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【ADWP】重量級2階級、-94キロ級=アーバース・サントス&+94キロ級はエヴァンゲリスタが優勝

4月19日(現地時間・火)から23日(同・土)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのZAYED スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2016が開催された。

大会レビューの第4回目となる今回は、黒帯アダルト男子重量2階級の模様を報告したい。

<94キロ以下級準決勝戦/6分1R>
フィリッピ・ペナ(ブラジル)
Def. by 4-0
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)

優勝候補の両者が順当に勝ち上がり、2年前の世界柔術ヘビー級決勝の再戦が実現した。当時ガルバォンに競り勝って世界を驚かせたペナは、その後禁止薬物使用が発覚して優勝取り消しの憂き目を見ているが、昨年復活。以前にも増した強さを見せつけている。

試合開始後、すぐに引き込むかと思われたペナだが、スタンドの組手争いに応じてゆく。そして左手でガルバォンの襟をクロスで持ってプレッシャーをかけると、体を開きながらその襟を引いてのカラードラッグ。完全に引っかかったガルバォンの体は一瞬マットにうつ伏せに。そのまま背後に付きかけたペナだが、ガルバォンもそれは許さず。結局ペナが上を取り、見事に2点先制してみせた。

下になったガルバォンは、強烈にペナの袖を引きつけるとデラヒーバガードに。さらにスパイダーガードからのスイープでペナを崩し、それでもペナが持ち直すと今度はペナの体を前に浮かせてから右足を持ってシットアップ。そのまま立ち上がってシングルレッグに移行するが、それでもペナは長い脚でバランスを取って倒れず。結局2人は場外に出てアドバンテージ止まりとなった。

再開後に引き込んでオープンガードを取ったペナに対し、ガルバォンはその足を捌いてのパス狙い。が、世界屈指のガードの使い手であるペナの足は超えられない。そのうちペナは左足を内側にこじ入れ、ガルバオンの右足を引き出す得意の形を作ることに成功。必死で足を抜こうとするガルバォンを逃がさずにシングルレッグに移行する。しかし、ここで片足でバランスを取ったガルバオンは隅返し。見事にペナを投げ切ると、スクランブルしてうつ伏せになったペナの上に覆い被さり、横三角でロックする。苦しそうな顔を見せるペナだが、動きながらガルバォンの脚を手で掴んでロックを緩めて脱出。ガルバォンの攻撃はアドバンテージ止まりとなった。

残り18秒。後のないガルバォンはタックルを狙うが、ペナは距離を取る。それでも強引にガルバォンが組み付くと、ペナは逆に押し倒してテイクダウンを奪取。駄目押しの2点を加えて快勝し、対ガルバォン戦2連勝を飾った。

前日の無差別級においてアーバース・サントスのパワフルなトップゲームに敗れたガルバォンは、こうして階級別ではペナのカラードラッグで失点。いずれも若い力に屈した形となった。しかし、この試合で見せた下からの流れるようなスイープの波状攻撃や、隅返しから横三角の連携は実に見事なものだった。敗れてなお技の円熟味と健在ぶりを感じさせた闘将の、今後の巻き返しに期待したいところだ。

<94キロ以下級決勝戦/6分1R>
アーバース・サントス(ブラジル)
Def. by 7-2
フィリッピ・ペナ(ブラジル)

ガルバォンを下したペナを待っていたのは、前日の無差別でやはりガルバォンを倒している新鋭のアーバース・サントス(グイゴ柔術)。キーナン・コーネリアスが欠場したこともあり、圧倒的な強さで勝ち上がって来た。

実はこの二人の対決には因縁がある。今年のヨーロピアンで対戦した際に、サントスは腕十字でペナの腕を完全に伸ばしてみせた。しかしタップを拒否して脱出に成功したペナは猛反撃を開始し、チョークで逆転勝利を得た。しかしその代償は大きく、腕を負傷したペナはその後4ヶ月もの間欠場に追い込まれたのだった。一本を奪われたサントス、腕を壊されたペナ、見方によってはどちらにとってもリベンジ戦と言える今回のリマッチだ。

試合開始後、すぐに引き込んでデラヒーバガードを作るペナ。立ち上がって対処するサントスは、絡んで来るペナの脚を押し下げると、一瞬でペナの両足を正面から超え、まっすぐおおい被さるようにマウント奪取。懸命に暴れるペナの体を強烈な脚力で挟みつつ、胸を合わせてペナの頭と腕を両腕でがっちり抱えて体勢を固定。なんとパスガード&マウントで一挙に7点を先取してみせた。

