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【2014WJJC】地球上最強の柔術家の座は、今年もブシェシャに

2014 WJJC Absolute Winner Buchecha

【写真】2014年ワールド柔術チャンピオンシップ、無差別級を制したのはマーカス・アルメイダ・ブシェシャだった(C)MMAPLANET

5月29日(木・現地時間)から1日(日・同)にかけて、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校のピラミッドにて開催されたワールド柔術チャンピオンシップ。今回は「階級を超えた世界最強の競技柔術家を決定する舞台」である無差別級の準決勝、決勝の模様を紹介しよう。

3回戦でレアンドロ・ロ相手に新技術ワームガードを駆使し、試合を「最後に上にいた者勝ち」ゲームに持ち込んで勝利したコーネリアスは、続く準々決勝では階級上の強豪レオ・ノゲイラから三角絞めで一本勝ち。単なるポイントゲーム巧者とは全く異なる、おそるべき極め力を持った柔術家であることを改めて見せつけて準決勝に進出、2年連続無差別級王者のブシェシャことマーカス・アルメイダに挑むこととなった。

Buchecha Pass<無差別級準決勝/10分1R>
マーカス・アルメイダ(チェッキマット)
Def. 7-2
キーナン・コーネリアス(アトス)

試合開始後すぐブシェシャガードに引き込むと、コーネリアスは即座に反応して足を捌いてパスへ。対するブシェシャもすぐに巨体を豪快に回転させて得意の膝十字狙い。ならばとコーネリアスが上から前転してのベリンボロで返す。しかし、ブシェシャはそのコーネリアスのズボンを掴むと、それを引き寄せて逆にベリンボロでカウンターを見せる。エビの要領で距離を取るコーネリアスに対して、ブシェシャは上のポジションを確保。嵐のような切り返し合いの攻防の末、ブシェシャがまずリバーサルで2Pを先制した。

コーネリアスはブシェシャの裾を引き出すと、それをブシェシャの足に巻き付ける。嫌って許さないブシェシャは、素早くレッグドラッグ・パスへ。なんとか距離を作って逃れたコーネリアスは、両手でブシェシャの両袖を掴んで何やらセットアップ狙う。その後コーネリアスは足の裏を襟に当てるギャラクシーガードの体勢も利用しながら、やがてブシェシャの膝裏に巻き付けてラペルガード(取った襟を同じ側の膝裏に巻き付けている点で、逆側の膝裏に巻き付けるワームガードとは違う形)を作ることに成功する。

ここからベリンボロを狙って外回りを続けたコーネリアスは、逃げるブシェシャの背後に到達すると後転し、レッグドラッグにつなげながら上を取って同点。そこからは3回戦のコーネリアス×ロと似て、ラペルガードのまま上下が入れ替わるシーソー状態がしばらく続いた。やがて裾を取られたままのブシェシャがディープハーフに入ると、それまで取り続けていた裾のグリップをあえて手離して、ニースライドパスの形を作るコーネリアス。ここでブシェシャが一気に起き上がりにくると、コーネリアスはブシェシャの背に飛びついてバック狙い。ブシェシャはそれを振りほどくようにして上を取り、リバーサルで2Pをついて、4-2に。袖グリップを離して勝負に出たコーネリアスを、ブシェシャが持ち前の瞬発力で制した場面だった。

その後、下のコーネリアスは再びブシェシャの裾を引き出してワームガードのグリップを完成。インバーテッドの体勢でブシェシャを煽る。ここでブシェシャは豪快に横に飛んでコーネリアスのグリップを引きちぎると、次の瞬間逆方向に飛び戻って来てサイドへ。コーネリアスに襟を取り直す隙を与えずに見事に抑え込み、パスガードが完成。3Pを奪ってみせた。ここまで猛威を振るってきたコーネリアスの裾グリップを陥落させたのは、ブシェシャの怒濤のムーブだった。

