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【Interview】鈴木信達 「アスクレン、なぜそこなんだと(笑)」

Nobutatsu Suzuki

【写真】戦った本人だからこそ語りえる、そんな試合の流れを鈴木は話してくれた(C)MMAPLANET

初代OFC世界ウェルター級チャンピオン鈴木信達インタビュー第2弾。3月14日(金・現地時間)に絶対的に不利と見られたブロック・ラーソンを倒し、OFCのベルトを巻いた鈴木本人に試合を振り返ってもらった。

圧倒的なテイクダウン能力を誇るラーソンに対し、腹を効かせた鈴木だが、その後はなかなか前に出ることができなかった理由は。KOに拘る鈴木の姿勢、そして話題は最強の敵、ベン・アスクレンへと向かった――。
〈鈴木信達インタビューPart.01はコチラから〉

──結果論なのですが、逃げのテイクダウンに対し、四点ヒザが認められている点も有効利用できました。

「自分は日本人選手として、他の選手と差別化が図れるのであれば、テイクダウンを切ってからすぐに細かいヒザを入れることができるという点なんです。細かい割にはダメージを与えることができるようなヒザが。今回のラーソン戦では、それが許されるルールであったことは僕にとっては有利なルールでした。

試合前は相手の方が有利だったという声が多かったのですが、テイクダウンを切ってしまえば自分にとって得意な展開にも持っていけるルールなので、それほど自分では不利だとは思っていませんでした」

──ユニファイドルールで、ヒザが許されていないと、あの低い姿勢からのテイクダウン狙いもケージに押し込まれていたかもしれないです。それがOFCのルールだと、ラーソンは立っていられない→組みつく→ヒザが嫌で引き込むという繰り返しになりました。あの展開になると『いける』という気持ちになれたのではないですか。

「なりましたねぇ。ただ、予想外だったのは左のストレートの威力があって、ガードをしても、そのガードが吹き飛ばされるぐらいで、何発が被弾したんです。それがあって、余り入り込めませんでした。情けないことに『カウンターであの左ストレートを貰うと、倒れるんじゃないか』と怯んでしまって。冷静にそういう風に計算できたことで、逆に3Rから5Rに掛けて前に出ることができなくなってしまいました。そこは反省点です。

あそこでKOをしておけば、もう少し楽に勝てたのに。ラーソン選手は後足重心で、そこからさらに後からパンチを出すように左を振ってくるので、リーチが短い自分とすれば、その分奥に入っていかなければならなくて。パンチではなかなか勝負できず、蹴りに頼らざるを得なかったです」

──その判断は大正解だと思うのですが。

「そうですねぇ……。慎重に行ったからこそ、良い結果に繋がったのですが、自分としては倒したかったという気持ちが強いです。やはりお客さんに盛り上がって欲しかったですし。結果は勿論、大切なのですが自分は期待されていることを表現したいので、どうしてもKOしないと気が済まないんです。本当に判定勝ちすることは考えていませんでした。それこそ、情けない試合になるぐらいならKOされても良いと思っていますので。そういう気持ちが強かったのに、怯んでしまった自分が……」

──では、パウンド・アウトに関して、どのように捉えていますか。相手が引き込んだ時に、殴る回数は多くありませんでした。

「これも正直な話、パウンドの練習をしていないんで、できなかったんです(苦笑)。相手は柔術もできるので、相手の戦いに入っていくことは避けていました。5R……最後に殴ったのは、やはりお客さんが求めていること。残り30秒なら仕掛けられても耐える自信がありました。それと自分が攻めたという印象を与えたかったですね」

──5R終了後に勝ったという自信はありましたか。

「いえ、不安でした。試合前、試合後、試合中もそうなのですが、僕は相手を煽ったり、「来いよ」とかアピールするだとか、試合前の誹謗中傷するようなことが好きじゃないんです。ただ、今回は判定になった時に取られたかもしれないという不安があったので、拳を挙げて周囲、観客に自分の方が元気だぞとアピールしたというのはありました」

──1Rしか取られていないと思いましたが、それでもジャッジの判断は分からないですからね。

「だから倒したいというのもあります。僕自身、KO勝ちかドロー、それかK太郎さんにやられた一本負けしかないので、2人で並んだ勝者コールを受けるのは初めてで不安でした」

