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【OCTAGONAL EYES】リョート・マチダ

Lyoto
【写真】試合後の会見で、ダナ・ホワイトですら「ミスジャッジ」と公言するなか、リョートは決して自らの勝利を否定することはなかった

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※本コラムは「UFC日本語公式モバイルサイト」で隔週連載中『OCTAGONAL EYES 八角形の視線』2009年11月掲載号に加筆・修正を加えてお届けしております

文・写真=高島学

ファンの反応は、本当に恐ろしい。

そんな印象を10月24日にLAで開催されたUFC104で持ちました。

メインイベントの世界ライトヘビー級選手権試合が開始した時点で、ステイプルス・センターを埋めた16000人に及ぶファンの声援は、王者リョート・マチダに集中していました。

「カラテ・イズ・バック」という掛け声とともに、見事なカウンター戦法でラシャド・エヴァンスを破り世界王座に就いたリョート。

相手の攻撃を受けない――、ボクシング+レスリングの融合が全盛のMMAにあって独自のスタイルを構築した王者は、ここ一番の試合で衝撃的なKO勝ちをすることで、ファンの絶大なる支持を集めるようになっていました。

一方、PRIDE無差別級GP王者という触れ込みで、ズッファが猛プッシュした挑戦者マウリシオ・ショーグンでしたが、フォレスト・グリフィン戦の敗北、過去2戦の勝利がマーク・コールマン&チャック・リデルというベテランということもあり、決して高い評価は得ていませんでした。


ガンガンと打ち合いをするショーグンの戦術は、エキサイティングなシーンを演出こそできるものの、自ら攻撃を受けるリスクも高く、また5Rを戦い抜くことができるスタミナがないという判断をされていたわけです。

しかし、リョートと対峙したショーグンはこれまでの彼とは全く違うスタイルをもって、世界戦に挑んでいました。

両手で完全に顔面を覆うディフェンス、打撃を打ちながら突っ込むことはなく、リョートの牽制の蹴りの終了時点、つまりリョートがマットに足を戻した瞬間に、ローを思い切り蹴り込んでいったのです。

衝撃を和らげるためにリョートが、足を上げてカットすると、その刹那、片足になりバランスが崩れやすい王者につけ込み、テイクダウンを仕掛ける。

倒されまいと踏ん張り、距離を取っては下段を蹴り込まれるリョートは、前に出ることができなく、スタミナもロスしていきました。

これまでUFCで1Rもポイントを失ったことがない王者が見せた、初めての苦戦。リョートの反撃はボディへのヒザ蹴りでしたが、ショーグンは距離を詰めた瞬間に思い切り腹に力を込め、肉を切らして骨を断つかのような踏み込みを見せ続けました。

決定打はない、しかし、攻勢なのはショーグン。5Rを終えた時点で、試合前にはリョートに声援を送っていたファンは、ショーグンを新たなに王者のように大歓声で迎え入れていました。

ご存じのようにジャッジの裁定は、3者とも48-47でリョート。その瞬間、会場は大ブーイングに包まれてしまいました。

強さこそ正義と言わんばかりの厳しいファンの声。リョートは「僕は戦うだけ戦った。後はジャッジの判断」と試合を振りかえりましたが、彼の言葉にある通り、ブーイングを受けるのはジャッジであり、リョートでなかったはずです。

個人的な意見を述べさせていただくと、リョートが明確にラウンドを取ったのはパンチを集中させた3Rのみ。王者の威信が見る目を狂わせる1Rを彼につけることがあったとしても、47-48でショーグン勝利という見方が成り立ちます。

いずれにしても、この判定勝ちという裁定の非はリョートにないはず。試合内容でなくて、判定結果によって彼が非難されるのは筋違いというものでしょう。

そんな厳しい世間の目に対し、リョートは一度として自らの敗北だったという言葉を発することなく、また1Rに左拳を負傷したことを理由に、自己弁護をすることも一切ありませんでした。

同時に「1Rから3Rまでは取っていた」という家族の言葉に、頷くことがなかったことも書き記しておきたいと思います。

「実は4Rと5Rは、もう前にでることができないくらい追い込まれていた」と試合の翌日に語った彼は、「兄や父の声のおかげで立ち続けることができた。足は前に出なかったけど、気持ちだけは前に出し続けていたよ」と言葉を続けました。

試合当日の夜だというのに、ベッドに入ることなく家族と反省会を行なったリョート、厳しい防衛戦、もっと厳しい世間の目を前にしてなお、王者は強さへの探求を第一に、その視線は既に『次』に向かっていたのです。

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