この時点で残り時間も少なく、万事窮すの感の大きいコーネリアスだったが、諦めずにガードを回復し、なんとか反撃を試みる。ブシェシャも上から豪快な跳び付き三角を仕掛けるなど、持ち前のアグレッシブさを発揮するうちに、試合は終了。新開発の裾を掴んだガードにこだわるのでなく、一度はそれを離してパス勝負に出たコーネリアスと、裾のグリップを強引に切ってみせたブシェシャ。両者がラペル/ワームガードによる膠着を打ち破る動きを披露した点に、明るい未来が垣間見えた試合だった。

Buchecha Takingdown<無差別級決勝戦/10分1R>
マーカス・アルメイダ(チェッキマット)
Def.2-0 A3-1
ホドウフォ・ヴィエイラ(GFチーム)

コーネリアスの挑戦を退けたブシェシャと決勝で対峙したのはやはりこの男、ホドウフォ・ヴィエイラだった。ヴィエイラはここまで最重量級の新星アレキサンダー・トランスと、同階級のライバル、ベウナウド・ファリアという2 人のハーフガード巧者を強烈なプレッシャーで圧倒して、完全パスをした上で一本勝ち。地球上最強柔術家決定戦──4日間に渡り12面マット(最終日は2面)で開かれたワールド――最終試合は、今年度もまたこの2人の間で争われることとなった。

試合開始後、スタンドで組み合う両者。ヴィエイラが上を狙うのはいつものことだが、先日のアブダビ・ワールドプロでの一騎打ちにおいて開始早々下になって大ピンチに陥ったブシェシャも、今回は引き込むつもりはないよう。タックルや背負い、大内などのモーションを見せるブシェシャに対して、ヴィエイラもお得意の襟を引き下げてからのテイクダウンを再三狙うが不発。お互い頭を付けての緊張感ある立ちの攻防が続いた。

5分経過時点で、ヴィエイラの帯を右手で引きつけたブシェシャは、前に出てその右手でヴィエイラの左足を抱えてのシングルレッグでテイクダウンに成功。倒された瞬間ヴィエイラは痛恨の表情を浮かべた。低い体勢で体重を掛けてゆくブシェシャに対して、ヴィエイラは腕でフレームを作って距離を保とうとする。さらにヴィエイラはディープハーフ、ハーフで片膝を相手の腹に置いた状態、またはXガードの体勢を作ってスイープを試みるがブシェシャは崩れず、低くプレッシャーをかけ続けてゆく。

重厚にして緊張感溢れる攻防が続き残り時間が少なくなってゆくなか、ブシェシャはハーフで胸を合わせて抑えることに成功。懸命に動いたヴィエイラは再びディープハーフを作るが、ブシェシャは正対して対処。時間のないヴィエイラは膝を使って強引にスイープを狙うが、ブシェシャはその隙に乗じてサイドへ。それをヴィエイラが必死ではねのけると、ブシェシャがライオンの如き瞬発力で再びヴィエイラに襲いかかったところで時間切れ。ブシェシャは絶叫し、さらにマットに突っ伏して喜びを表現。片やヴィエイラは、がっくりとうなだれしばらく立てなかった。ポジションの入れ替わりこそ少なかった今回の頂上決戦だが、この両者の姿がこの試合の激闘ぶりを如実に物語っていた。やがてブシェシャがヴィエイラの頭を抱くと、ヴィエイラも同じ仕草で勝者を祝福。大騒ぎしているブシェシャの応援団も「ホドウフォ」コールを送ることで敗者を称えた。

またしてもブシェシャに軍配が上がった両者の頂上対決だが、ワールド・プロ大会に続いて今回も差は僅かなものだった。来年ヴィエイラは雪辱を果たすことはできるのか、またコーネリアスら新鋭は2人の独走に割って入れるのか、今から来年の戦いが楽しみとなるような、今年の最強決定戦だった。

Podium【無差別級】
優勝   マーカス・アルメイダ(チェッキマット)
準優勝 ホドウフォ・ヴィエイラ(GFチーム)
3位   キーナン・コーネリアス(アトス)
ベウナウド・ファリア(アリアンシ)

 

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