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【Special】キックボクシング・ルネッサンス Glory&K-1総括対談(01)

kickboxing Renaissance

【写真】26日のGloryと27日のK-1、欧州の地でキックボクシングが再興した (C) BUS UTERWIJK & BEN PONTIER/EFN

26日(土・現地時間)にストックホルムのエリクソングローブ・アリーナでGlory Sports International主催「Glory World Series 2012」が行われ、翌27日(日・同)にはマドリッドのパラシオ・ビスタアレグレでK-1 Global Holdingsによる「K-1 RISING 2012」が開催された。

70キロトーナメントとヘビー級トップファイターの登用、類似点も多いが、明らかに色が違った両大会。両70キロトーナメント、ヘビー級、そして日本人ファイターの活躍など、大会前と同様に中村拓己と高島学が、MMAの記事が少ないぞ――という声に頭をかきながらも行なった両大会の振り返り対談をお届けします。

高島 日本のK-1全盛期を頂点とし、試合内容ではなくイベントとして、中村さんはどのような印象を両大会から感じましたか?

中村 映像で見た範囲でしか語ることはできないのですが、日本のスタジアム・レベルの規模ではなかったですよね。

高島 GloryのPPVストリーミングのカメラカットから、同じエリクソングローブでも、4月のUFCの時と比較すると、会場設定は小さい規模で行っていたように映りましたね。花道も短かったです。

中村 確かにビッグイベントではあっても、スーパーイベントではなかったかもしれないですね。K-1の方がキャットウォークが長いということもありますが、イベント自体が大きかったのかという気はしました。まぁ、カメラワークのせいかもしれないですけど。

GloryはPPVストリーミング、K-1の方はUSTREAMで無料中継、日本でどれだけの数が見られたのかという部分も気になるところです。

高島 いずれの大会も日本のファンが視聴するには、辛い時間帯であることは間違いなかったです。Gloryは土曜日から日曜日に変わる深夜の1時から、20分から30分遅れでスタートしたと記憶しています。K-1は日曜日から月曜日に変わる深夜3時に本戦スタート。個人的にはIndy500の終盤とK-1の前半戦が重なって、インディで佐藤琢磨選手が上位を走っていたので、気が気でなかったです(笑)。真面目な話、深夜から未明よりも、日曜日の早朝からストリーミングのあるUFCの方が、まだ体力的にはありがたいと感じました。

中村 海外でやっている。もう、簡単には見られないという事実に、より真実味が増しましたね。日曜日の夜中は、本当に堪らないです。

高島 僕個人とすれば、中村さんが先ほどいわれたスタジアム級のイベントでなかったという点ですが、本当に人気のあった時はともかく、K-1人気がピークを過ぎてもスタジアム……、ドーム・イベントにこだわり、格闘技が格闘技でない方向性に向かいつつあったという背景が日本にはあったと思います。

末期のドーム・イベント、K-1 World GPは個人的には大味過ぎて、ディフェンスをしないと格闘技じゃないだろうって感じで。そうやって考えても、K-1 MAXの規模に近いイベントがスウェーデンやスペインに開かれているのは、非常に意義のあることだと思えたんです。

もちろん、It’s ShowtimeやRumble of the KINGSの頑張りもあってですが、もう15年も前にオランダで世界最高峰の試合がアムステルダムのスポートハル・ズイードという体育館で行われていた時代を考えると、K-1が欧州キックを伸ばし、欧州キックがK-1を継ぐんだと、そんな風にも感じました。

ただし、K-1の方はイッツショータイムに見えてしょうがなかったです。花道でお姉ちゃんたちがインターバル毎に踊っている姿やリングアナを見ていると。

中村 これからどういう色が出て来るのか。年内は日本大会はないですけど、次回大会は米国だということで、米国開催でも欧州の色のままなのか。あるいは演出など、変わってくるのか。そういう部分でも興味はあります。メンバー的にはイッツショータイムの6月23日ベルギー大会に出るメンバーがどれだけ含まれているんだ……というのは感じました。

Gloryの方ではファビオ・ピンカがジョルジオ・ペトロシアンをこかすと、お客さんが沸いたことが印象に残っています。ああいう攻防が好きなファンの前だから、あのカード編成になったのかなって。『こんなところで沸くんだ』っていう意外さがありました。イタリアのFight Codeという大会でも、倒したり、こかすと沸く。相手を転ばせることが、攻勢にでているいう認識をしている。

高島 スペインのファンは、逆に大技に沸く傾向があったように思います。そうえいばUFCのときでも、スウェーデンのファンはパスガードやポジショニングの攻防で、沸いていたんですよね。実際に練習している人たちが足を運ぶ比率が高いのかもしれないですね。

スカンジナビアは10回ほど訪ねたことがあるのですが、日本で思われているような美しい福祉国家というだけでなく、かなり治安が悪いという一面を持っていますからね。だから、護身的にも格闘技の練習をする人の数が多いのか。冬が長いので、屋内で汗をかけるスポーツとして格闘技が存在するのか。その辺りのことは定かではないですが、ファイティング・エンターテインメントといっても、ファイティングに比重を置いているのがスェーデンのGloryで、エンターテインメントに寄っているのがスペインのK-1かと思いました。

中村 強引に分けると、そういった風になる印象はあります。ただ、今回K-1とGloryという二つの大会が開催されたことで、イッツショータイムだけだった昨年のことを考えると、キックボクシングが注目されるためにも良かったです。

高島 MMAでもUFCが最高峰として存在していても、他の大会があることで選手も露出する機会が増える。競合するビッグプロモーションが活動を継続することが、キック界の活力になるのでしょうね。

そんな両イベントですが、まずはGloryの70キロトーナメントから振り返っていただきたいと思います。中村さんはファイナル16で、誰が印象に残っていますか。

Petrosyan【写真】Glory70キロトーナメントで、ムエタイ系の強豪ファビオ・ピンカに、インファイトの強さも見せたジョルジオ・ペトロシアン (C) BUS UTERWIJK

中村 ペトロシアンが頭二つ抜けている。勝ち残ったメンバーを見ても、そう思いました。ファビオ・ピンカに勝った試合は、結果的にケム・シッソーピノーンに勝った時のような展開になりましたね、対格差は感じましたが、相手が距離をとって巧妙に戦う場合は、ああいう風にパンチ主体で前に出ていって競り勝つ試合ができる。逆の場合は、距離を取って戦うことができる。ペトロシアンは相手ができない部分で、勝った動きを見せて勝つ。

ある意味、MMA的でもあるし、ムエタイの選手もよくいうところのバランスの良さと何でもできるという部分、相手ができない部分で、自分の良さを引き出す。そういう強さを見せつけた試合だったと思います。

高島 ケムと戦ったときよりも、K-1で戦ってきた経験が生きたのか、ヒットだけでなく、パンチ力自体も増しているように感じました。

中村 確かにそうですね。あのスウェーをした状態で、左ストレートや右フックの返しは、凄いです。あれだけ距離が詰まったなかで、あの技術を出すことができる。その凄さを改めて感じさせられました。

この項続く



5月27日の激戦も――、過去のGLORY WORLD SERIESアーカイブ映像はコチラ

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