この星の格闘技を追いかける

【on this day in】3月04日──2014年

04 03 14【写真】格闘技を続けていくことで得ることができるような、明確なサクセスストーリーは存在しない。でも、汗を流す(C)MMAPLANET

Tiger Muay Thai Gym
@香港クーロン、タイガー・ムエタイ・ジム
「香港島の中環(セントラル)付近には、それはそれはファンシーなMMAや柔術、そしてキックを教えるジムがいくつか存在する。商売相手はズバリ、香港在住の駐在員や富裕層。香港人でも英国系など欧州の血がハイブリッドされた人たちで、北京語を話す人や労働者階級ではないことは確かだ。一方、九龍半島サイドでも商業施設が建ち並ぶ尖沙咀(チムシャツォイ)や佐敦(ジョーダン)も、格闘技関連のジムでは大きな看板などは見られないが、それでも比較的生活に余裕のある人達が道場に足を運んでいるように感じられた。それがMTRで10分も北上した深水埗(サムスイボー)の辺りになると、日が沈むと工場ビル地域は薄暗い街灯が鈍く光るのみ。観光客も多い前者2つの地区とも、新界のような中間層が住む地域とも違い、明らかに空気はよろしくない。そう、まるで製氷工場で作られた氷のなかに、白い粉が隠されている(あくまでも例え話です)ような工業ビルのなかに、タイガー・ムエタイ・ジムはあった。香港ムエタイ協会チェアマンのエルディ・チュンこと、陳文義さんは見るからに旧MAキック臭がする人物。なんで、声が潰れているの?──とは決して聞くことはできないけど、広東語と英語の中間のような発音の英語で、懸命に香港ムエタイ苦難の歴史を語ってくれた。なんだか、凄く懐かしい感じのするキック系のジム。スポーツに縁のない香港という街で、格闘技がメジャーになることはないような気がする。そうでなくても、格闘技がメジャーにはなるには法的にシロで、優秀かつ阿漕なことができる人間がいないと難しい。でも、そんな人々に蹂躙される前の格闘技界が存在する街は、無鉄砲なばかりに強くなることへの欲望が、むき出しだった頃のどこかの国の格闘技界を思い出させてくれた」

on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。

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