この星の格闘技を追いかける

2009年欧州MMAをマルタイン・デヨングに訊く

2009.01.09

(C) GONG KAKUTOUGI欧州――、ロシアはともかくとして、ヨーロッパのMMAはごく最近まで、常に後進国というイメージが付きまとっていた。特にキックボクシングで抜群の存在感を誇るオランダのMMAは、90年代中盤からフリーファイトが行われてきた反面、組技の未熟さが指摘され、欧州内でも他地域の後塵を拝していたといっても過言でない。

【写真】昨年末もアリスター・オーフレイムのセコンドとして来日。2カ月に一度の割合で来日しており、今年は某プロモーションと合同イベントの計画も―― (C) GONG KAKUTOUGI

Interview by Manabu Takashima

そんなオランダMMA界から、DREAMや戦極という日本のプロモーションでゲガール・ムサシ、アリスター・オーフレイム、シアー・バハドゥルサダ、メルヴィン・マヌーフらが活躍し、そのイメージを一新しつつある。

欧州全体で見ても、ロシアや北欧勢のように以前からその力を示していた地域だけでなく、英国ではUFCが定着。そのUFCはドイツ進出を決め、ポーランドやベルギーでも定期的にMMAイベントが行われるようになった。世界のMMA勢力分布において、決して軽視できなくなった欧州におけるMMAの動向を確認するのにとっておきの人物がいる。


1997年に初来日して以来、10年以上にわたり日本の総合格闘技界と向きあい、01年には修斗オランダを発足。現在もゴールデン・グローリーの組技コーチ、GLORYのイベント・プロデューサーを務めるマルタイン・デヨング氏に、要注目ヨーロピアンMMAワールドの現状を尋ねた。

――注目度が増してきたオランダのMMAファイターですが、現在、オランダのMMAの状況はどうなのでしょうか。

「日本や北米のMMAの普及や、国内におけるキックボクシングの普及と比較すると、オランダのMMAはまだこれからという状態であることは間違いないよ。特に2H2H(※トゥーホット・トゥーハンドル。00年に活動を開始し、キック&MMAルールの併用で大成功を収めたプロモーション。オランダの一般層にMMAの存在を知らしめた)の活動停止後、あのような大規模な大会は開催できなくなっているままだ。

そんな状況で、我々グローリーがイベントを開始し、それ以前にプロ修斗公式戦でMMAが何たるかを理解したファンを中心に、しっかりとMMAは認知されるようになってきつつあるんだ。ただ、まだキックのようにテレビの電波に乗るわけでもないし、グローリーもSBS6というテレビ局がストリーミングを開始した状態でしかない。それでもオランダで最も人気のある男性誌『パノラマ』で特集されたり、注目度は上がっているよ」

――グローリーの最近の活動内容はどのようになっているのでしょうか。

「2008年の活動は、オランダ国内にとどまらず、よりワイドな視点でもグローリーの注目度を上げ、確かな実績を挙げたと思う。ヨーロッパはもとより、北米や日本の格闘技雑誌でも紹介されたし、数試合が米国のHDNnetで中継されたんだ。トルコでは地元のFOXTVで1700万人の視聴者を集めた。これらの成功をもとに、2009年はオランダで3度の大会開催を予定している。

Golden Gloryまた、オランダだけでなく、他の国でもイベントを開催したいと思っていて、決して大規模ではないけど、日本でイベントを開くこともその構想の一つなんだ。オランダ国内では、まず4月27日にアムルスフールトで大会を開き、10月17日にはゴールデン・グローリー10周年記念大会をアムステルダムで開く。この大会は、特定のVIPの前で開催され、ゴールデン・グローリー所属選手がK-1と修斗ルールで戦うことになっている。

国内最後の大会は、12月にアーネムで行う予定だ。それ以外にもアップカミング・グローリーというアマチュア・ムエタイとアマチュア修斗のミックス大会を6度開くことになっているよ」

――なるほど、人材育成の場と、目標となるビッグイベントの両輪が上手く回転しているということですね。大会開催だけでなく、選手を派遣する立場として、グローリー以外でおススメのMMA大会はありますか。

「キックと合同のイベントになるけど、ビースト・オブ・ザ・イーストは、大会運営も試合内容も素晴らしい大会だよ。グローリーと同じ規模で定期的にMMA大会を開いているのは、このビースト・オブ・ザ・イーストだけといってもいいと思う」

