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【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その弐─バウシュト✖フォラヤン「来たら来たで良いのかと」

Pieter Buist【写真】青木の好敵手でもあったフォラヤンを破ったピーター・バウシュトに関して、青木の評価は (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年1月の一番、第2 弾は31日に開催されたONE107からピーター・バウシュト✖エドゥアルド・フォラヤンの一戦を語らおう。


──1月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「ピーター・バウシュトとエドゥアルド・フォラヤンの試合ですね。フォラヤンは消耗していますよね。あの試合はちょっと謎だなって思ったんですけど、現場で見ていてどう思いました?」

──エドゥアルドが消耗しているのは確かだと思います。と同時にケージサイドで写真を撮っていて、バウシュトのプレッシャーが半端なかったです。あの遠い距離で、あれだけ圧力があるとエドゥアルドも相当に戦い辛かったのではないかと。

「普段は届かない距離にいるのに、届くわけですね。パンチの打ち終わりとか、見えていないところでハイキックを受けていましたしね」

──フィリピン大会は複数のフィリピ人ファイターで興行が成り立つことで開催数も多いですし、彼らは試合を重ねている。そのなかでも年に4試合のエドゥアルドが疲れるのは、本当にあると思います。

「マニラはエディ・アルバレスとDJが出た時と、今回の大会でも同じように盛り上がっていますからね。ジョシュア・パシオは11月に防衛戦をしているのに、また戦ったわけですよね」

──だからこそ、エドゥアルドの当初の相手はそこそこだったと思います。それが代役でバウシュトになった。

「ただ、あの188センチのオランダ人もそこまでの完成度の高さはないと思います。フォラヤンが普通に勝つと思っていましたし。そう思っていませんでしたか?」

──私は打撃でバウシュトが上なら、危ないという風には思っていました。

「そうなんですね。バウシュトと下石との試合も、下石の戦いだったけど。ただ、フォラヤンに下石の組みはないかぁ。相性は良くなかったんですね。なら、フィリピンにフォラヤンに続くライト級がいないのに、やってしまったカードだったんだ」

──ただし、青木選手からするとバウシュトの完成度は高くないと。

「僕は組みの選手なので、寝かさせたらフィニッシュだなって思います」

──青木選手だとそうなることがあっても、腕十字を返した後にエドゥアルドは終わらせることができなかった。あそこが一番のチャンスだったかと。

「疲れてしまっていましたよね。フォラヤンはコンディションが良くなかった。僕がやった時から、落ちてきているなって感じていました。同い年だと思うけど、落ちてきて当然だという考え方もできますしね。

練習なんかも見ていると、20代の軽量級の選手と同じようなことをこなしているわけじゃないですか。それが良いことなのか……年齢なりの調整の仕方ってありますよね」

──ハイ。そうだと思います。彼はMMAを戦っていて、それがマーシャルアーツだと捉えているので、精神修行もそこに入っているのかと。

「あぁ、武術で試合のない人たちは人間性にいくしかないだろうけど、フォラヤンはコンペティションに出ているのに武術の精神が入っちゃうんだ。MMAで勝つことと人間性を磨くことは同一じゃないですからね、僕らからすると。いやぁ、でもフォラヤンが負けたのはビックリでしたね。ただ、あの内容でフォラヤンに一票入ったのもビックリです。アレックス(シウバ)も負けたし」

──青木選手はアレックス・シウバの勝利に見えたのですね。

「えっ、違いますか? どう思いました?」

──ONEならパシオだろうと。

「そうですか……あぁ、俺は北米ジャッジが入っているのかな。でも、あの肩固めってニアフィニッシュですよ。ニアフィニッシュがあったのは、アレだけだし。サドルにいったりアグレッシブだったし」

──サドルは積極性と取られていない可能性もありますね。積極性になると打撃の方が目立って。

「う~ん、そうなるとアレックスだって怒りますよね。肩固めから足に行くって、上から下なんです。リスクも半端じゃない。僕はそんなアレックスにドキドキしましたよ(笑)。しっかりとパスして。パシオも戻していましたけど。さっき言われていたフォラヤンのマーシャルアーツの探求っていうのが、チーム・ラカイにとってONEルールで勝つ探求で、北米ユニファイドとか一切見向きもしていないんでしょうね。北米ルールを探求すると、あのファイトにはならないですしね」

──ともあれバウシュトがエドゥアルドに勝ったことで、青木選手の相手になる可能性も高くなりましたが。

「相性は良い気がします。だから、あんまり視界に入ってこないです。さっきも言ったけど、寝かせちゃえばと。そりゃあ、やるとなったら怖い相手ですし、リスクもあるけど……それほど気にならないかな。ただ、実際にやってみないとあの圧力は分からないですからね。これでライト級がグチャグチャしてきて、面白くなりますね。そう考えると、来たら来たで良いのかと思います。ただバウシュトはこのまま世界王座挑戦ってのも、あるんじゃないでしょうかね」

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