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業界最古参モンテ・コックスに聞く、金融危機とMMA

2008.11.05

(C) GONG KAKUTOGI/Hiroshi Hosoda巨体に汗しながら、日々のハードワークをこなすMMAワールドの名物マネージャー=モンテ・コックス。MMA業界の酸いも甘いも知り、裏表を知るコックスに、金融危機を迎えた米国MMAワールドの未来、そして日本との関係を尋ねた。

【写真】戦極が終われば、すぐにフロリダで行われるWECへ向かうという忙しい日々を送るコックス。MMAワールドの良心ともいえる常識人だ (C) GONG KAKUTOGI/Hiroshi Hosoda

Interview by Manabu Takashima

UFCの盛況が続くも、IFLに続きEXCが活動を停止した。北米MMAバブルの崩壊が叫ばれる中で、11月1日に行われた戦極にジョー・ドークセンを送り込んだ辣腕マネージャーのモンテ・コックス。MMAがNHBと呼ばれている頃に、いち新聞記者だった氏は、この新しいコンバット・スポーツに魅せられ、パット・ミレティッチらのマネージャーとして、またエクストリーム・チャレンジという大会のプロモーターとして歩み始めた。


その後、前述したミレティッチを始め、デイブ・メネー、マット・ヒューズ、ジェンス・パルヴァーティム・シルビア、リッチ・フランクリンらUFC世界王者を輩出。今も世界中のMMAイベントに配下選手を送り込む一方で、開催数が100度を超えたエクストリーム・チャレンジだけでなく、アドレナリンMMAのプロモート業にも勤しむ。そんな彼を戦国が行われたさいたまアリーナでキャッチした。

――2005年のTUFの開始により、UFC人気が急上昇し、北米ではMMAが発展しました。しかし、昨年のボードッグ、今年に入ってIFL、最近ではEXCが活動停止に追い込まれています。北米MMAバブルが崩壊し、UFCの一人勝ちという状態になりそうですが、この業界に最も古くから関係し、良識ある人物として信頼されているモンテは、今の状況をどのように捉えていますか。

「う~ん、また新しいプロモーションが動き始めるという話も出ているし、CBSもMMAを続けるという話もある。また、私もアドレナリンMMAを地元のクワッドシティーズ<※イリノイ州とアイオワ州の境。ダヴェンポート、ベッテンドルフ〈以上アイオワ州〉、モリーン、イーストモリーン、ロックアイランド(以上イリノイ州)の総称>で、12月11日にパット・ミレティッチとトーマス・デニーをマッチアップするしね。UFCだけでなく、良いイベントも残っている。エクストリーム・チャレンジも1月14日に108度目の大会を開くんだ」

――新しいプロモーションというのは、かねてから噂されていたESPNが行うベラトール・ファイティング・チャンピオンシップのことでしょうか。大規模な大会になるという話も伝わってきます。

「う~ん、ESPNといってもESPN DEPORTESが開くもの。つまり、スペイン語チャンネルなんだ。ここで人気が上がってくれば、ESPN NEWSで扱われ、ESPN2へ、最後はESPNへと向かえば最高だね」

――そして最終的にはABCでMMAライブと(笑)

「そこまでは――。まぁ、大きくなることを期待している段階なんで、ビッグプロモーションとは言えない状態だよ」

――ただし、EXCなきあともビッグプロモーションが活動しないと、UFCの一人勝ち状態はマネージャーとしてのモンテにとって、あまり良い状態ではないのではないですか。

「NFLは一つしかない。でも、フットボールにこうじる者、フットボールを見る者は絶えない。実際、UFCが好調であることは好ましい事態なんだ。UFCで大金を稼ぐことができるファイターが存在するんだから。UFCが存在しないということを考えれば、例えUFCが一人勝ちの状態でも、存在しないよりもずっと良いことじゃないか」

――UFCだけが盛況な状態は、ファイトマネーが抑制されることも考えられます。UFCには、EXCが存在したようにライバルが必要ではないでしょうか。

「EXCの活動停止は残念なことだ。ただし、CBSはMMAを続けるだろう。SHOWTIMEもMMAの大会を続けると聞いている」

――SHOWTIMEが、ShoXCのような大会を続けてくれることは、MMAにとってもとても価値がありますね。UFCやTUFだけでは、人材育成に十分ではないですから。