Hamid――現在、オランダを代表する国際的なMMAファイターの多くが重量級のファイターですが、中量級以下で注目すべきファイターを挙げてもらえますか。

「フェザー級は凄く難しいね。オランダ人の平均的な体格よりも小さくなり、選手層は決して厚くないからね。そのなかでも、今はライト級で戦っているフィンセント・ラトゥールが有望株だ。ライト級はマーク・ドゥンカン、ダニー・ファンベルゲン、スウェーデン人だけどオランダで練習しているハミッド・コラサーニは世界に送り出せるファイターだよ。

ウェルター級はトミー・デプレット。ベルギーに住んでいるけど、彼もまたオランダでトレーニングを積んでいる。MMAでは15戦全勝、キックも2戦2勝なんだ。トミーはベネルクスを代表するファイターになることは間違いないよ」

――軽量級でもメルヴィン・マヌーフのようにキックから転向を図る選手は現れないのでしょうか? オランダ・キック界の70kgと72kgはまさに神の階級と言えるので、テイクダウン・ディフェンスやグラップリングの基礎を学べば、もの凄く楽しみな存在も多いと思います。

「サヒン・ヤクート・カーズは、もう何戦かMMAを経験しているね。でも、力試しみたいなもので、活動の中心はキックであることは間違いない。

Nieky Holzken VS Marco Pique 8グローリーでは、オランダ国内70kgでトップの一人ニッキー・ホルツケンがMMAの練習をすることもある。ニッキーはMMAでも才能に溢れているよ。本人もMMA出場に興味があるみたいだし、いつかMMAで戦うことはあるけど、もちろん時間は必要になる。

それに君も言ったとおりオランダ・キック界の70kgは、MMAのライト級と同じで、質・量ともに世界最高の戦いが繰り広げられているから、そこでトップを目指している選手がMMAで戦う機会はそれほどないのが現状だ」

――マルタインは欧州修斗の代表でもありますが、欧州全体で見て、MMAの普及に関してどのような手応えを感じていますか。

「ヨーロッパ全域でいえば、MMAの普及は目覚ましいものがあるよ。修斗はスウェーデン、フィンランド、デンマーク、オランダ、ベルギー、フランス、スイス、スペイン、イタリア、ギリシャ、ブルガリア、ポーランド、リトアニア、ラトヴィアで行われてきた」

――それらの国では、修斗以外のイベントも行われることもありますが、マルタインの目から見て、欧州におけるMMA先進国はどこになりますか。

「ファイターの質では、英国、フィンランド、スウェーデン、オランダ、そしてポーランドがトップにあり、ベルギーやフランスが続いているというのが、僕の印象だ。

イベントに関しては、フランスはMMAが解禁になった、またダメになったかなどを繰り返しているようだし、スウェーデンでは一部の活動しか認められていないという現実もあるなかで、UFCが定期的に行われている英国の大会がトップになるかな? 

プロエリートの手を離れたケージ・レイジは、アルティメット・グラジエイターUKとして活動を再開するようだし、ケージ・ウォリアーズと並び、英国でもっとも質の良いイベントを開いていくことになると期待しているんだ。

それとポーランドのKSWも要注目だよ。国内でライブ中継は行われているし、観客も5000人ぐらい集めている。KSWの次回大会では、アマ修斗も行われることが決まっているんだ。これからKSWの存在は、もっと注目されるものになるだろう」

――UFCが英国に定着し、6月にドイツでも大会を開くことが決定していますが、UFCの進出はどのような効果を欧州にもたらしていますか。

「UFCの成功は欧州だけでなく、世界的にみてMMAの普及に役立っている。世間にMMAとは何かを、大会やTUFを通じて伝播してくれているからね。ファイターにとっても、ライブのTV中継がある大会の存在はやはり特別なものなんだ。ただ、オランダでいえばまだアントーニ・ハードンクしか出場していないから、これからもっともっとオランダ勢が活躍していくことになると思うよ」

――欧州全体でMMAが盛り上がり、北米ではUFCが爆発的な人気を集めているなか、オランダのMMAファイターにとって日本の大会の位置づけに変化はありますか。

「オランダの選手にとって、日本との付き合いは長く、今も最高の場だと思っている。ファンもオランダ人ファイターを認知してくれているし、ファイターも日本のファンが大好きだ。日本のファンは格闘技をより理解し、一生懸命戦う姿勢を評価してくれる。対して、米国だけでなく欧州でも、ファンは勝っている間はいいけど、負けるともう関心を持ってくれなくなる場合が多いんだ(笑)。この環境と、長い歴史がある限り、僕らはいつだって日本で戦うことを望み続けるよ」

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