なんとか動こうとするペナに対し、バックからの4の字フックに移行するサントス。ペナはさらに体をズラしてサントスに正対して上になろうとするが、サントスはそれを許さず自分が上に。その時にペナもなんとか足を効かせて、シングルレッグX(足絡み)の形をつくることに成功した。

サントスの左足を抱えたペナは、そのまま左足を持って立ち上がってのスイープ狙い。しかしサントスも右足一本で立ち上がる。ペナはなんとか倒そうと揺さぶるが、強靭な足腰を持つサントスは倒れず、場外へ。試合はスタンドから再開となった。

大量リードをされているペナは、引き込んでの外回りのスイープや、ディープハーフガードからの仕掛けを見せるが、サントスは素早くその動きについて行き、また片足を取られても見事にバランスを取って倒れない。残り2分となって追い込まれたペナは、今度は下から回転しての膝十字を狙うが、これもサントスはポイントをずらして防御。ここでペナが上になって2点を獲得するも、サントスはすかさず下から50/50を作ってみせた。

なんとかこれを解除したいペナだが、サントスは下からペナの脚を抱えてアキレス腱固めの形を作るなどしてそれを許さない。残り時間20秒になったところで、ペナはアンクルで勝負に出るが、サントスは涼しい顔で手を振って効いていないとアピール。さらに極めに行くペナに対し、サントスは回転しながら舌を出して笑って余裕をアピールし、時間切れ。黒帯として初のビッグタイトルを獲得したサントスは、最後に悪童の本領を発揮して場内からのブーイングを浴びたのだった。

世界最高峰のペナのガードを一瞬で突破した爆発力、そしてその後のペナのスイープを涼しい顔で対処するおそるべきバランス。アーバース・サントスという名の新たな怪物が、世界の舞台に現れた。

<94キロ以上級決勝戦/6分1R>
ヒカルド・エヴァンゲリスタ(ブラジル)
Def. by 6-0
ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)

最注目のブシェシャことマーカス・アルメイダが寸前で欠場を決め、その対抗馬のアレクサンダー・トランスも途中棄権してしまった最重量級。決勝に駒を進めたのは、準々決勝でサイボーグことホベルト・アブレウを、準決勝でルシオ・ロドリゲスをそれぞれ僅差で下したエヴァンゲリスタ(コマンドグループBJJ)と、イゴール・シウバ、アンドレ・カンポスらを倒して勝ち上がったヴィクトー・ホノリオ(GFチーム)だった。

引き込んでクローズドガードを作ったエヴァンゲリスタは、やがてオープンガードに移行。ここで巨漢のホノリオが側転パスを狙い、不発に終わったものの場内を沸かせた。その後再びガードを閉じたエヴァンゲリスタがクロスチョーク狙いでアドバンをゲット。その後もエヴァンゲリスタは長い脚を使ってさまざまなスイープを狙うが、ホノリオは体を低くして防ぐ。

残り1分を切った頃、クローズドガードからホノリオの右手首を自らの左手で掴んだエヴァンゲリスタは、それを素早く引きながら長い脚を用いてホノリオを左に崩してスイープ! そのままマウントを奪い6点を獲得した。終了寸前にホノリオはマウントを返してみせるものの、その後反撃には至らずに時間切れ。一瞬の妙技でホノリオの巨体を見事に舞わせたエヴァンゲリスタが優勝を決めた。

昨年の世界柔術にて、当時の世界最強の柔術家マーカス・アルメイダを負傷に追い込んで勝利したエヴァンゲリスタ。当時この勝利はフロックと見る向きも多かったが、現在のこの男は、真に世界最強を争う実力を付けてきていると見て良さそうだ。

■アブダビ・ワールドプロ柔術黒帯男子アダルト リザルト

【94キロ以下級】
優勝アーバース・サントス(ブラジル)
準優勝フィリッピ・ペナ(ブラジル)
3位ファイサル・アルキトビ(UAE)

【94キロ以上級】
優勝ヒカルド・エヴァンゲリスタ(ブラジル)
準優勝ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)
3位アンドレ・カンポス(ブラジル)

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