「UFC以外のプロモーションが台頭するということは、UFCが見逃したファイターを獲得するということ。ここにも優れたファイターはたくさんいるからね。そういう選手の知名度を上げてくれる。CBSの大会とは、つまりSHOWTIMEがやっていくこと。我々の業界はUFCだけじゃない、ビッグビッグショーが続くということだよ」

――では、モンテが抱えていたEXCと契約下にあったファイターのいく末も安泰というわけですね。

「私がマネージメントしているファイターで、EXCと契約していたビッグネームはエディ・アルバレスとロビー・ローラーの二人だ」

――彼らの今後は、どうなるのでしょうか。UFCに行くという選択もあります。

「彼らにはホームが必要だ。それが日本になればという思いもあるし、米国ならアフリクションやストライクフォースということも考えられるよ」

――PRIDEが消滅した後の日本のマーケットをモンテはどのように捉えているのでしょうか。

「MMAとは山あり谷あり、上下の動きが激しいものさ。一時期、日本に資金が集中していた。それが今、米国に移った。ただし、今も日本には戦極とDREAMというグッド・ショーが残っている。日本のMMA人気は絶大なものがあった。今も活動しているプロモーションが音をを上げない限り、あの熱気が戻ってくるはずだ。日本がMMAに果たしている役割は非常に大きい」

――モンテにとっても、今も大切なマーケットだということですか。

「もちろんだよ。日本なくして、MMAは成り立たない。日本にワールドワイドなオーガニゼーションがあることの意味はとても大きい。日本の大会には、世界中のファイターが集まり、ファンが彼らに声援をおくる。UFCも国際化が目立ってきているが、どうしても米国中心になっている。日本のような状況ではない。日本は国籍に関係なく、スター選手を生みだしてくれる。良い活躍をしたファイターが、スターになれる。それはMMAが発展するために、とても重要な要素なんだ。私はそんな状況を欲してやまないよ」

――今、米国のMMAの盛り上がりを見ているなかで、一つ不安な要素があります。一般のファンにとって、MMAはイコールUFCだということ。確かにズッファの果たした役割は大きいですが、彼らは2001年からUFCを開いたにすぎない。それ以前にMMAには8年の歴史があったことを米国のファンは理解していないように見えます。まるでダナ・ホワイトがMMAを創ったかのように思っているようで。

「ダナ自身が、時々MMAを買収したとでも思っているようなことがあるね。彼やズッファが買ったのはUFCであって、MMAではない。MMAが大きくなるために、多くの人がハードワークをこなし、従事してきた。ダナ・ホワイトの姿なんて見えない頃から、このスポーツの発展に寄与してきた人間はいくらでもいる。ダナ以前の努力があったことは事実だし、そこを切り捨てることはできない。その一方で、ダナのことを好きか嫌いかということでなく、彼がMMAの発展に欠かせない仕事をやってきたことも確かなんだ」

――そのUFCも安泰でないという噂があります。サププライムローン問題をきっかけに起こった不況と、昨今の金融問題。これら米国の経済悪化が、ズッファの親会社であるステーション・カジノの経営を圧迫していると。

「米国中のカジノの状態は、良い方向にない。それはステーション・カジノも同様だ。でもカジノというのは、ビリオン・ダラー(※1000億円)のビジネスだ。そこで数億円の損害が出たとしても、ビジネスが破たんするわけがない。しかも、UFCは優良なビジネスを続けている。だから、金融危機もUFCにとってそれほど影響があるわけじゃない」

――北米のMMA全体では、どうでしょうか。

「それはあるよ。MMA全体でいえば、小さなプロモーションには影響がでるだろう。例えば、私は中西部でイベントを開いている。そこに足を運んでくれていたファンの懐がさびしくなり、UFCシカゴ大会かエクストリーム・チャレンジ、一つを選ばないといけない状況になる。そうすると、多くがUFCを選択し、私の大会のチケットを買い控えるようになる。だから、私のショーには影響が出るよ。でも、UFCはアリーナを満員にしていて、金融危機は問題ない。そして、UFCがこの業界に存在することの大切さは、最初に言った通りなんだよ」

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