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【Interview】GLORY02を現地で見て。バンゲリングベイ新田会長(01)

Akeomi Nitta

【写真】若き日のレミー・ボンヤスキーと練習していたことがあったというマル秘エピソードも明かされた新田明臣会長。新田軍団と呼ばれた応援を、常に沸かせた現役時代が懐かしい (C) WORLDKICKs

今月6日(土・現地時間)にベルギーのブリュッセル、フォーストナショナル・アリーナで行われたGLORY02。日本から出場したコウイチ・ペタスのセコンドとして大会に足を運んだバンゲリングベイの新田明臣会長。現役時代はヨーロッパの強豪と鎬を削り、K-1MAXでも活躍した新田にベルギー大会の印象、注目選手を技術的に解説してもらった。

『世界のトップキックボクサーの90パーセントと契約した』と豪語するGlory Sports Internationalと日本大会を共催するG-Entertainmentの提供による、GLORY Fighterインタビュー=新田明臣編(前編)。

新田氏が見た旧友レミー・ボンヤスキーの強さと、今後の可能性。そしてコウイチ・ペタスの戦い振りは。

――コウイチ・ペタス選手のセコンドとして帯同していた新田代表に、今大会の注目カードを技術的に解説していただきたいと思います。まず新田会長がセコンドについたコウイチ・ペタス選手はマーク・ミラーに2RでKO勝利という結果でした。新田会長はあの試合をどう評価されていますか。

「あまり情報がない相手だったのですが、ラフな選手だということで、そこだけは警戒して戦わせました。正直、レベルが高い相手ではなかったので、いいKO勝利だったかなと思います。落ち着いて集中して戦えましたし、課題も見えたので次に向けて、その課題を克服させていきたいと思います」

Kouichi【写真】ミラーに圧勝したコウイチ・ペタス。12月2日の出陣は(C)GLORY

――試合後にコウイチ選手もアピールしていましたが、今回の勝利で幕張大会への出場の可能性も出てきたと思います。

「本人も分かっていることですが、いつオファーが来てもいいように準備して調整しておこうと思います」

――では、ここからはベルギー大会からピックアップした試合を新田会長に見てもらった上で、その試合について話を聞いていきたいと思います。まずはメインイベントのレミー・ボンヤスキーとアンダーソン“ブラドック”シウバからお願いします。

「僕が15~16年前に初めてオランダ修行に行った時、初めて練習で倒された相手がレミーなんですよ」

――それは意外なエピソードですね!

「当時のレミーは80キロくらいしかなくて線も細かったんです。本人は『将来、K-1に出て活躍するんだ!』と言っていたんですが、その時は心の中で『いやあ…無理だろう』と思っていました(笑)。そしたら本当に体重を増やしてK-1のチャンピオンになったんで、すごいですよね」

――新田会長はボンヤスキーにどんな印象を持っていますか。

「やっぱり跳躍力と瞬発力がすごいと思います。あとは試合を見ても体が大きいですよね」

――ファイトスタイル的にはどういった印象でしょうか。

「オールマイティに何でも出来るけど、根性系の選手ではないですよね。才能がすごい分、試合で心がくじけちゃうところがあると思います」

――目につく部分で他の選手と違うところは左ミドルなど蹴りを多用するところです。

Bonjasky【写真】新田会長によると、大きくなったボンヤスキーだがヘビー級では例外的に蹴りを多用できるとのこと(C)GLORY

「改めて映像を見ても、よく蹴っているなと思いますよ。ヘビー級でこれだけ蹴りが出せるのはすごい。中量級のような試合をしているなと思います」

――階級が重くなればなるほど蹴りを出す回数は減るものですか。

「例えば重量級と軽量級が同じ練習をした場合、先にバテるのは重量級です。やはり体重が重いので体を動かすために必要なエネルギーが軽量級よりも必要なんですよね。男子と女子を比べても、スタミナがあるのは女子の方です。

だからヘビー級なのにこれだけミドルを蹴るのは本当にすごい。レミーはシウバのパンチに左ミドルを何度も合わせていましたが、ヘビー級であれが出来るのは武蔵さんくらいですよ」

――この試合はボンヤスキーにとって約3年ぶりの復帰戦だったのですが、コンディション面での不安はあまり感じませんか。

「試合勘という部分で感じるものはあったかもしれませんが、体の動きやスタミナを見る限りは悪くないです。それにシウバも強い選手なので苦戦するのはしょうがないでしょう。セコンドについていたのはイワン・ヒポリットですよね?」

――ボンヤスキーは自分のチームを作ってから、ヒポリットがトレーナーを務めています。

「それでオランダ式の対角線コンビネーションが多くて、中量級のような試合をしているんですね。アーネスト・ホーストもそうでしたけど、ヒポリットはヘビー級の選手でも中量級と同じような指導をするんですよね。

もともと蹴りを多用する選手でしたが、この試合のレミーを見ると、今まで以上に中量級のような試合をするようになったなと感じます。一発一発の攻撃はそこまで重くないけど、手数が多くてたくさん蹴ることが出来る。一言でいうとレミーは“ヘビー級っぽくないヘビー級”です」

――ではそ攻撃力そのものは、他のヘビー級選手と比較すると、少ないというスタイルなのでしょうか。

「そんなことはないと思いますが、あくまでコンビネーションの中で倒すというイメージで戦っているんでしょうね。パワーとパンチがあるタイプの選手と戦った場合、蹴りで一本足で立ったところを狙われると危ないかもしれません」

――ボンヤスキーのようなスタイルはワンデイトーナメントには向いているのでしょうか。

「それは対戦相手と試合内容次第でしょうね。一発で倒してダメージなく勝ち上がることが出来ればベストですが、それにはリスクも伴う。逆にレミーのように手数で戦う選手は倒されるリスクは少ないかもしれないけれどフルラウンド戦うリスクがあるわけですからね。

ただ復帰戦の動きを見る限り、レミーの仕上がりは悪くないと思います」

(この項続く)

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