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【UFC129】GSP楽勝のような苦戦、苦戦のような楽勝劇!?

2011.05.01

【写真】少なくともジャッジ二人は、GSPが2ラウンドを落としたと裁定したメイン。GPSは完封したような、苦戦をしたような――、MMAの奥深さと面白さ難しさを感じさせたウェルター級王座戦だった(写真提供)格闘技ESPN

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]ジョルジュ・サンピエール(カナダ)
Def.判定3-0:48-47、48-47、50-45
[挑戦者]ジェイク・シールズ(米国)

やや緊張した面持ちにみえるジェイク。対するGSPも表情が硬い。上背で上回るジェイクに対し、低い姿勢から左ジャブを伸ばすGSP。ジェイクは左ハイで体を起こそうと試みる。互いに左ジャブを伸ばすが、威力があるのはGSPだ。そのGSPの左ミドルをキャッチしたジェイクが、そのままケージに運び、ワキを一本差してケージに押し込む。

体勢を入れかえたGSPは、距離を取って打撃の間合いへ。ジェイクの左ジャブを捌いて、左を打ち込む。GSPの後ろ回し蹴りは2回空振りになるが、ジェイクのペースを乱したか。GSPは、オーソドックスの構えにスイッチし、右を伸ばすと、サイドキックを見せ、とにかく接近戦を避ける。

左ジャブ、さらにスーパーマンパンチを打ち込み、連続してジェイクのバランスを崩したGSPは、ミドルをキャッチされても素早く足を引き抜き、スタンドをキープ。鼻血を流し、距離を詰めようとするジェイクに対し、GSPは残り30秒で左から右を見せる。残り10秒で右をヒットさせた王者が、まずはポイントを奪い、初回を終えた。

まんまと削り合いに持ち込んだGSP、間合いを掴んだ王者に対し、ジェイクはやや距離を詰め、打たれながらもテイクダウンを狙うといういつも展開か。ローからミドルを見せるが、距離を掴めない挑戦者に、GSPの左が伸びる。互いに左ローを蹴り込み、間合いを図る展開のなか、GSPは右ローから右フックと、通常の右下がりでなく、右斜め前へのステップを多用する。

左ミドルを放ったジェイクに、思い切り右を振るったGSPが、ケージに挑戦者を追い込む。スッと自ら距離を取る王者。完全にGSPペースで試合は進む。通常よりも右フックを多用するGSPは、ジェイクに組ませない。一方、2R終盤にきても、まだ一度もテイクダウンを仕掛けないGSPは、完全なジェイク対策を施してきたようだ。

右フックから回し蹴りを見せた王者、懸命に蹴り足を掴もうとして、その足を掴み損ねる挑戦者。残り20秒となり、ジェイクが両膝をつくダブルを見せるが、GSPは簡単に距離を取り、このラウンドも攻勢のまま終える。


3R、前に出始めたジェイク。案の定、パンチをもらうが、それでも組みつくチャンスをうかがう。インターバル中、引き込むのはまだというようなやりとりをしたジェイク陣営、果たして、どのような作戦を考えているのか興味深い。とはいえ、GSPの右を受けてなお、テイクダウンに持ち込めないジェイク。削られ続けるように見えるが、これも作戦なのか。

ハイかシングルレッグを見せたが、これは距離が遠く、足に触れることもできない挑戦者。組めないジェイクは手がないようにも見えるが、ミドルを懸命に放っていく。そのミドルにパンチを合わせるGSPは、時計を確認する余裕を見せる。

後ろ回し蹴りで、再び距離を取る王者。挑戦者はGSPの右を背中で受けると、残り20秒でついにGSPがテイクダウンへ。ガードワークで勝負を賭けたいジェイクだが、この時間では何もできない。完全に王者の術中にハマった挑戦者。GSPは左目の下を腫らしたことを気に掛けるが、セコンドのグレッグ・ジャクソンが「気にするな」と、ほんの僅かの不安材料を振り払う。

4R、前に出たジェイク。距離を取るGSPは、蹴り足を掴んで序盤にも掛からずテイクダウンへ。だが、すぐに立ち上がって、これもまた完全にGSPペースだ。右が意外にヒットするジェイク。GSPの左目の具合は?

右の精度が落ち始めたGSPに対し、スイッチを見せるようになったジェイクは真正面からミドルを狙う。そして、GSPの左ハイを受けたジェイクが前方に崩れ落ちる。ジェイクは、必死にシングルレッグに出るが、GSPは苦もなく立ち上がる。

両手を広げ、「来い、来い」とアピールするジェイクに、GSPの左が伸びる。残り1分、ハイを受けても、なお距離を詰めることができないチャレンジャーは、全ラウンドを失ったまま最終ラウンドを迎える。

「左目が見えない」というGSPだが、それでも左ハイをヒットさせることが、新ためて驚かせる。オクタゴン中央で右手を合わせた両者、ジェイクが右を伸ばし、GSPが足を使う。ハイ、スーパーマンパンチを繰り出す王者の右のパンチで、挑戦者がバランスを崩す。パンチを受け、バランスを崩すジェイクは、どうしても組みつくことが出来ない。残り2分半、GSPは右を受けても、すぐに右を打ち返す。スイッチを繰り返すジェイクだが、距離を詰めることはできない。スピニングバックキックを見せた王者。残り45秒となり、ほぼ王座防衛を確実にしている。残り10秒のダブルレッグは切ったジェイクだが、試合終了と同時に、GSPの右手をかかげ、『参った』とばかりの表情を浮かべる。

左目を腫らし、鼻をカットしたGSP。ほとんど傷の目立たないチャレンジャーと、かつてないほど傷を作ったチャンピオン。ただしジャッジの裁定はジャッジ二人が48-47、一人は50-45で、GSPが6度目王座防衛に成功した。

「左目が青く見えるだけで、ハッキリ見えていない。ジェイクは僕が思っていたよりも良いファイターだった。次? 階級を上げる? 今、試合が終わったばかりで考えられない」と、ジャッジ二人とはいえ2Rを失った試合を振り返った。

ジェイクの得意の展開に持ち込ませず、ある意味、完封したといえるGSPの王座防衛劇。その得意の展開に持ち込めなかった最強のチャレンジャーのパンチが評価されたのは、MMAの奥深さと面白さ、そして難しさを表した試合だったといえる。

<MMA情報モバイルサイト=格闘技ESPN>
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