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【PXC34】22歳の決断。田中路教「若いうちからケージ、ヒジ有りで」

Michinori Tanaka

【写真】田中路教、愛称・半ケツ王子。MMAPLANET的にはギリギリの半ケツを披露してもらった。男前なのに…… (C)MMAPLANET

17日(土・現地時間)、フィリピンはメトロ・マニラのスマート・アラネタ・コロシアムで開催されるPacific Xtreme Combatに出場し、ラッセル・ドゥワンと対戦する田中路教。

プロMMAキャリア6戦目で、海外のケージ大会に挑む彼は、日本の軽量級トップに揉まれながらも、組み技では如何なくその強さを発揮している。高齢化が進む日本のMMA界で、10月に22歳になったばかりの田中は、かつてないキャリアアップの方法を模索、実現しようとしている。
(取材11月5日@リバーサルジム・グランドスラム横浜)

――11月17日、フィリピンで戦う田中選手ですが、体調の方はいかがですか。

「今が追い込みのピークで体調的には疲れは溜まっていますが、動けるようにはなっていっています」

――そういう言葉と対照的に、スパーの動きは十分過ぎるほどキレを感じましたが。

「やっぱり集中できているので……、ただ足とかがついてこないということもありました」

――アマ修斗全日本王者から修斗新人王トーナメント優勝、そしてプロ6戦目で、海外で行われているUFCルールを採用したケージファイトに挑む。かつてないキャリアの積み方になっていると思います。

「なかなか修斗の試合に出る機会が回ってこなくて、次に機会があるとしても対戦相手は、3月と同様に韓国人ファイターになりそうだと聞いていました。

今が一番、試合が必要な時だと思うし、試合に出たい。でも、その機会がなかなかなくて、また韓国人選手が相手だとクラスAに昇格する試合にならない。ステップアップができない試合になってしまいます。そんな時にPXCからオファーがあったと聞いて、その日のうちに『出ます』と返事しました」

――勝ち続けていて、試合の機会がないのは精神的にも厳しいですね。

「それに3月の試合の前から、日本人選手と戦いたいと思っていたのですが、あまり受けてもらえなかったようで……。佐々木憂流迦選手とか、本当に戦いたかったんですけど、それも難しそうでした。

ただ、国内で他のプロモーションの試合に出たいという気持ちはなかったです。修斗で戦っていきたかったので、その機会がなかなか巡ってこないなら、若いうちからパッと海外に出ていこうかと思いました」

――他競技の実績を持ってMMA転向を果たしたのではなく、アマからやってきてキャリア5連勝、プロ活動2年で海外に挑戦する。日本国内では、ほとんど例を見ないチャレンジです。

「もちろん不安はあります。ヒジの練習やケージを想定した練習はしていなかったので。ただ、海外の選手たちは最初からヒジ有りでやっていて、ローカル大会でも金網で戦っている状態じゃないですか?

日本で経験を積んで何年後かに海外へ行く時に、初めて金網やエルボーを練習に取り入れても、差は広がっているんじゃないかと思いました。それならば早いうちにヒジ有りの練習をして、ケージで試合をしたいと思うようになったんです」

Omigawa & Tanaka――今日の練習を見ていても小見川選手やマモル選手、それに普段は水垣選手など、海外のケージ&ヒジを想定している選手とトレーニングを続けています。その影響は?

【写真】小見川らと激しいスパーリングを繰り返す田中(C)MMAPLANET

「ありますね。海外思考の人が多くて、壁際の攻防がとても巧くて。マモさんのようにヒジの技術を教えてくれる人がすぐ隣にいる。マモさんは日本のMMAのなかで、一番ヒジの使い方が巧い人だと思います」

――指導は指示代名詞と擬態語が多く、長嶋茂雄さんばりですが(笑)。

「そこは自分は何とも……、いや同意はできないということで(笑)。でも、本当に良い影響を与えてくれる選手が周囲にして、金原(正徳)さんとか他の人と違う技術を持っていますし、凄く勉強になります。細かい部分も凄いと思います」

――組み技でいえば、水垣選手を圧倒しているシーンを何度となく目撃しています。UFCはファイターもこんなものだと(笑)。

「いえ、そんなことないです。八景ジムでは打撃でボコられていますから……」

――やはり得意な展開は詰めて倒し、そこから寝技ですか。

「テイクダウンには自信があります。倒してから、立たせずに削って一本を取りにいきたいです」

――練習はグランドスラム中心に行っているのでしょうか。

「もちろんグランドスラムがベースにありますが、出稽古もやっています。シューティングジム横浜、シューティングジム八景、ロータス世田谷にも行かせてもらっています。青木さんや北岡さんは、さすが日本のトップでボコられるのが練習になっています」

――ロータスと八景とは、行動範囲が異様に広いですね。普段は車移動で?