──なるほど、判定で勝ち名乗りを受けるのは初めてだったわけですね。

「だから嬉しいというのもありました(笑)。勝った時も自分の気持ちを表に出す方ではないのですが、判定勝ちのコールを受けると自然に体が躍動しました」

──判定勝ちには判定勝ちのカタルシスがある。

「嬉しかったです」

──晴れてチャンピオンになり、ビクター・クイ代表などOFC関係者から何か言葉はありましたか。

「『素晴らしい試合だった。観客席が一つになった』と言ってもらえました。僕は覚えていないのですが、鈴木コールもあったようで……。大会的には良かったのではないかと」

──海外では絶大な知名度を誇るスズキ、ホンダの両巨頭の一方です。スズキという単語は、最も親しまれている日本語の一つだと思います。

「なるほど、そういうことなんですね。皆さん、スズキ、スズキって言ってくれて嬉しかったです。モチベーションも上がりました」

──OFCではバンタム級王者のビビアーノ・フェルナンデス以外、ライト級が青木真也選手、フェザー級が大石幸史選手、そしてウェルター級の鈴木選手と3人目の日本人チャンピオンです。

「自分もチラホラ、格闘技のサイトも見ていて、日本人が苦しんでいるのは知っていました。そんな中で、OFCでは日本人選手が頑張られているのは嬉しいです。同じ大会に出た朴光哲選手もしっかりとKOで勝っていましたし、次の大会(※5月2日マニラ大会)の上田(将勝)選手も頑張ってほしいです」

──鈴木選手、朴選手、大石選手、そして上田選手、皆、同い年だそうですね。

「そうなんですよ。1977年生まれで。朴選手が試合前に『俺たちはロートル、77年生まれは不作だねぇ。プロ野球も阿部(慎之助)しかいない』なんて言っていて(笑)。だから、僕らで盛り上げたいっていう気持ちもありました、ハイ」

──ベルト奪取、心から喜びたいのですが、その一方でOFCはベン・アスクレンと契約をしています。

「なぜ、そこなんだと。なぜ、契約をするんだって(笑)。11月のタイトル戦が流れ、ベン・アスクレンが契約した時に『俺はタイトルには縁がないんじゃないか』と思いました。ただ、対戦相手がラーソン選手だったので……。まぁ、2人を比較してどちらが優れている、劣っているという評価は別としても、アスクレン選手の方が肩書も評価も上で、何よりも誰が見ても一流の選手ですよね。その選手とタイトルを賭けて戦うのであれば、ラーソン選手と戦うよりもチャンピオンになる可能性はかなり低くなる。本当に一縷の望みというか……そういう気持ちになりましたよね(苦笑)」

──OFCではビビアーノ、青木選手、ファイトマネーが高額の選手をレジェンド扱いせずに、タイトルに絡んできています。ということは挑戦者として最右翼(※ベン・アスクレンは5月30日にバクティア・アマゾフと対戦)の存在になってくると思われます。

「OFCの方も自分を遊ばせるつもりはないでしょうし、次の対戦相手はベン・アスクレン選手になるでしょうねぇ」

──イヴォルブMMA所属にもなりましたしね。

Ben Askren【写真】北京五輪フリースタイルレスリング米国代表という肩書よりも、MMA的にはNCAA2度制覇、D1オールアメリカン4度という実績の方が怖いベン・アスクレン。MMAは12連勝中。ただし、4点ヒザルールの経験はない(C)BELLATOR

「これまでフィル・バローニ選手、ブロック・ラーソン選手に勝ったとはいえオッズ的には毎回、1-9。そういう勝てないところを覆すのは、自分も気持ちが良いです。誰もが『鈴木は無理だろう』というなかバローニ選手にはKO勝ち、ラーソン選手にはワンサイドの判定勝ちをしました。で、次がベン・アスクレンだと、夢は持てると思うんです。『やってくれるんじゃないか』という。ベン・アスクレン選手も順当にいえば、自分が勝つと当然思っているだろうし。ただ、良く分からない選手が、良く分からないスタイルで、勝ってきているので気味は悪いと思うんです。自分も勢いだけは負けず劣らずあるので。勝ち負けもそうですが、彼と戦っても傷跡をつけたいです」

〈この項続く〉

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