッピ・ペナを腕十字で負傷に追い込み、アブダビプロではペナとガルバォンの強豪二人に完勝する等、急成長株にしても最も危険な若手と目されていたアーバース・サントスと

気合い十分の両者。サントスは試合開始早々、前に出ながらの足払いでファリアのバランスを崩す。膝を付かされたファリアはそのままスライディングするように得意のハーフガードを狙うが、サントスはバービーから躍動感溢れる動きで左右に足を移動させ、なかなか許さない。そのままマウントを狙ったサントスだが、そこでなんとかファリアがハーフに入ることに成功した。

すぐにサントスのラペルを引き出し、サントスの右足から回して掴んだファリアは、そのまま起き上がってのテイクダウンを狙う。しかし強靭な足腰を持つサントスは逆にファリアを投げ捨てる。腹這いになりながらもサントスの右足にしがみつくファリア。

Santos vs Fariaここでサントスはその左脇をすくって両手でキムラグリップを作ると、一気にファリアの左腕を背中側に引き離す。さらに腕十字に入ると、左腕が伸びるまでもなくファリアが一瞬でタップ! 歓喜し咆哮するサントスに対して、左側の胸から肩辺りを抑えるファリア。激しい極めを仕掛けられ筋肉を痛めたようだ。 

去年から無敵を誇っていたファリアが、新鋭サントスに1分足らずで衝撃の一本負け。この試合で負傷したファリアは、翌日の階級別部門の欠場を余儀なくされることとなってしまった。この1年間どの柔術家も防ぐことができなかったファリアのハーフガード戦法を、階級下でありながら圧倒的なフィジカルで完封したサントスは、さらに爆発的な極めをもって、最強柔術家の肉体とともに誰もが待ち望んでいたファリア×ブシェシャの最強決定戦の実現まで力で破壊してみせたこととなる。

恐るべき新世代の登場を告げる、この大会のハイライトというべき試合となった。

なおもう一方のブロックでは、ブシェシャことアルメイダがブランクを全く感じさせない実力を発揮。準々決勝でフィリッピ・ペナの難攻不落のガードを何度もパスした挙げ句、最後は腕十字葬。恐るべき力を見せつけた。そして準決勝は勝ちあがったレアンドロ・ロが棄権したため、戦わずして決勝進出。今年の地上最強決定戦は、恐るべき破壊力を見せつけたサントスと、復活を遂げたブシェシャの間で争われることとなった。


<無差別級決勝/10分1R>
マーカス・アルメイダ(ブラジル)
Def. by 6-4
アーバース・サントス(ブラジル)

Buchecha vs Santos試合開始後、組んだ状態からブシェシャが膝を付いてテイクダウンへ。シングルからダブル、シングルと変化しながら押し込むが、サントスが腰の強さを発揮。するとブシェシャはサントスの斜め後ろに付いてボディロックを取ると、自らダイブするように豪快なテイクダウンに成功してみせる。 

それでも立ち上がろうとするサントスの背後にしっかり付いて行くブシェシャだが、ここでサントスは自ら前転するように上に。そのままヒザ十字を仕掛ける要領でブシェシャの左足を両手で取りに行き、クラッチを組んだ。

対するブシェシャは背後から襷掛けグリップを作り、さらに抱えられている左足と右足を四の字で組んで防御を固める。仰向けで膝十字を狙うサントスと、その横からタスキがけを作ってバックを狙うブシェシャという状況で、嵐のようなスクランブルの攻防が落ち着いた。これでポイントは2-0とブシェシャがリード。

サントスはさらに体をずらしてブシェシャのタスキがけから抜け、ブシェシャの左足を両足で挟み込んでヒザ十字を狙う体勢を作るが、ブシェシャは両足をしっかり組むことで左足を伸ばさせない。ブシェシャとしては、無理に動けばヒザ十字を極められる危険があり、サントスとしては、強引に極めにいって防がれたら上を取られてしまいかねない状況に。

お互いがお互いの強さを分かっているだけに動くに動けない、例えるなら互いに刃物の切先を突きつけ合ったような状態で膠着。そのままの状態で時間が過ぎてゆき、両者は警告を受ける。続いてペナルティのアドバンテージ、さらにペナルティの2点までが与えられ、残り3分半、このままもう一つペナルティを受けたら両者失格=優勝者なしという状況になるに至った。

ここで最初に動き始めたのがブシェシャ。左足の防御が緩くなるのを承知で、右手をポストして腰を上げて座る。するとサントスも体をずらしてブシェシャの左足を伸ばしにかかる準備に入ったため、ブシェシャは再び体を斜めにして両足をクロスして左足を守り、再び膠着に。

残り1分を切ると、このままではポイント4-2 で負けてしまうサントスは、膝十字狙いをついに変更。腰をズラして50/50を作って上に。同点に追いついてみせた。ここでブシェシャが下から横回転して足首固め狙いに。それを防ごうとサントスが足を取られながらもブシェシャに背後から覆い被さると、ブシェシャの巨体が前転、見事に体勢を入れ替えて上になってみせた。

残り20秒で得点が6-4となり、場内からは大歓声が巻き起こるなか、リバースハーフの上にいるブシェシャは、下からなんとか動こうとするサントスの襟を片手で、もう片手で膝を押さえつけて固定。そのまま時間切れとなり、緊張感溢れる神経戦を制したブシェシャが見事、今年度世界最強競技柔術家の座に返り咲いたのだった。

ヒザの大怪我そして手術を経た一年振りの復帰戦で、以前とまったく変わらぬ豪快にしてダイナミックな動きを見せたブシェシャ。そのメンタルの強さ、いざというところで爆発力を発揮できる勝負強さはまさに我々の知る世界最強のブシェシャそのものであった。

そして恐るべき極めの強さで最強の一角=ファリアを破壊し、ブシェシャにも肉迫してみせたサントス。以前から君臨する頂点の壁があまりに高い柔術界にあって、フェザー級のマーシオ・アンドレ、ミドル級のガブリエル・アルジェスと並び、新世代の台頭を告げる活躍ぶりだった。来年この男が世界最強の座に就く可能性は、間違いなく高い。

■リザルト
【オープンクラス】
優勝 マーカス・アルメイダ(ブラジル)
準優勝 アーバース・サントス(ブラジル)
3位 レアンドロ・ロ(ブラジル)
3位 ベウナウド・ファリア(ブラジル)

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