「いえ、電車です。八景は意外と近いんですけど、ロータスは遠いですね。第3京浜だったら凄く早く行けるのは知っているのですが……」

――それだけ出稽古を行なうことができるということは、今は格闘技一本の生活をしているのですか。

「いえ、仕事はしています。ただ、自分の格闘技活動に理解を示してくれる職場で、試合前は休ませてもらっているんです」

――対戦相手のラッセル・ドゥワンは、9月1日のPXCでは修斗でクラスA、そして世界ランカーの山内慎人選手を破っています。

「打撃のタイミング、テイクダウンに入ってからのフィジカルの強さ、ガイジンですね(笑)。先にテイクダウンを取りたいという気持ちはありますが、映像を見たときに『このテイクダウンは切れない』と覚悟しました。あれは切れないですね。

だから、倒されてからを想定しています。自分はそこからの切り替えしも得意な部分ではあるので。極めという部分では、自信もあります」

――フィリピンで試合するという部分で、最終的な調整はどのように考えていますか。

「いやぁ、何も考えていないです(笑)。ガッツリと休んでしまっても良いかと思っています」

現地でのやりとりは、ガイ・デルモさんに任せて――とセコンドで一緒に行く勝村(周一朗)さんも言っていますし(笑)。減量もこれからなので」

勝村(周一朗)「休んでください。減量も5日前とかに現地に入るので、向こうに行ってから考える感じですかね」

「体重はスンナリと落ちるので心配はしていないです。ただ、水は怖いですね。海外へ行くこと自体が初めてなので、分からないことばかりだし、なるようになるかなって(笑)」

――もちろん、次の試合に勝つことが先決ですが、この時点でPXC出場を選択し、この後のキャリアはどのように積み上げていこうと思っていますか。

「取り敢えずはPXCでベルトを取りたいと思っています。PXCはUFCに気持ち良く送り出してくれるプロモーションだと聞いているのですが、それ以降のことよりも、まずはPXCでチャンピオンになることを第一の目標として、そこを目指します。とにかくガッツリと金網、ヒジ打ちでやっていきたいです」

――このインタビューを聞く限り、勝村選手のブログや修斗のリングでも披露した半ケツ王子振りは、影を潜めているような感じだったのですが。

勝村「いや、いつでも出しますよ、コイツは。今すぐにでも(笑)」

――(笑)。とにかく最後の調整も順調にいき、フィリピンで思い切り暴れてくることを期待しています。

「ありがとうございます。頑張ってきます」

■PXC34対戦カード

<PXCフライ級選手権試合/5分3R>
[王者]アレ・カリ(フィリピン)
[挑戦者]アーウィン・タグル(フィリピン)

<フェザー級/5分3R>
ハリス・サルミエント(米国/ハワイ)
マーク・ストライゼル(フィリピン)

<フライ級/5分3R>
エウゲニ・トケーロ(フィリピン)
ジェローム・ワナワン(フィリピン)

<フェザー級/5分3R>
ダスティン・キムラ(米国/ハワイ)
ガイ・デルモ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ラッセル・ドゥワン(米国/ハワイ)
田中路教(日本)

<ライト級/5分3R>
イサイア・オーティズ(フィリピン)
トリスタン・アーナル(米国)

<ライト級/5分3R>
セバスチャン・カデスタン(スウェーデン)
パトリック・マニカド(フィリピン)

<ライト級/5分3R>
アドリアン・ヒラナ(フィリピン)
タイロン・ジョーンズ(米国/グアム)

<バンタム級/5分3R>
ダリオ・バナロJr(フィリピン)
エルネスト・モンティーリャ(フィリピン)

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